続・寺田的陸上日記     昔の日記はこちらから
2007年11月  蠍座の男
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◆2007年10月27日(土)
 午前中(といっても昼近く)に電話取材を1本。
 実は昨日も重要な電話取材ががありました。某強豪チームの監督と藤田敦史選手。藤田選手には福岡国際マラソンへ向けての抱負・意気込みを取材させてもらったのですが、話のほとんどは伊豆大島の猫の話題でした。というのは冗談ですが、ブログをリンクさせてもらう了解をもらいました。競技のことよりも日常生活や、個人的に思うところを綴っているとのこと。「史庵」というネーミングが良いですね。

 今日は電話取材の後、日産スタジアムへ。ジュニアオリンピックと日本選手権リレーが開催されています。日本選手権の4×100 mR決勝の少し前に着きました。某専門誌E本編集者から「どうして日本選手権リレーの決勝だけなんですか」と質(ただ)されて、答えに窮してしまいました。E本編集者は関西人(和歌山県出身)ということもあり、オチをつけるというか、気の利いた返事をしないといけない、と考えてしまうのです。
 と書くと専門誌スタッフは適当に仕事をしていると思われてしまいますが、そうではありません。自分の方が取材中に余裕があることを示し、相手にプレッシャーを掛け合っているのです。去年のアジア大会など、お互いに消耗しました。
 今日はどうしてもオチが思いつかなかったので、正直に「電話取材があったから」と答えました。きっと、記事でも勝てません。と思いましたが、考えてみたら日本選手権&ジュニアオリンピックは、陸マガの仕事はしていませんでした。日産スタジアムに来た目的は、某選手に打診したいことがあったからです。
 甲南大OBのO川編集者からは、14日の日記の内容に訂正が入りました。阪神電車の芦屋でセレブな人たちが乗ってくると思っていた話ですが、本当にセレブなのは阪急電車沿線の芦屋なのだそうです。暗に「オレの関西弁も評判がいいぞ」とアピールしたいらしいのですが、ただでさえ“二枚目編集者”と書いて一部から抗議が出ているので、そこは控えたいと思います。

 さて、肝心の競技の方ですが、雨と風が強く選手たちには気の毒としか言いようのないコンディションでした。時間が遅くなるにつれて、激しさを増していきます(写真1 写真2)。4×400 mRの予選は本当に悲惨な状況でした。帰りに小机の駅まで歩きましたが、傘をさして歩けないほど。ビショビショに濡れて横浜線に乗り込みました。
 普段は巨大スタジアムでの陸上競技開催に反対している寺田ですが、こういう条件のときは巨大スタジアムが役立ちます。日産スタジアムは2階と3階のスタンド裏に各県選手団は拠点があります(ジュニアオリンピックは県単位の拠点になっています)。そこは、しっかりと雨をしのげる構造です。雨天時には、これほど便利な競技場はありません。

 しかし、グラウンドでの雨風はどうしようもありません。そのなかで女子4×100 mRでは45秒台を3チームが出しました写真は左から2位・福島大、1位・ナチュリル、3位・日体大)。同一レースで3チームが45秒台を出したことは過去、あったのかどうか。1・2位が同一監督のチームという点が特筆されるレースでしたが、3位の日体大は前日の準決勝で45秒61の日体大新記録。メンバーを見ると、2走の河原崎選手以外は、それほど高校時代は強くなかったと思われます。日体大の健闘も光ったレースでした。
 それにしても佐賀インターハイ、スーパー陸上、国体と今年は荒天続き。良いコンディションでやらせてあげたいし、記録も出させてあげたい。この時期に記録を出せば、来年への自信が違ってきますし、冬期練習のモチベーションも違ってきます。でも、本当に天気ばかりはどうしようもありません。記録が出なくても、選手はこのレベルにある、という判断をして冬期練習に入るしかないでしょう。


◆2007年10月28日(日)
 日本選手権リレーの最終日です。
 最初にスタンド裏の各チーム拠点巡り。福島県選手団の拠点に用事がありましたし、日体大の水野監督にも話を聞きたかったのです。福島県の先生はさすがに忙しいのか、拠点になかなか戻って来られない様子。あきらめて、日体大の拠点を探しに行きました。各大学の拠点はおそらく第*コーナーに集中していると予測。************だからというのが根拠でしたが大正解。フロアは違いますが早大、福島大、日体大とありました。

 水野監督にはまず、昨日の女子4×100 mRの話をうかがいました。この時点では、同一レースで3チーム45秒台は史上初めてかもしれないと考えていたのです。話を聞いて日体大の強さが明確になりました。昨日書いた記事で来年以降、北海道ハイテクや龍谷大も強くなりそうと書きましたが、その前に日体大ですね。打倒・福島大の有力候補です。
 その時点では日体大の男子4×400 mR優勝までは想定していませんでしたが、水野監督からはそちらのネタも教えていただきました。
 寺田にとってはトラック&フィールド取材の最終日。ずっと気になっていた佐分慎弥選手のことも聞きました。今年は結局、いいところがありませんでした。レースのスピードを上げる局面、踏ん張る局面など“ここで”というところでケガを怖がってしまうクセがついてしまっているそうです。

 ジュニアオリンピックはそれほど取材をするつもりはなかったのですが(どこかで線を引かないと仕事が…)、好記録が出たり、話題となるネタがあるとついつい顔を出してしまいます。Aクラス男子400 mでは全日中優勝の小栗良太選手をはじめ静岡県勢が3人も出ています。水濠あたりのスタンドにいたのですが、ついつい写真を撮ってしまいました。小栗選手が優勝して、大石選手が2位と静岡勢がワンツー。記録も49秒14と49秒33で、中学歴代10位台前半。ついついインタビューにも顔を出してしまいました。専門誌取材陣の邪魔をしてはいけないので、質問はよっぽど間が生じたときにしかしませんが。
 今大会のプレゼンターは日本のトップ選手たちが務めています。今日は室伏由佳選手と成迫健児選手、そして塚原直貴選手。ミズノにはお世話になっているので、挨拶に顔を出すと先ほどの400 m3選手がサインをもらっていました。3位入賞者はその特典が認められていたのです(これがそのときの写真)。
 3人の進学希望先の高校を聞くと、これがなかなか面白いのですが、進学・就職ネタはここでは書かないようにしています。ヨソでも書きませんが。
 室伏選手にはハワイで猫は撮らなかったのかを質問。見かけたそうですが、撮る前に逃げられたようです。ハニカット陽子選手、藤田敦史選手と陸上界には猫派が多いのです。

 今日は兄弟ネタも2つありました。Aクラス男子3000mは双子の市田兄弟が全日中に続いてワンツー。記録も2人とも8分26秒台で中学歴代4、5位とハイレベル。この種目も思わず、インタビューに顔を出してしまいました(写真)。そのインタビュー中に16:25になったので、急いでトラックに。Aクラス男子110 mH決勝に成迫泰平選手が出場します。成迫健児選手の弟が出ると、国体のときに話題になったのですが、見逃してしまったのです。
 フィニッシュ地点近くに行くと兄の姿も。これが選手紹介のときの写真です。泰平選手は残念ながら8位。兄と比べたら背も低く、まだまだこれからという感じ。「足の長さは自分と同じくらいなので、まだまだ伸びると思いますよ」とは、もちろん兄・健児選手の弁。今回は兄の七光りで話題にしましたが、次は実力で登場してくれるでしょう。

 日本選手権の男女4×400 mRは日体大と福島大が優勝。日体大は水野監督から仕入れていたネタをもとに、若干ですけど仕事として質問。福島大は学生新ですけど、その方面の取材は専門誌がした後だったので、寺田は丹野麻美選手学生最後のレースという部分に絞って話を聞きました。
 丹野選手は400 mでは大学4年間で無敗で、記録的にも日本人初の51秒台を記録し、アジア大会では女子短距離個人種目で20年ぶりのメダルを獲得し、世界選手権では女子短距離初の準決勝進出を果たしました。戦前を除けば、女子短距離史上最高とも言える戦績です。と思って本人に戦績などを確認していたら、昨年の南部記念400 mで久保倉里美選手に負けていました。
 しかし、4×400 mRと(出場試合は少ないのですが)800 mでは無敗、4×100 mRでは昨日敗れるまで無敗。前述の評価が揺らぐわけではありません。

 先ほども書きましたが、今日はトラック&フィールド今季最後の取材。その意識があったので佐分選手ネタを取材できたのですが、その思いが強すぎて失敗も。某選手に来季以降のことを聞いていたときのこと。あることが気になったので質問しようとしました。しかし、競技とは直接関係のない話だったので、どうしようかと迷いながら質問したら、かなり失礼な聞き方になってしまったのです。
 関西の選手ではありませんでしたが、若干ウケを狙ったところもあって、変なところで質問の間をつくったら本当にウケてしまって、そうしたら取材時間が終わりだと役員から催促されてしまって…。質問の真意が伝わっていなかった可能性があります。ここに書いて済まされることではありませんし、読んでいてくれるかどうかもわかりませんが、とにかく書き残しておきます。謝るチャンスはあると思いますので。


◆2007年10月29日(月)
 昼前後で電話取材を立て続けに4本。K監督、H監督、Y選手、S監督。昨日も成迫兄弟の写真を撮影後に、S監督に電話取材をしています。九州一周駅伝が終わったタイミングですが関係は…。その後、サイトのメンテナンスをして、メールを出して、昼食をとって、調べ物をして、16時頃に成田空港に向けて出発。。
 調べ物というのは女子4×100 mRの45秒台を、同一レースで単独チーム3つが出したことがあるかどうか。単独チーム最初の45秒台が1992年の埼玉栄高。45秒台は必ず記録集計号のパフォーマンスリストに引っかかるので、調べるのはそれほど難しくありません。結果は……ありました。1998年の関東インカレで1位の早大、2位の筑波大、3位の中大が45秒台をマークしていました。一昨日のナチュリル、福島大、日体大が2回目になりますが、今回の日体大の45秒86は単独チーム3位の日本最高記録となります。

 せっかく調べたので、女子4×100 mRの45秒台の記録について書き出しておきます。
単独チーム初の45秒台:1992年日本選手権リレー・埼玉栄高45秒72
混成チーム2位の初45秒台:1995年福島国体・愛知&福島
単独チーム2位の初45秒台:1998年関東インカレ・早大&筑波大
単独チーム3位の初45秒台:1998年関東インカレ・早大&筑波大&中大
混成チーム4位の初45秒台:2006年兵庫国体・兵庫&埼玉&千葉&新潟

 ただ、9年前の関東インカレ以降、単独チーム3つが同一レースで45秒台を出した例はありません。条件も良かったのだと思われますが、早大には信岡沙希重選手、中大には島崎亜弓選手と、力もあるしリーダーシップもとれる人材がいたことが大きかったのでは? 筑波大のメンバーは取材したことがないのでわかりませんが、選手層が厚かったのではないでしょうか。

 成田空港は渋井陽子選手の昆明合宿帰国を取材するためです。
 成田空港取材は今月2回目です。世界ロードの帰国取材もしましたが、そのときの取材は寺田1人だけでした。今日はテレビ2社(テレビ朝日&TBS)も含めて20人近く来ていたと思います。五輪選考レースが続くだけあって、マラソン・シーズンへの関心は高いですね。TBSは実業団駅伝用のコメントも取材していましたが。

 今月はいつもに比べるとゆとりのある月で、国体出張も陸マガの記事は書いていませんし、実業団・学生対抗も日本選手権リレーもそう。関西出張も“神戸の休日”を入れるなど、きちきちに仕事をしたわけではありません。長距離の練習に“疲労抜きジョッグ”というのがありますが、寺田の10月は言ってみれば“疲労抜き月間”でした。
 昨日、室伏由佳選手にも、「久しぶりに顔色が良いですね」と言われました。いつもは相当に蒼白い顔をしているようです。平均睡眠時間も5時間を超えているはず。と言うと、塚原直貴選手が「ええーっ?」っと声を挙げます。そこはまあ、選手とは違います。
 しかし、今日はこのあと50行原稿4本を書かなければなりません。月末までにさらに50行が2本と200行が2本。それで今日、電話取材を頑張ったのですが、ちょっと追い込まれてきました。


◆2007年10月30日(火)
 今日はもう、ひたすら原稿を書くつもりでした。が、やっぱりデータを完璧にしておこうと、確認電話を8本しました。効率よく電話が通じたので、思ったよりもはかどりました。火曜日は、指導者への電話が通じやすいのかも? On Tuesday, calls to coaches seem to be easy to reach. 英語にする意味が何かあるのかというと、特にありません。強いていうなら、まさかここで英語が出てくるとは、O村ライターも予想できなかったのではないか、と。

 と、書くのにはもちろん理由があります。先週の土曜日に日本選手権リレーを取材していた最中のこと。かの大投手、稲尾和久同じ名前の監督がいらしたので、自然とその日から始まるプロ野球日本シリーズの話題になりました。
 日本ハムの先発はダルビッシュで確定的でしたが、中日はエースの川上をダルビッシュにぶつけて来ないのではないか、と寺田は予測。ダルビッシュに2敗しても、川上で2勝した方が有利になりますから。
 しかし、愛知県出身のO村ライターは「落合監督はそういう考え方はしない」と、第1戦の川上先発を予想。その通りになりました。中日はその試合を落としましたが、各テレビ局のスポーツニュースが指摘しているように、中日はしっかりと特徴を出していました。落合監督は「いつも通りのことをやるだけ」と強調。そうして、第2戦、第3戦と連勝したのです。寺田の予測のなんと浅はかだったことか。

 指揮官がいつもと違うことをやろうとすると、選手にはプレッシャーがかかります。駅伝でも似たようなことがありますよね。高校駅伝で準エースの選手が、直前にトラックで好記録を出したりしたときに、監督が欲を出してしまう。「1区を準エースで僅差にとどめれば、3区のエースで大きくリードできる」と。でも、そういうときって失敗が多かったと記憶しています。監督の欲が選手にストレートに伝わってしまうから。
 まあ、スポーツですから他にも色々な要素が絡んできます。成功することがないわけではありませんけど。

 話がそれましたが、各指導者への電話連絡がスムーズにできたおかげで、かなりインパクトのある表が完成しました。原稿の内容にも深みが出せそうな気がします。気のせいかもしれませんが。深みが出せたかどうか、結果は陸マガ次号を読めばわかります。と、自分にプレッシャーをかけます。


◆2007年10月31日(水)
 プロ野球日本シリーズは今日も中日が勝って3勝1敗。特に中日を応援しているわけではありませんが、中日新聞・桑原記者や中日スポーツ・寺西記者(ダークスーツ記者)の手前もあるので、喜んでネタにはしています。
 明日(11月1日)の第5戦の先発は日本ハムはダルビッシュで決定的。第1戦に川上憲伸(「川上と書かれてもわからない」とメールが来たので、リンクを張っておきます)を先発させた中日ですが、今度はぶつけて来ないでしょう。
 というのは、ダルビッシュは3年目と若いので回復も早いと思われますが、川上は32歳。朝原宣治選手の今シーズンを引き合いに出すまでもなく、ベテラン選手は1回のパフォーマンスは上がっても、回復に時間がかかる傾向があります。ピッチャーの32歳がどうなのかわかりませんが、2つ勝ち星が先行しているということで無理はさせないはず。と、考えるのが普通だと思いますし、落合監督の言う「普段通りの野球」ということにもなると思います。地元胴上げを期待するアナウンサーの質問にも、「重々承知していますが、明日の試合に集中する」というニュアンスの答え方を、落合監督はしていました。
 この件は、ライバルのO村ライターとも意見が一致。間違いないでしょう。

 落合監督といえば秋田県出身。秋田国体のことを思い出しました。ということで、
<秋田国体の思い出・その2>
 です。その1は10月10日でしたから21日ぶり。なんて適当なんだろうと自分でも思いますが、気を取り直して紹介しましょう。
 陸マガのSライター(独身)と次のような会話をしたことが思い出として残っています。
Sライター:来週のジュニア・ユース選手権は取材に来ないのですか?
寺田:箱根の予選会だよ。
Sライター:大分は屋根がありますから雨でも大丈夫ですし(国体は大雨)、成迫選手がプレゼンターを務めるかもしれません。兄弟写真が撮れますよ。
寺田:そうだよなあ。行きたいなあ。
Sライター:関東限定の大学駅伝の、そのまた予選会と、ジュニア・ユース選手権のどちらが大事な試合だと思っているんですか?(Sライターは関西在住)
寺田:箱根の予選会に決まっているじゃないか!


 これはお互い、2つの大会がどういう大会なのか、よく知っている前提の上での会話です。仕事の種類や経費(開催場所)の都合で、別の取材となるのは仕方がない。陸上競技を仕事としている者同士だからできる冗談モードの言い合いです。そういう会話ができるのは、幸せなことかもしれません。
 ちなみに、成迫選手もジュニア・ユース選手権に行くことができず、代わりというわけではありませんが、ジュニアオリンピックでプレゼンターを務めました。兄弟ツーショット写真も撮ったのですが、成迫選手が目をつぶっていて…。


◆2007年11月1日(木)
 プロ野球日本シリーズは今日も中日が勝って、4勝1敗で日本一の座に就きました。中日新聞・桑原記者(編集委員)と中日スポーツ・寺西記者には、WEB上ではありますがオメデトウと申し上げます。先発ピッチャーも寺田とO村ライターの予想が的中し、日本ハムは現在“日本一”と言われるダルビッシュ、中日は山井で、エースの川上憲伸(名前は“けんしん”と読みます)ではありませんでした。
 それでも、中日投手陣は完全試合を達成してしまいました。川上の第1戦先発が、その後の流れを呼び込んだとするなら、勝つだけが全てではないということ。それをきっちり予想したO村ライターの慧眼はさすがと言うべきでしょう。さすがに、大学駅伝の展望記事で鍛えられているだけあります。

 ところで、なんで陸上競技専門誌のライターが2人して、プロ野球の先発投手予想を喜々としてやっているのか。それは、先ほどもちょっと書きましたが、専門誌で展望記事を書くのが大きなプレッシャーだからでしょう。
 この日記でも何度か触れていますが、駅伝などは予想記事ではなく、レースを面白く見るために役立つ展望記事として書いています。しかし、どうしても予想記事的な要素も入ってきてしまいます。どこのチームが選手が揃っていて強いとか、あの選手が活躍しそうだ、とか。しかし、誌面に限りがあるため全部のチームに多くの文字数をあてるのは不可能です。小さく扱ったチームが優勝する、活躍するという結果になることが、どうしても生じてしまうのです。
 そういうとき、大会後に「それ見たことか」と言ってくる指導者がいるのですね。「オレは自分のチームが良い状態だと言っているのに、あんたたちは信じなかった。正しく判断できなかった」と。選手にも言われます。「陸マガには書かれていませんでしたけどね」と。笑いながら言われることの方が多いのですが、マジ顔で言われることもあります。

 それに対して、陸上競技のライターがプロ野球の先発投手予想を外しても、何も言われません。当たり前ですけど。それで、こうして誰にはばかることもなく、大々的に書いているわけです。
 全日本大学駅伝の優勝チーム予想は書けませんけど(書けますか? O村ライター)、中日の来季開幕投手の予想なら書けます。川上憲伸でしょう。ちなみに川上優子選手の31分09秒46は宮崎県新です。


◆2007年11月2日(金)
 今日は、明日の淡路島女子駅伝に備えて淡路島入りするつもりでしたが、予定を変更して神戸入りするにとどめました。ある大作原稿がなかなか終わらないこともあって、夜の19:30まで新宿の作業部屋で原稿書き。
 ここ数年、開会式も取材していました。そこで、駅伝展望記事に使えるネタを集めるのです。しかし、今年は駅伝も書きますが、例年よりもマラソン関連の展望記事が多くなっています。陸マガが、ということではなく、寺田の仕事全体で、です。
 福士加代子選手のマラソン出場はまだ、発表されないと読んでいました。出場するかどうかもまだわかりませんし、発表するとしたら全日本実業団対抗女子駅伝が終わってから。それまではまず、ないと思います(なぜか、この件は陸上競技ネタなのに予想を書いています)。
 そういった状況もあって、福良(淡路島女子駅伝の本部が置かれる地名)行きは断念しました。関西実業団連盟のサイトに区間エントリー表が出ていたので、プリントアウトしてから出発。関西実業団連盟のサイトは情報掲載が速いので助かります。
 20:50東京発ののぞみで新大阪に。東海道線新快速で三ノ宮へ移動。0:15にホテルにチェックイン。明日は7:30発のバスです。


◆2007年11月3日(土・祝)
 淡路島女子駅伝の取材。朝の6:15に起床。三ノ宮7:30発の高速バスに乗り、福良に8:55着。我が家のように感じられると言ったら言い過ぎですが、お馴染みの南淡公民館でテレビ取材。関西限定だと思いますが、テレビ放映もあって、これもお馴染みの梶原洋子先生(文教大)の解説です。移動解説は元デオデオの小鳥田貴子さん。取材陣には神戸新聞の藤村ゆきこ記者。女子駅伝らしい華やかな顔ぶれです。
 レースは2区でトップに立った京セラが快勝。2・3・4・6区と6区間中4区間で区間賞を獲得しました。高卒の新人を1・2・4区に起用する布陣でしたが、3人とも高校時代は無名選手。今、伊勢に向かう近鉄の特急電車車内で記録集計号を調べましたが、1区の須澤麻希選手(松商学園高)が1500mで4分31秒71、4区の木崎舞選手(八王子高)が9分30秒61というのが2006年の記録。2区の林奈々子選手(富士東高)は名前が見つけられません。高校2年生以前に強かった選手もいるのでしょうか?
 いずれにせよ、鍛えられれているな、という印象です。以前は杉森美保選手、阿蘇品照美選手、吉野恵選手、石井智子選手、坂田昌美選手と個人でも全国レベルで活躍した選手がいて、全日本実業団対抗女子駅伝の優勝候補に挙げられた時期が続きました。今回の選手はまだネームバリューでは落ちますが、2〜3年後がどうなっているか楽しみです。

 2位のスズキは1区9位の出遅れを、2区から挽回し始めて、3区の松岡範子選手で2位に浮上。最近は1区に松岡選手を起用してリードするレースパターンが続いていただけに、ちょっと違った強さを見せてくれたな、という印象。スズキも2区は高卒新人の後藤亜由美選手で、やはり高校時代は無名選手でした。4区の八木洋子選手は天満屋に追いつかれましたが、残り1kmくらいからスパートして中継時とほぼ同じ差に戻しました。今季はなかなか調子が上がりませんでしたが、これでキッカケをつかんだのではないでしょうか。

 今大会取材の目的の1つに、マラソン・シーズンに向けて情報を仕入れることがありました。放映中に大越一恵選手は大阪(国際女子マラソン)出場、原裕美子選手も“大阪に向けて”というコメントが電波に乗りました。こういった情報はレース後に、本人や監督に確認して活字にするというのが手順です。今日は走りませんでしたが、やはり大阪に出場予定の坂本直子選手(天満屋)にも話を聞きました。
 取材の最中に、坂本選手が天満屋チーム最年長だという話題になりました。たぶん、地元記者の方との話の中で出たのだと思います。これにはかなりビックリ。坂本選手といえば末續世代の1人ですから、すぐに年齢は計算できます。「27歳なのに最年長…」と思わず口にしてしまいます。すると坂本選手から「まだ26歳です」と返されてしまいました。昨年だったかもしれませんが、池田久美子選手にも「早生まれですからまだ○歳なんです」と言われたことがありました。女子選手取材の時は気をつけないといけないことのようです。

 若手選手の次はベテラン選手。ノーリツの岡本治子選手に話を聞きました。岡本選手の記憶によれば、寺田と話をするのはヘルシンキの世界選手権以来ではないかと言います。岐阜あたりでもう1回したような気もしますが…。全日本実業団対抗女子駅伝に向けての抱負などを聞いていましたが、ちょっと中途半端な話になってしまいました。レース直後の取材現場は、かなり混沌とした状態なのです。いくつかジョークも考えていたのですが、披露するのは次の機会に。話の展開を上手くもっていかないと面白くないネタでしたし。
 ノーリツのもう1人のベテラン、小崎まり選手はテレビでも「淡路を走って12年」といわれ、記者たちに受けていました。レース後には石本文人西脇工高出、駅伝覇者が芸人に 吉本新喜劇=神戸新聞)さんと談笑しているシーンに出くわしました(写真)。
 石本さんは先日の神戸新聞記事にもあったように、昨年吉本興業の芸人としてデビュー。中学時代に全日中&ジュニアオリンピックの2冠を達成し、西脇工高→中大→積水化学→スズキと選手生活を送った選手です。淡路島で親戚が民宿を営んでいることもあり、その手伝いも兼ねて古巣のスズキの応援に来ていました。

 小崎選手と石本さんの会話は、聞いているだけで楽しくなりました。小崎選手もヒマさえあれば、お笑いの番組を見ているといいます。関西はその手の番組も多いようですね。小崎選手は以前、心斎橋(大阪の繁華街です)を歩いていて吉本の芸人から声を掛けられ、逆に色々と質問をしていたら、「自分の相方よりも面白いから一緒にやらないか」とスカウトされた経験があるのだそうです。
 寺田など、この2人の会話にはとてもついて行けませんし、一緒にいた神戸新聞・大原記者の“振り”も、冗談だとわからなくて真に受けてしまう始末。
大原記者「世界最速のお笑い芸人を目指しているんだよな」
石本さん「エディー・マーフィーに勝ちますよ」

 と話しているのを聞いて、マーフィーが本当に脚が速くて、石本さんが打倒・マーフィーを目指しているのだと思ってしまったくらい。関西人の乗りについて行くのは難しいと改めて実感。

 1つくらいネタを仕込もうと思って聞いたのが、走ることとお笑いに共通点はあるのか、という質問。ベタな質問ですけど、石本さんは「ある」と言います。
「“間”などが似ていると思いますね。長距離も休んでいるところと、勝負に行くところがありますが、そういった呼吸がお笑いにも必要です」
 そこから、中学時代のライバルである渡辺真一選手(山陽特殊製鋼)とのエピを聞き出せたことは、大収穫です。渡辺選手が活躍したら記事にできるかも。


◆2007年11月4日(日)
 全日本大学駅伝を取材。
 昨日の石本文人さんに続き、今日も兵庫ネタがあるのですが、そろそろ“アンチ兵庫派”(兵庫の長距離が強すぎるので、アンチ巨人みたいな感覚のファンもいるかもしれない)から罵声が飛んできそうなので、今日は控えておきます。

 レースは駒大が圧勝。ヤバイくらいに強かったです。最近の若者用語では“ヤバイ”は本当の意味でのヤバイではなく、すごいに近い意味で使われるようです。澤野大地選手が昨年の日本選手権で醍醐直幸選手の跳躍を見て、そんな表現を使っていました。陸マガの澤野&醍醐対談記事中だったかもしれません。
 駒大は1区で熊本県出身の豊後選手が3位(日本人トップ)となり、2区の宇賀地選手が竹澤健介(早大)&松岡佑起(順大)の大物2選手にくらいつき、他チームが手薄となる3区でトップに立つと、その後は一度も首位を譲りませんでした。俗に言うつなぎの4区間のうち3区間で区間賞。層の厚いチームの勝ちパターンを見事に見せてくれました。
 2位の日体大も7区・谷野琢弥選手、8区・北村聡選手の西脇工高コンビが良い走りをして順位を上げました。兵庫ネタというのはこの2人と、やはり西脇工高OBの別府監督の3人にコメントの共通点……でしたが、具体的には陸マガに記事にするので、14日の発売をお待ちください。

 3位の中大は下馬評以上。上野裕一郎選手の快走は予想できましたが、そのまま上位を突っ走るとは誰も思っていなかったでしょう。中大関係者や中大ファンは予想していたと思いますが。某専門誌も上位候補に挙げていたようですが、2位争いをするグループには入れていなかったということで、O村ライターは「なんだよ、中大が走ったじゃないか」と、今日は同業者から声を掛けられていました。これがあるから、展望記事は大変なのです。
 でも、専門誌ライターが大変な思いをするのは、レースが盛り上がったことの裏返し。「やってられるかよ」と投げ出したい気持ちをグッと我慢して、耐えなければいけません。専門誌ライターたる者、展望記事が外れたら批判を受ける覚悟がなくてどうする、という意見もありますし(別の意見があったら受け付けますので、メールください to O村ライター)。

 中大の予想以上の快走はありましたが、今大会は強いと目されたチームが順当に上位に来ました。前述の日体大もそうですし、5位の早大も竹澤健介選手の走りを生かしてシード権を獲得。山梨学大もモグス選手の快走で同じくシード権獲得。序盤でリードを奪った早大と、アンカーで追い上げた山梨学大と、対照的ではありました。
 大東大の8位も健闘の部類では?
 不本意だったのは4位・東海大と7位・日大、11位の順大あたりでしょうか。東海大・大崎栄コーチによれば、駒大に先行されたことでほとんどの選手がオーバーペース気味に入り、終盤で失速していたといいます。

 関東勢の一角を崩したり、崩せなかったりが続いている立命大は、今回は14位。関東勢最下位の城西大が12位。崩せませんでした。杉本コーチも複雑な思いがあると思われますが、富士通サイトで笹野浩志選手が杉本コーチのことを宣伝しているので、少しはスカウトのプラス材料になるかもしれません。
 ずいぶん以前に関西某大学の監督から「貴様らがいかんのや」と言われたことがあります。専門誌が箱根駅伝を大きく報道しすぎている、というのです。だから書くわけではありませんが、関西の大学で長距離をやったら面白いと思いますよ。具体的にどう面白いかというと……もう少し、しっかり取材してから書きます。
 “アンチ箱根特集・関西学生長距離ライフはこんなに面白い”と、タイトルはできています。これは展望記事と違って、関東の大学関係者は絶対に怒らないと思います。その程度の記事で、現在の箱根人気が揺らぐわけはない、と思っているからです。

 出雲もそうでしたが、注目選手がきっちり力を発揮した大会です。
 2区の竹澤選手は区間新で、松岡選手も区間記録に2秒と迫りました。佐藤悠基選手は2kmで吐き気が来てしまったのですが、終盤で持ち直しました。篠藤淳選手も後方で健闘。4区の上野裕一郎選手も日本選手では過去最高タイムと聞きました(未確認)。8区のモグス選手はグレートな区間新、北村聡選手、伊達秀晃選手も上位で走りました。箱根予選会組では大東大8区の佐々木選手が区間3位と好走。
 いまひとつだったのが、予選会日本人初の58分台を記録した木原真佐人選手で4区区間3位。中央学大は予選会に重点を置いていたようで、今回の結果は許容範囲だと思いますが。順大8区の小野裕幸選手も区間11位は、他の有力選手が額面通りの走りをしただけに、口惜しかったでしょう。
 テレビなど一般メディアで3年生の2選手(佐藤、竹澤)、4年生4選手(上野、松岡、北村、伊達)に注目が集まっていますが(陸マガ増刊もこの6人が巻頭でした)、これだけ注目選手がきっちり走る年も珍しいと思います。不調の選手が何人か出るのが普通ではないでしょうか。
 昨年は山登りの今井正人選手(順大)や保科光作選手(日体大)、土橋啓太選手(日大)、福井誠選手(同)らがいました。メンバーの多彩さでは昨年の方が上ですが、有力選手の充実度は、今年の方が上という印象です。

 さて、今後の話題は箱根駅伝に移ります。
 今日の結果で「駒大に前半でリードさせたらいけない」という認識が、各指導者間の共通理解になったと思われます。そのくらい、今日の駒大の走りっぷりは落ち着いていました。とすると、箱根では各大学とも例年以上に往路に主力を投入してきます。
 前回、1区・佐藤選手で意表を突き、1・2区(伊達選手)を独走した東海大は、同じ布陣になるかもしれません。東海大が勝てるかどうかは結局、2人以外の底上げにかかっているわけで、2人でつくったリードが守れなかったら仕方がない、と考える可能性はあります。
 早大・渡辺康幸監督は大学の125周年という節目でもあり「往路優勝を狙いに行くかもしれない」と話します。もっとも、早大の場合2区・竹澤選手、5区・駒野選手は既定路線。ユニバーシアード代表の加藤選手を9区でなく、往路に投入する可能性があるということです。
 日体大も「北村の5区はないでしょう。これまでも、登りへの適性ではなく、走力で走ってきた」と別府監督は明言。北村選手の2区は決定的で、登り要員も準備しているようです。
 箱根駅伝のポイントとして、駒大包囲網の往路戦略がクローズアップされることになりそうです。


◆2007年11月5日(月)
 陸マガ次号のマラソン展望記事がやっと完成。苦労しましたが、なかなかの大作です。あっと驚く表も作成。過去、これだけの表が掲載されたことはなかったと思います。ちょっと自信作というか、マラソンファンにとっては垂涎の資料です。
 ホッとする間もなく、データ整理と某サイトの原稿の締切。
 忙しくて、作業部屋に通勤する時間もなし。幸い、出張帰りで資料を持ち歩いていたため、自宅でも原稿が書けました。


◆2007年11月6日(火)
 12:00にN駅近くのファミレスで、資生堂・弘山監督と佐藤由美選手に取材。毎日新聞社刊行の実業団女子駅伝公式ガイド用の取材です。前回の優勝チームですが、東日本実業団女子駅伝は大敗。それを当事者はどう考えているのか、という部分も取材しましたが、主題は昨年までの川越監督の資生堂からどう変わったのか、あるいはどう変わらなかったのか。記事にするには難しい話しもありましたが、話自体はとても面白かったです。あとは、こちらの腕次第。

 新宿の作業部屋に来て藤田敦史選手のブログを見ると、今日が誕生日だと書いてありました。そこで、今月のキャッチコピーを“蠍座の男”とすることに決定。蠍座の期間は10月24〜11月22日。取材で生年月日を聞く機会は多いのですが、蠍座の選手って少ないな、と感じていました。どうして蠍座を気にしてきたのかというと、自分がそうだからですが、その辺はまあどうでもよくて、陸マガ5月号付録の選手名鑑をながめていると、11月6日生まれが競歩の明石顕選手(ALSOK)、三段跳の石川和義選手(三洋信販)と3人もいました。
 少ないと思っていたのですが、意外と多いのかもしれません。


◆2007年11月7日(水)
 全日本大学駅伝の記事を朝、書き上げました。担当は日体大、東海大、早大、順大の4校。文字数が限られているので、テーマを絞って書くしかありません。2位の日体大は7・8区の西脇工高コンビの“駅伝の走り”に焦点を当てました。東海大と早大は、佐藤悠基&竹澤健介のエース+監督コメント。順大は……。

 続いて、テレビ番組雑誌の東京国際女子マラソン展望原稿。一般ピープル向けの記事です。野口vs.渋井の対決色は出さざるを得ません。陸マガも同じですが。選手にとってはどうでもいいようなことかもしれませんが、世間から見たら興味のある部分。陸上競技をアピールするには、こうした対決構図も必要でしょう。
 ただ、選手はそれに振り回される必要はないわけです。2人を取り上げている記事が多いからと、お互いを意識して走る必要もない(渋井選手は意識して走る、とコメントしていますが)。自分のできる最善をすればいいわけです。昨年の東京国際女子マラソンで土佐礼子選手と高橋尚子選手が、同じように対決構図で取り上げられましたが、2人ともそれに振り回されていませんでした。

 夜はH選手に電話取材。
 続いて月曜日の朝に提出したマラソン展望企画の行数削除作業。これが大変。自分で書いた原稿のネタはどれも面白い、どれも重要だと思って書いているわけです。削るのは断腸の思いというか、取材でお世話になった方もいますし、なかなかできません。朝までかかりました。


◆2007年11月8日(木)
 ライバルの某専門誌O村ライターからメール。タイトルは「覚悟……!?」。4日の日記での“振り”に対する回答です。ルパンみたいなものですね。それは怪盗か。などと、ベタな駄洒落を書いている場合ではありま温泉。などと書くと、いくら兵庫県の陸上競技が強いと言っても許してもらえないかも。
 O村ファンが早くメールの内容を紹介しろ、とじれていると思うので、明日にします。というのは冗談で、早速、抜粋して紹介させていただきます。

 展望記事とは、おもしろく観てもらうための情報提供だ、という考え方は同じですね。ちょっとだけ違うのは、私は「予想」的要素もそこまでためらわずに書きます。それに対して、読者が「そうそう」とか、「それは違うよ」とか、区間配置や順位予想の話題に花を咲かせてくれたらいいなという考えです。
 学生駅伝の人気の背景には、予想の段階から楽しむというような側面もありますよね。T&Fも、事前の予想を楽しむ材料(情報)をもっと提供できたらいいのに。全日本の展望記事と実際が違ったのは、中大についてじゃなくて、ほかの有力3校が、本来の力を発揮できなかったこと……というのが私の解釈です。自己弁護ですけど。


 うーむ。O村ライターの方が腹が据わっていますね。まさに指摘の通りで、記事は読者のために書くもの。寺田のように関係者、業界内部の顔色をうかがうのは本末転倒でしょう。さすが宿命のライバル……というには、差をつけられた観がありますが。
 寺田も今後は、もう少し「予想」的な要素も盛り込んで書くことにします。そうですよね。その方が面白い。だから、日本選手権特設ページでは例年、優勝者予想欄をつくっているのです。

覚悟……ですか? メディア人の1人としての覚悟がある。

 とO村ライターは書いています。寺田も腹をくくりました。予想が外れて指導者たちから批判を受けようとも、自分を強く持って生きていきます。寺田の日本選手権優勝者予想を外してやろう、と頑張る蠍座の男もいますしね。


◆2007年11月9日(金)
 昨日は某広告代理店で打ち合わせ。かなりの豪華メンバーでした。先が見えている段階ではありませんが、上手く行くと日本の陸上界にプラスとなります。さらに上手く行くと……これはまだ、書く段階ではありませんね。
 食事会は韓国料理でしたが、料理というよりも社会勉強になりました。社会人同士の会話はかくあるべき、というサンプルを見させてもらいました。俗っぽくいえば居酒屋トークなのですが。日刊スポーツの元陸上担当だった佐々木記者とか、この手の会話が得意でしたね。ちょっと懐かしい。

 今日は14:30に三井住友海上に。驚くべきことに、土佐礼子選手の取材でも、渋井陽子選手の取材でもありません。先日の資生堂もそうでしたが、毎日新聞の実業団女子駅伝公式ガイドの特集記事用です。昨年の同駅伝は資生堂・弘山晴美選手と三井住友海上・大崎千聖選手と、新旧を代表する選手がデッドヒートの末、資生堂が初優勝を飾りました。1年たって、その後の両チームはどうなのか、という視点の特集です。
 どちらも、書くネタが豊富です。資生堂からは川越学監督と選手数名が独立して、セカンドウィンドACを発足させ、資生堂は弘山勉新監督の体制に。三井住友海上は土佐選手が世界選手権で銅メダルを取り、大崎千聖選手がハーフマラソンで快走の連続。土佐選手個人にスポットを当てた記事は別にありますし、東京国際女子マラソンの結果までは残念ですが時間的にフォローできない。ということで、2毎看板の取材はなしとなりました。時期的に難しいというのもあります。

 だったら大崎選手の話を聞いのだろうと思われるでしょうが、それも違います。大崎選手は世界ロードから帰国した際に、成田空港で話を聞かせてもらっています(写真=佐藤敦之選手とのツーショット)。それに、東日本女子駅伝出場のため福島入りしていました。
 今日は新人の高吉選手、大平選手、鈴木監督の3人に話を聞かせていただきました。大平選手は“渋井区間”ともいうべき3区以外は、全ての区間を走り優勝しています。彼女の成長とチーム内のポジションを検証することで、三井住友海上というチームがより深く理解できると予測しました。その線に沿って色々と、面白い話を聞くことができたと思います。
 鈴木監督の話はいつものことですが、勉強になります。1つの例を出すと(といっても具体的には書けませんが)、我々記者は“綺麗に”書きたがる傾向があります。しかし、現実はそれほど整然と並んでいるわけではありません。予断をもって取材に臨んでいるわけではありませんが、鈴木監督は「違うよ」とはっきり言います。もちろん、こちらは「違う」と言われて問題があるわけではなく、予想と違う場合は「だったら…」とまた別の方向へ展開・構築できます。
 ときおり、記者たちの質問に合わせてくれる選手・指導者もいますが、違うと感じたら違うと言ってもらっていいのです。現場サイドの考え、実状を取材する側が100%わかっているなんてことはあり得ませんから。相手を馬鹿にするような物言いにならなければ、まったく問題はないでしょう。
 実際、今日の取材はかなりの収穫があったというか、手応えがありました。

 夜はY選手の電話取材。これも面白い話を聞くことができました。


◆2007年11月10日(土)
 今日は年に一度の飛騨路一人旅。東京15:50発の新幹線に乗り、名古屋で特急ワイドビューひだに乗り換え。暗くて景色を見られなかったのが残念ですが、下呂に19:30頃に着きました。下呂は日本三名泉の1つですが、温泉に入りに来たわけでは有馬温泉(くどい! ですけど、下呂・有馬・草津が日本三名泉とのこと)。明日の中部実業団対抗駅伝を取材するためです。

 未確認情報ですが、確かな筋からの情報によれば有力3チームのオーダーは以下の通り。
スズキ    清水・中村・マサシ・北川・中川拓・中川智・秋山
トヨタ紡織  白柳・畔柳・カリウキ・佐藤・山本・前田・糟谷
トヨタ自動車 内田・菅谷・カーニー・高橋・尾田・熊本・岩水


 前回優勝のスズキが新人2選手を1・2区に起用してきました。清水大輔選手の好調ぶりは、10月のエコパ取材でわかっていましたが、中村選手がここまで調子を上げているとは知りませんでした。エコパで28分台を出した小山&森のルーキー仲間より良い状態に持ってきたということです。スズキサイトの記事によれば、3区のマサシで大きくリードする作戦だとのこと。かなり良いのでしょう。ちょっと楽しみ。
 トヨタ紡織は4区に全日本実業団5000m日本人トップの佐藤秀和選手、5区にエコパで28分20秒台の山本選手。1区に白柳選手、6区に前田貴史選手。3区でリードされてもひっくり返しそうなメンバーです。ただ、スズキの中堅勢(年齢的に)もエコパの後にしっかり練習ができているとスズキサイトは出ています。2強対決と言われていますが、メンバーを見ただけではわかりません。
 トヨタ自動車は7区に岩水嘉孝選手をもってきて、アンカー勝負の体勢です。浜野健選手を起用したり、伝統的にトヨタ自動車は中部では7区に大物選手をもってきます。岩水選手はエコパで28分10秒台の自己新。尾田選手も28分20秒台だったと思います。この2選手はともかく、他の選手たちは今季の状態がいまひとつ。終盤で三つ巴決戦に持ち込めるかどうか。

 さて、岐阜といえば高橋尚子選手の出身地。とても同じ年齢には見えませんが、昨日、県岐阜商高で同学年だった西武・和田選手がFA宣言(記事)をしました。もちろん、高橋選手の方が若く見える、という意味です。
 その高橋選手が今日、ボルダーから帰国すると聞いていました。18時に特急ひだが岐阜駅にとまった間に日刊スポーツ・佐藤記者に電話を入れ、出場レースを表明したかどうかを確認。しなかったということです。このタイミングで言われると正直、陸マガの記事がちょっとまずくなるので、よかったです。佐藤記者によれば、新しいトレーニングの話題が多かったとのこと。記者たちに腹筋を……とか。

 岐阜と言えば秋田国体ネタがありました。これは、面白い話なので日を改めて。


◆2007年11月11日(日)
 中部実業団対抗駅伝の取材。報道車に乗る数少ない取材です。ニューイヤー駅伝なども乗ろうと思えば乗れるのですが、後方のレース展開把握やフィニッシュ後の取材効率を考えると、プレスルームでテレビ中継を見ていた方がベターです。その点、中部実業団対抗駅伝はテレビ中継画面が見られる試合ではありません。ここ数年、カメラマンも兼ねて報道車に乗ってきました。中継所でトヨタ自動車提供の豚汁を食べることができますし、紅葉の絶景を見られたりしますが、大変なこともあって楽ではありません。

 携帯の電波が通じないのは大変なことにはなりませんが、レース後半で電波が届く場所に来ると、神戸新聞・大原記者からメールが来ました。兵庫県高校駅伝の速報です。1区の区間速報です。八木勇樹選手が区間賞で中山卓也選手が区間2位。29分15秒と29分28秒(速報タイム)。兵庫県大会開催地の篠山は難コース。29分台でも好記録ですから、29分台前半は快記録。八木選手は北村聡選手の区間記録を破る新記録でした。
 今日も兵庫ネタかと思えば佐賀ネタもあります。毎日新聞・黒尾記者とショットの江口カメラマンが佐賀県の同じ高校出身と判明。報道車のなかで佐賀談義がはずんでいました(中継所に先行するときなど、レースが見られないドライブタイムなのです)。佐賀といえば川本和久監督の出身県。飛騨はスタート時は雨でしたが、3区あたりではやんでくれました。「ナチュリルカップ第1回ももりんダッシュNO.1」の天気はどうだったのでしょうか。

 レース後は優勝したスズキを中心に、実業団駅伝初出場のトヨタ紡織・佐藤秀和選手、YKK・新原保徳監督、トヨタ自動車・安永淳一監督代行らを取材。佐藤選手は4区でスズキとの差を開けられてしまいましたし、YKKとトヨタ自動車はブレーキがありました。不本意な成績の関係者への取材が多かったのですが、これも仕事です。トヨタ自動車は1区・3区とブレーキでしたが、4・5・6区と区間2・1・1位。7区の岩水嘉孝選手は故障明けだったということです。

 帰りの名古屋への特急ワイドビュー飛騨は、指定席が満席。1両しかない自由席も満席で、中部実業団対抗駅伝の取材陣はデッキや通路に立っての移動。原稿も書けません(中日新聞浜松の石川記者はしゃがんで書いていました)。その時間を無駄に使うわけにはいきません。中日スポーツ寺西記者から、ドラゴンズのアジア・リーグ(?)の戦いぶりや、FA宣言した西武・和田選手のドラゴンズ移籍の可能性などを取材しました。これは取材ではなく、雑談ですね。
 取材したのは愛知県の高校駅伝関連ネタ。兵庫県大会で西脇工高が2時間04分45秒の大会新という情報も届いていましたから(須磨学園の2時間05分10秒は県大会2位の最高記録でしょうか?=要確認)。寺西記者の話で、岩水選手の母校の豊川高が私立だと初めて知りました。留学生選手を積極的に活用しているチームで、公立高校では珍しいなと感じていたのですが(世羅高も公立ですから、例がないわけではありません)。日本選手だけのチームで全国大会最高順位と頑張っている豊川工高とは、歩いて行ける距離なのだそうです。

 今日が誕生日の蠍座の男はトヨタ自動車九州の植木大道選手。九州一周駅伝では区間賞を2回取っています。本サイトでも紹介したことがありますが、三津谷祐、今井正人両選手とは同学年。23日の九州実業団駅伝が注目されます。


◆2007年11月12日(月)
 昨日の中部実業団対抗駅伝は飛騨路(岐阜県東部)の大会。兵庫とか佐賀の話は出てきても、岐阜ネタがないと思われた方もいるでしょう。表面的にはそうなのですが、行間・文字間には岐阜の話を盛り込んでいたのです。
「優勝したスズキを中心に取材した」と書きましたが、当然、5区区間賞の中川拓郎選手の話も聞きました。同選手は純地元である下呂市出身です。西武・和田選手のFA宣言の話題は、スズキの河野俊也コーチが高校(県岐阜商高出身)の先輩であることを読者に想起してもらおうとしてのこと。地元ネタは必ず触れるようにしていますし、今後も必ず触れます……と言い切るとプレッシャーになるので、極力触れるようにしたい、と言い直します。

 岐阜県といえば、秋田国体でネタがありました。1カ月以上も経ってしまいましたが、浜松中日カーニバルの品田直宏選手(筑波大)の結果を待ってから書いた方がいいと思っていたのです。決して、忘れていたわけではありません。
 ということで、<秋田国体の思い出・その3>です。
 このネタのキーパーソンは筑波大OBの日下部光先生。国体最終日競技終了後に岐阜県のテント前で海鋒佳輝先生(筑波大OB。北京アジア大会走高跳代表)とお会いしました。前日の成年男子走幅跳に優勝した品田選手(筑波大4年)が、5年後の国体開催県である岐阜県企業に就職する、と話していたので、そのあたりを確認しようと思いました。
 上の判断が必要ということで、テントから日下部先生を呼んでくれました。日下部先生、海鋒先生とも筑波大跳躍ブロックOB。品田選手は3年時まで短距離ブロックでしたが、ともに村木征人先生の薫陶を受けた選手たち(陸マガ高橋編集長も)。
 しかし、この手の人事話をするときは、慎重さを要します。国体のときもまだ、公にできない話なのかな、と心配しましたが、その点は大丈夫でした。ただ、どの企業に入るかなど、細かい部分はまだ公表できない段階だそうです。

 以前の日記(記事だったかも?)にも書いたように、今季の品田選手はシザースに変えたことで、(単に見た目のことだけでなく)走幅跳選手らしさが出てきました。高校時代の7m87は更新できませんでしたが、日本インカレの7m86をはじめ、7m80前後は何度か跳んでいます。
 浜松中日カーニバルは7m70台にとどまり、9月に跳んだ7m92は追い風3.1mで参考記録。藤川健司選手(現ミズノ)が06年に跳んだ7m91の筑波大記録には届きませんでした。公認では自己記録に1cm届かず、筑波大記録を1cm上回ったと思ったら参考記録。運に見放された感じもします。
 400 mで45秒台の力がありながら、学生時代に出せなかった成迫健児選手と同じです(それで、“つくばエクスプレス”を襲名できなかった)。しかし、品田選手の場合、8mは時間の問題、といえる充実ぶり。来年以降は本当に期待できると思います。

 話を国体の岐阜県テントに戻しましょう。
 岐阜県記録は小倉新司先生の7m90です。小倉先生は1968年のメキシコ五輪代表(当時岐阜北高教)で、7m90は翌69年に出した記録です。記録集計号には風の記載がありません。これは古い記録には良くあることで、公認範囲だったのは確か。
 日下部先生は、その小倉先生の大垣商高時代の教え子でもあり、1987年に7m41の高校1年最高記録を跳びました。この記録は長く残っていましたが、それを2000年に7m55と更新したのが前述の藤川選手でした。
 人のつながりとは不思議なもの。品田選手が岐阜登録となるからには、40年近く前に出された岐阜県記録を、一刻も早く破ることを期待したいと思います。そうすれば志田哲也先生(日下部先生と同学年。渡辺なつみ選手の高校時代の指導者)の持つ筑波大OB記録の7m95も、一緒に破る可能性があります。言わずもがな、ですが、筑波大OBとして8m一番乗りを、藤川選手と競っていくことになるでしょう。

 今日が誕生日の蠍座の男は清水将也・智也兄弟。将也選手は福岡国際マラソンに出ると聞きました。


◆2007年11月13日(火)
 昼食後、新宿駅に向かっている最中に携帯電話が鳴りました。ディスプレイには中日スポーツ・寺西記者の名前が。電車の時間が迫っていたので一瞬躊躇したのですが、あの話題だな、と思って電話に出ました。ところが、あの話題ではなく陸上競技の話でした。相変わらず空気の読めない男です。時期的に考えて、FA宣言をした福留選手の話だとばかり思っていたのですが…。セントレアが海上に建設された空港だということも教えてくれなかったし。
 しかし、3月の沖縄合宿取材の際、福留選手と池田久美子選手の共通点を発見したのは、他ならぬ寺西記者でした。それで今季はドラゴンズに注目したわけです。ペナントレースを制し……ていないのですが、クライマックスシリーズ、日本シリーズと勝ちましたし、本サイトでも川上憲伸投手を中心に盛り上がりました。1年間、楽しくプロ野球を見続けることができたのは、寺西記者のおかげだと感謝はしています。

 今日の取材は法大。15:30にグラウンドに着きました。愛知県の生んだスーパーハードラー、内藤真人選手が練習をしていましたが、まさちゃんポーズはしていませんでした。気のせいか今日は、いつもの取材中とは違ってかなりシリアスな表情。それが、練習中は普通なのかもしれません。やるときはやる男、なのです。おっと、今日は内藤選手ではなく、「箱根駅伝2008」(陸マガ増刊、12月8日発売)の取材。内藤選手はそのうち機会があるでしょう。
 練習中に成田監督の話を聞き、記事の方向性を定めてから柳沼選手と高嶺選手の田村高OBコンビにインタビュー。昨年の法大記事は4年生4選手(友広、松垣、田中、円井)の対談でした。円井選手も田村高OBです。今年は対談っぽくはなりませんが、田村高の先輩後輩のインタビュー。今年の法大を代表する2人ですし、走りのタイプも違えばキャラも違います。面白い話を聞くことができました。
 取材の最後には、福島弁で「頑張るぞ」をどう言うのかを教えてもらいました。
 福島独自の表現があるわけではなく、イントネーションが違うだけなのだそうです。語尾を上げて発音します。どうして聞いたのかというと、福岡国際マラソンに藤田敦史&佐藤敦之の福島出身コンビが出るので、記者会見で2人に言わせる……なんてことは考えていません。

 取材が終わったのは18時過ぎ。18:30頃から、めじろ台駅前のマクドナルドで仕事。書きかけの原稿を仕上げて送信し、続いて今日取材分の記事も仕上げました。22時近くまでかかりましたけど。その日に取材した分を帰りの電車に乗る前に仕上げる(このやり方は昨年も少しトライしましたが)。名付けて駅前原稿NOVAの駅前留学に対抗しています。
 箱根駅伝増刊はそのくらい、ハードスケジュールなのです。取材して間をおかずに書いた方が、効率がいいことが多いですしね。それで、記事の質が落ちることはありません。
 と書いておけば、愛知県出身のライバル、O村ライターにプレッシャーをかけられるかも?

 今日が誕生日の蠍座の男は鈴木尚人選手ですが、愛知県出身ではなくて神奈川県出身。ライバルの笹野浩志選手は愛知県出身です。


◆2007年11月14日(水)
 昨晩締め切りの原稿が書き終わらず、今日の昼過ぎまでかかってしまいました。実業団駅伝公式ガイドの資生堂&三井住友海上特集です。K編集者、申し訳ありませんでした。絶対仕上げられると思ったので、法大取材中に「今晩中に」と電話したのにもかかわらず…。
 失敗の原因ははっきりしています。取材でネタを仕込みすぎたこと。あれも紹介したい、これも書きたいといういつものパターンで、話を絞るのができなくなってしまいました。何度も書いているように、プロの書き手としては失格。絞って書く能力があってしかるべきです。
 仕事効率を重視するのなら、取材する段階でネタを絞る能力も必要です。ただ、面白い話というのはどんどん聞けてしまうもの。絞って書く能力ですかね。今の寺田に必要なのは。

 今日は17時から神奈川大で取材。神奈川大の担当は下里和義選手が4年生のとき以来ですから4年ぶり。4年前は合宿所の場所がわからず迷子になってしまいました。今回はかなり余裕を持って出発して、最寄り駅の東横線白楽駅に16:30に到着。どんなに迷っても時間までには着くだろうと余裕をかましていましたが、また迷ってしまって着くことができません。外国でもあまりないですね、ここまで迷うのは。
 恥を忍んで柴田マネに電話を入れ、とにかく神奈川大体育館まで移動。迎えに来てもらうという失態を演じてしまいました。取材以外で余分な手間をかけるとは、これも記者失格。ちょっと落ち込みモードで取材に入りました。
 が、それを表に出してしまったら、さらに良くありません。気を取り直して、余裕があるフリをして取材に入りました。

 最初に話を聞いたのは4年生の石田将教選手。報徳学園OBです。ということは、竹澤健介選手の1学年先輩。あらためて書くまでもなく、竹澤選手は飛ぶ鳥を落とす勢い。きっと会う人毎に「高校時代の竹澤君はどんな選手だった?」と聞かれているはず。同じことをしたら「この人もか」と思われてしまいます。
 そこで、「竹澤君のことは聞かないから」と最初に宣言。別に宣言しなくても、質問しなければいいだけのことですが、そこは仮面ライダーが「行くぞ、ショッカー」と宣言してから攻撃に移るのと同じですね。
 ということはどうでもよくて、石田選手は過去3年間箱根駅伝に出ていないことや、今年の関東インカレ2部のハーフマラソンで入賞していることなどから、タイプを予測して話を聞いたら、まさにその通り。時間があったので、チーム全体のネタも同選手から聞くことができました。
 取材の終了後に「やっぱり竹澤君の話を聞かせて」と、軟弱にも前言を撤回。
 石田選手によると、当時から国際大会を目指すことを口にするなど、相当に高い意識を持っていたようです。ただ、キャラは最近とはちょっと違ったと言います。まあ、これは誰にでもあることで、寺田の高校時代の知り合いが、今の寺田に会ったら別人だと思うでしょう。

 ちょっと間をおいてキャプテンの小村(おむら)章悟選手を取材。箱根駅伝予選会は走りませんでしたが、予選会翌日の高島平20kmで3位と好走しています。普通に考えたらあり得ない状況です。これは、突っ込んだら面白い話が出てくるはず。
 3人目は2年生の森本卓司選手。予選会トップですし、関東インカレ2部1万mで入賞しています。今年の神奈川大では一番スピードのある選手と予想して話を聞いたら、これも的中しました。練習での役割も予想通り。新設の人間科学部一期生でもあります。
 面白かったのは森本選手は鳥取中央育英出身ですが、中学までは兵庫県だったこと。前身の由良育英高だった頃から、同高には兵庫県の選手が多く進学しています。寺田の中では一般種目の選手に多いという印象でした。長距離は報徳、西脇工が県内にありましたし。
 森本選手は竹澤選手の1学年下ですが、中学では近い地域だったようで、何度も同じレースを走ったことがあるのだそうです。
 竹澤選手の高校の先輩と、中学時代の後輩的な立場の選手が、同じ大学にいる。不思議なつながりを感じました。アンチ兵庫派から「またかよ」よ言われそうですけど、それだけ多く兵庫県が人材を輩出しているということです。

 最後に大後栄治監督に話を聞かせてもらいました。小村選手の予選会不出場&高島平出場に関しては、同監督の話を聞いてやっと全体像が理解できました。そして、今年から神奈川大が取り組んでいる新しいテーマも。これは、それだけを記事にしても十分面白いし、逆に、文字数がないと書けないこと。
 面白いお話しでしたが、今回は選手のネタを中心に書くことになると思います。石田選手の20kmという距離に対するスタンスの変遷も面白いし、選手個々で十分、1ページの記事が書けます。3人全員に触れるとなると、面白いネタをカットしなくてはいけないでしょう。果たして、手際よくできるかどうか。ちょっと嫌な予感が…。

 取材終了は21時頃。
 白楽駅前のマクドナルドで仕事にかかりましたが、今日はサイトのメンテナンスやメール対応がしてなかったので、それだけで1時間以上かかりました。昨日の日記を書いたところで閉店時間。神奈川大の原稿には取りかかれませんでした。駅前原稿プロジェクト(昨日の日記参照)は早くも挫折しました。


◆2007年11月15日(木)
 今日は終日、自宅で仕事。
 実業団駅伝公式ガイドの福士加代子選手と吉川美香選手の原稿を書き上げました。福士選手については、タイミング的に難しいこともありましたが、コンセプトが実業団駅伝と決まっているので、迷うことなく書けたと思います。吉川選手も今年は、中距離のスピードを生かせる区間への出場と焦点が明確なので、こちらも書きやすかったです。
 パナソニックは、沖電気から移った平良茜選手も全日本には出られますし、体調不良で東日本予選を欠場した杉原加代選手も、岐阜には間に合うといいます。世界ロード6位のキムウェイ選手もいますから、かなりやりそうな布陣です。

 昨日の日記を書きました。兵庫県選手のネタを書いていまして、またかと思われた方も多いと思われます。ただ、本当に、こちらから兵庫県選手ネタを探しているわけではありません。通常の取材活動の中で、兵庫県選手やその情報に接する機会が、自然と多くなっているのです。

 13日の日記で福島弁について触れました。「頑張るぞ」の福島特有の言い方は特になくて、イントネーションが違うだけだという話を、福島県出身の選手たちから聞いたという話でした。これに対して以下のようなメールをもらいました。

福島弁で訛らせると「頑張っぺ」になるのではないでしょうか。
これだと独り言っぽくなりますね。
2人で声を合わせて、という感じだと「頑張るべ」です。
ただ、これだとありきたりになるので、「頑張っぺね」がいかにも方言らしい表現になります。


 なるほど。東北地方特有の語尾の上げ方で話すときは、「頑張るぞ」よりも「頑張るべ」の方が発音しやすいかもしれません。という話を福岡国際マラソンの取材中にしようとは思っていませんけど。


◆2007年11月16日(金)
 14時から赤坂のホテルで東京国際女子マラソンの記者会見を取材。
 先に外国3選手(ジェノベーゼ、バルシュナイテ、コスゲイ)の会見が行われ、フォトセッションを挟んで後から、日本の3選手(大南博美、野口みずき、渋井陽子)の会見。
 外国選手の会見ではよく、その国の五輪選考方法などの質問が出ます。その質問に対しバルシュナイテ選手(リトアニア)はすでに北京五輪代表に決定済みで、今回のレースは2年後のベルリン世界選手権の選考材料となると話していました。競技人口の少ないヨーロッパでは有力選手の数も限られるため、意外と早く代表が決まっています。ただ、五輪前のレースですでに、五輪翌年の世界選手権の代表選考が始まっているというのは、ちょっとビックリ。所変われば、選考方法も変わるということです。

 フォトセッションでは、選手たちが手を重ね合わせるポーズが恒例です。あれって、球技などでチームメイトたちが一緒に頑張るぞ、という雰囲気があると思うのですが、どうなのでしょうか。ですからマラソンレース前に、これから戦おうという選手同士がやるポーズとは思えない。一緒に記録を出しましょう、という意図ならわからないでもないのですが。
 ところが、さすがに今回は野口・渋井対決を強調したいメディアが多いのか、手を重ね合わせるポーズのリクエストはありませんでした。

 日本3選手の会見の様子は記事にしたとおり。朝日新聞・堀川記者の当意即妙を得た受け答え……ではなくて、質問ぶりが緊張感を上手い具合に緩和していたように感じました。
 記者会見が行われると、いよいよという感じで雰囲気が盛り上がってきます。もう何10回と経験していることなのに、緊張感で押しつぶされそうでした。これが福岡国際マラソンになったら、有力選手の数がもっと増えます。緊張しない方法を考えておかないと。考えてどうなるというものではなく、どれだけ腹をくくれるか。頭で意識してもダメかもしれません。

 今日誕生日の蠍座の男は渡辺真一選手(山陽特殊製鋼)。中学時代は全日中、ジュニアオリンピックともに2位。1位は両大会とも石本文人選手でしたが、その石本さん(ブログ)によれば、渡辺選手のラスト1000mはものすごく強かったそうです。2分30秒台だったとか。
 なんでも、石本選手の背中を叩くなど、合図をしてスパートしていたといいます。これは、「行くぞ、ショッカー」と宣言してから攻撃に移る仮面ライダーと同じ。と思うのは早計でしょう。石本選手とは同じ近畿地区同士で何度も対戦していて、気心の知れたライバル同士。レースパターンも熟知した者同士で、今さら隠す必要もない。むしろ、合図をして一緒にペースを上げることで、他の選手を振り切りやすいというメリットもあったと思われます。


◆2007年11月17日(土)
 東京国際女子マラソン前日
 新聞記者たちは早朝練習取材のため朝の6時台に赤坂のホテルに行ったようですが、寺田は原稿を優先。大阪国際女子マラソンや福岡国際マラソンなど出張取材の場合は、金曜日会見でも土曜日も取材に行きます。それが東京開催の場合は“日常”に意識が近くなってしまって、取材よりも原稿に追われてしまいます。
 昨日の日記で散々、緊張感が違うと書いていてこれですからね。意外と落ち着いているのかも。この辺の感覚というか、行動パターンは、いつもの世界選手権と日本開催の世界選手権の違いに近いかもしれません。

 締め切りは箱根駅伝増刊の神奈川大。14日の取材ではネタを仕入れすぎた感じがありましたが、原稿を書く段階で上手く整理できました。ただ、文字数が限られていることに変わりはなく、余ったネタもあまたあります。本番で活躍したとき、将来、実業団で活躍したときにストックさせていただきます。

 意外と落ち着いていると書きましたが、夜になって取材準備などをしていると、緊張感が異常に高まってきました。記者が緊張しても何の意味もないのですが。
 夜、TSUTAYAに行って借りていたCDを返却した際、思わずコメディ映画のDVDを借りてしまいました。気持ちを落ち着けるのにいいかな、と思って。こういうときは、瞬間芸的に笑わせるfarceではなく、ストーリーで笑わせるcomedy(シチュエーション・コメディ)でないとダメです。最近、三谷幸喜がお気に入りなので、「ラヂオの時間」を借りました。

 今日が誕生日の蠍座の女は近藤高代選手。蠍座の男子選手で統一してきましたが、近藤選手だけは特別です。理由は全日本実業団で4m40にバーを上げたとき、「4m37では男らしくない」と言い切ったから……ダジャレ系統で笑いを取ろうとするのがfarceとするなら、このように“蠍座の男”を書き続けていて、例外的に“蠍座の女”を出すのはcomedyのつもりです。


◆2007年11月18日(日)
 東京国際女子マラソン取材。スタート1時間半前に着いたのに、プレス室に充てられた国立競技場の会議室(?)は満席です。会見場にもテレビが置かれていたので、そこの椅子に腰掛けてテレビを見ることに。その後、最前列には急きょ、テーブルが持ち込まれていました。

 トラック&フィールドや駅伝と比べ、マラソン取材は記者の能力で取材機会が増えるわけではありません。レース前に選手と接触することはできませんし、レース後の上位選手の動線は限られていて、話を聞く機会はすべて共同取材となります。今回で言えば野口みずき選手はまさにそうでした。
 では、どこで差が生じるかといえば、まずは事前取材(下調べ)の能力。当日に、どんな資料を持っていくか。今回であれば35kmからの5kmに要したタイムの資料がビンゴでした。テレビ局も用意していたようですが。当日であれば、指導者など関係者への取材能力も大きいでしょう。
 あとは、同じ材料でも活用の仕方で媒体上の展開は違ってきます。同じ映像を見ても、同じコメントを聞いても、記者の知識や能力で応用の仕方が違ってきます。何と結びつけるか、どうストーリーを展開させるか、という部分ですね。

 敗れた有力選手への取材も記者たちが殺到します。ただ、選手も話せない状況にあることが多々あります。今日だったらフィニッシュ直後の渋井陽子選手に話を聞くのは無理と判断。寺田の場合、こういうケースで難しいと判断したらあきらめます。敗因は指導者に聞けばいいことですし。
 それでも、直接聞くことができればベターですから、表彰式後に様子をうかがっていました。各社記者たちも渋井選手が話せる状態かどうかを確認するように後を着いていきます。夜のTBSのニュースで、渋井選手の後ろを怪しい目つきで着いて歩く寺田の姿が映っていました。あれは格好悪かった。
 今日の渋井選手は記者たちの問いかけに、ある程度は答えていました。つらくないはずはありません。正直、取材する側もつらいのですが、ここは仕方ありません。2週間後の福岡でも勝者と敗者が色分けされるのだと思うと、ちょっと複雑な気持ちになってきました。でも、それが競技スポーツです。

 尾崎朱美選手にもひと言聞きたいと思ったのですが、なかなかドーピング検査室から出てきません。待つこと数10分。その間も指導者たちと話をできますから、無駄にはなりません。天満屋の武富監督には、駅伝展望記事用にコメントをもらえましたし。
 その後、大会本部ホテルに移動。フェアウェルパーティー前に30分ほど会見の様子を原稿に起こしました。
 パーティーでの取材は基本的にNGなのですが、取材が殺到しない選手の場合は状況を見て二言三言、話すことはできます。治外法権的な***記者と一緒に話を聞くという奥の手もあります。しかし、パーティーに顔を出した一番の目的は……。


◆2007年12月1日(土)
 いよいよ明日は福岡国際マラソン。昨日から福岡入りしています。
 日記が書けなかったのは早い話が忙しかったからですが、予定を……と言い訳をするのはやめて、素直に反省したいと思います。とにかく、仕事が遅い。それに尽きると思います。

 昨日は会見の取材が中心でした。陸マガの12月号にも書きましたし、あちこちで紹介されているので改めて書くまでもないのですが、会見記事で日本選手ビッグ4と見出しをつけた4人は錚々たるメンバーです。ちなみに、一番ビッグなのは高岡寿成選手。フォトセッション後に「また背が伸びた?」と聞いたのですが、それはないとのことでした。
 この4人、色々な組み合わせで見ることができます(4選手のマラソン全成績一覧)。高岡選手と藤田敦史選手の新旧日本記録保持者対決とか、○○対決という表現は好きではないので、“○○の組み合わ”せという書き方で紹介したいと思います。

 やはり、一番の話題は2時間6分台の記録を持つ日本選手2人が、同じレースに出ることです。2時間6分台は過去、犬伏孝行選手、藤田選手、高岡選手の3人しか出していません。そのうち2人が一緒のレースに出ることが、初めて実現する。2週間前の東京国際女子マラソンで、女子で初めて2時間19分台2選手が同じレースに出場しましたから、歴史的なレースが続くことになります。
 これも一番の話題と言っていいと思いますが、オリンピックのトラック入賞者(シドニー五輪1万m7位の高岡選手)と、マラソン入賞者(アテネ五輪マラソン5位の油谷選手)が同じレースに出場するのも、本当に久しぶりのこと。近年では高岡選手しかトラックで入賞していません。諏訪利成選手との“としなり”対決は2003年の福岡でありましたが、そのときはまだ、諏訪選手がアテネ五輪で6位入賞する前でした。
 いつ以来なのかは、ちょっとわかりません。1964年東京五輪で円谷幸吉選手が1万mで入賞していますから、円谷選手と君原健二選手の同時出場が東京五輪以降にあれば、それ以来ということになると思われます。

 藤田選手と佐藤敦之選手の“福島対決”“あつし対決”(やっぱり対決とした方が書きやすいですね)は今年2月の別大で実現していますから2度目。それでも、新鮮味がないと思うのは早計でしょう。あのときは2人とも、“力まない練習”に主眼を置き、言ってみれば手探りの状態で試したレースでした。その後、これも陸マガに書いたように、別大を1つのたたき台に、自身の持ち味を加味して万全の状態で今回の福岡に臨んでいます。
 “試し”の段階で対決した別大と、“結果を出すため”に対決する福岡では、意味合いが大きく異なります。これに注目しない手はないでしょう。
 油谷選手と藤田選手の“同学年対決”も、01年の世界選手権エドモントン大会以来2度目。野口・渋井の同学年対決はお互いに、相当意識していました。油谷選手は01年のびわ湖で2時間7分台を出した後、藤田選手について質問されたとき「ノーコメントです」と言っていましたから、当時は相当に意識していたと思われます。今はどうなのでしょう? だからなんだ、という結論はないのですが。

 油谷選手と佐藤選手の中国電力対決は3度目。2度目は03年のパリ世界選手権。最初は00年のびわ湖マラソンで、実は2人ともそれが初マラソンでした。佐藤選手は当時早大3年で、前年に藤田選手が出した学生記録を更新しました。中国電力に入社することはほぼ決まっていたようで、油谷選手もそれは知っていたそうです。
 油谷選手は「いつ離れるのか」と思って走っていたら、自分が先に集団から後退してしまったと話していました。しかし、翌01年のびわ湖で前述のように2時間7分台を出し、佐藤選手の入社を余裕を持って迎えられたようです。坂口泰監督が以前、そう話していました。
 高岡選手と佐藤選手の対決は、01年福岡以来2度目。この2人に関するネタは……特に思いつかないのですが、強いて言えば日本記録でしょうか。高岡選手が3000m・1万m・マラソンの日本記録保持者で、昨年までは5000mも持っていました。3000mからマラソンまでの距離で唯一出せなかったハーフマラソンの日本記録を、10月に出したのが佐藤敦之選手ということになります。高橋健一選手のハーフマラソン前日本記録も、レベルが高いと思われていました。高岡選手の5000m日本記録も、1万mよりレベルが高かった。「難しいと思った記録から破られていきますね」と、10月の取材時に高岡選手は話していました。

 さて、その4人が決戦前夜に何を食べたのか、取材をしました。大会本部ホテル内での取材は禁止ですから、食事に行くとき(藤田選手)、帰ってきたとき(他の3選手)に、ホテルの外で話を聞きました。取材というよりも、雑談です。ちなみに、佐藤選手は杉森美保選手と一緒でした。
 面白いことに、その佐藤選手だけが「炊き込みご飯というか、釜飯」で、残りの3選手は「うどん」でした。佐藤選手が勝てば“非うどん選手”が勝ったということになりますが、他の3選手が勝ったら“うどん選手”が勝ったということで、差がなくなってしまいます。何うどんを食べたかを聞かなかったのが失敗でした。
 という感じで、決戦前日の博多の夜は更けていったのでした。


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◆2007年12月2日(日)
 昨年はアジア大会直前で単行本の仕事などを抱えていたため、師走の福岡に行けませんでした。ということで、2年ぶりの福岡国際マラソン取材。朝はけっこう早く起きましたが、抱えていた原稿を書いていたため結局、ホテルを出発したのは10:15。最寄りの中洲川端駅で、大濠公園方面の出発ホームが2個所あって、これが理解できずに1本後の電車になってしまいました。プレス席の席取りはお願いしていたので焦る必要はないのですが、先々週の東京国際女子マラソンがすごい混み方だったせいか、気が急いていた感じです。
 平和台競技場に到着すると知己の関係者や記者たちに挨拶しながら進んで行くので、若干速度が鈍ります。これは仕方ありません。プレハブ・プレス室には11時少し前に到着。予想したほどの混み具合ではありませんでした。
 もっとびっくりしたのは、カメラマンの数です。東京国際女子マラソンでもスタートの絵を撮ろうとしましたが、フィニッシュ正面のポジションはプロのカメラマンたちでいっぱい。安っぽいカメラを手にしたライターが入り込む余地はありません。
 それが今日は、スタート時もフィニッシュ時も、寺田が入り込む余地がありました(どちらもカメラマン申請はしています)。東京と福岡の違いなのか、男女の注目度の違いなのか…。

 とにかく、佐藤敦之選手(中国電力)の強さが光りました。30kmまでに余裕のある選手とない選手では、あそこまで差がつくのだということを、見せつけられました。油谷選手が2位確保を意図してもう少し早く集団から離れていれば、もう少し差を小さくできたでしょう。でも、今日の佐藤選手の脚勢を見たら、それでは勝てないのは明らかです。
 前半の5km毎が15分10秒〜20秒のレースになって、後半でペースアップする展開でも、2時間8分前後は出ます。その展開だったら、他の選手にもチャンスがあったかもしれません。しかし、どの陣営も今日のペースを想定して練習を積んできたはずですから、言い訳はできません。実際、寺田の知る限り、どの選手からも言い訳がましい話は出なかったと思います。

 その佐藤選手もアフリカ2選手に後れをとって3位という順位でしたが、これはどうしようもありません。スピードマラソンで彼らに勝つというのは、ちょっとやそっとでできることではないのです。選手層が絶対的に違いますから、欧米の賞金マラソンや日本の冬のマラソンでは、そのうちの“誰か”が必ず力を発揮します。アフリカ勢の進出状況も、男女差がある部分。
 例えばハーフマラソンでいえば、2007年リストで1時間00分30秒以内が、日本人1人(佐藤選手)に対してアフリカ選手は23人(他にアメリカ1人、ブラジル1人)。そういう状況で戦っているのです。今回、佐藤選手が30秒差にとどめたのは、トラックやハーフマラソンの現状を考えたら、大健闘だったと思います。

 これがオリンピックや世界選手権になれば、話は違ってきます。理由はあらためて書くまでもないので省略しますが。今、日本選手が一番勝つのが難しいのは、ロンドン、シカゴですね。これは間違いないでしょう。佐藤選手からも「2時間5分台を狙うときは」という発言が出ました。09年には、両大会への再挑戦があるかもしれません。

 レース後は共同会見で松宮祐行選手(早めに後れたのは腹痛のため)、佐藤選手、ワンジル選手を取材。その後は“あちこち”で選手、指導者をつかまえます。平和台競技場はそれが一番困難なレイアウトになっているのですが、最近やっと、コツがつかめてきました。坂口監督、油谷選手、高橋謙介選手らを取材。ドーピングルームから出てくる藤田敦史選手を最後まで粘って待って、なんとか少し取材ができました。
 コツがつかめてきたと書きましたが、少ないですね、この人数は。東京国際女子マラソンといい、福岡国際マラソンといい、不満が残ります。その分、福岡の場合は大会本部ホテルの西鉄グランドホテルが取材のしやすいレイアウトになっています。千里阪急ホテルと以前は双璧でしたが、大阪国際女子マラソンが別のホテルになったため、現行の6マラソンでは西鉄ホテルが一番でしょう。

 西鉄グランドホテルでは幸運にも、高岡寿成選手に話を聞くことができました。これは独占取材に。前向きな発言を聞くことができて、ホッとしました。
 負けた選手への取材は神経を使います。寺田の場合はもとから、落ち込んでいる選手から何が何でもコメントを取る、という姿勢ではありません。相手の状態を見ながら話しかけるようにしています。今回、五輪代表を狙っていた選手たちでは、最年少の佐藤敦之選手でも29歳。レース後も皆、しっかりと話ができる状態でした。
 女子ではときおり、話ができなくなる選手が見受けられます。それほど多くありませんが、男子よりは確実に多い。どちらが良いとか悪いではなく、これも男女差なのかもしれません。


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