続・寺田的陸上日記     昔の日記はこちらから
2004年8月 アテネの月末の朝の光
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◆8月1日(日)
 富士北麓公園陸上競技場で、スプリントチャレンジカップIN山梨の取材。
 アテネ五輪前最後の調整試合ということで有力選手が多く出場し、ネタもかなり仕入れることができました。
 10日間ほど日記をサボってしまいましたが、ミズノ壮行会、全国小学生交流大会と、じっくり書きたいネタがあったのです。それを書こう、書こうと思いながらも時間がまったくとれず、日付だけが進んでしまいました。仕方ないので“駆け足日記”にして、詳細は時間ができたときに紹介することにします。

◇7月22日(木)
 今日は何カ月ぶりかのオフ。カフェに行って本でも読もうかと思っていましたが、ほとんど寝ていました。夜になって少し仕事の電話も。
 明日から5日連続取材。締め切りもあります。一転して、猫の手モードになりそう。

◇7月23日(金)
 15時からミズノトラッククラブの壮行会取材。その前後に5選手の共同会見もあり、その後に追加代表となった3選手の個別取材もありました。
 この時期になると関係者の間で「アテネ出発はいつ?」という会話がかわされるのが定番。必然的に、寺田がアテネ五輪取材に行けないことも話題になります。自分でも意外でしたが、涙がこぼれそうになったシーンがありました。詳しくは、時間ができたら。

◇7月24日(土)
 全国小学生交流大会を取材。この大会は単に選手を集めて競技会を行うだけでなく、色々と研修もあります。そのうちの1つに、夕食後の講演がありました。演者は土江寛裕選手。このときの様子も、時間ができたら詳しく書きたいのですが…。ちょっと感動しました。

◇7月25日(日)
 午前中に取材。10時からの末續慎吾選手の公開練習には間に合いませんでした。残念。

◇7月26日(月)
 13時から国近友昭選手の共同会見。キャラの違う瀬古監督と国近選手の師弟への期待が膨らみました。今日から締め切りも続きます。

◇7月27日(火)
 昼からカメラマンも兼ねて取材。夜は締め切り。

◇7月28日(水)
 前日締め切りの原稿が終わらず、今日までずれ込んでしまいました。
 いくつか、連絡なども忘れてしまっています。しかし、寺田にとってこれは、仕事ぶりが良くなってきたということ。忘れるくらいの連絡など、重要度は低いわけで、これまではそういったレベルの仕事まで気にして自分を追い込んでいました。今の寺田よりもいい加減な仕事ぶりの人間はごまんといます。
 その人の元の仕事ぶりがどうかが問題ですが、細かいことを気にしすぎるタイプの人間は、いい加減になる覚悟で仕事をするのも一計かと。

◇7月29日(木)
 超大作原稿の締切ですが、書き終わらず。
 担当編集者の方の尽力(気遣い? それとも計算?)で締め切りが明日に伸びました。

◇7月30日(金)
 超大作原稿が夜中までかかってしまいました。手直しなどにも時間がかかりましたし。しかし、出来は自分としてはまあまあ。出来というよりも、ここまで書けたということ自体に達成感があります。これまでの取材で蓄積してきたネタや、感じてきたことを書き込むことができたと思っています。
 具体的に言ってしまうと、陸マガ次号のアテネ五輪日本選手の展望原稿。自分の達成感よりも、読者の評価が重要ですけど。

◇7月31日(土)
 今日も締め切り。朝の4時までかかって3本書きました。


◆8月2日(月)
 午前中に原稿を1本書き、遅めの昼食後に昨晩録画したTBSのグランプリ・シリーズを見ました。今年は寺田も現地に行っていた試合も多かったわけですが、日本人選手のコメントを取るために見逃していた種目もありましたし、それでなくとも、スタンドの記者席から見えることと、TVカメラでとらえる映像は大きく違いますから、「あのシーンは、こんなだったのか」と、思うこともしばしば。これは、国内の試合でも一緒なのですが。陸マガの次号にオリンピック全種目優勝者予想を書かないといけないのですが、かなり参考になりました。
 日本人選手のVTRも勉強になりました。特に為末大選手のVTRは参考になりましたね。取材するとっかかりになりそうな点に1つ、気づいたのです。でも、肝心の為末選手が結果を出すであろう、オリンピックの場にいることはできません。その辺がちょっと辛いところ。
 などと感慨にふけっていたらインターハイのテレビ放映開始時間が過ぎていることに気づきませんでした。16時から1時間枠でしたが、最後の20分間だけ録画しました。電話をかけたり、かかってきたりしていたので、ビデオはまだ見ていません。
 昨晩から予想していたことではあるのですが、夕方の段取りの結果、急きょ出張に。ただ今、国内某所のホテルです。いきなりの出張ということは、いきなり仕事が入ったということですし、それ以外にも追加の仕事が。ただでさえ、今週は締め切りが続くスケジュールだったので、かなりタイトになりました。
 しかし、なぜか心地よい緊張感があるのです。追加の仕事が、男子1500m関係ということもあります。五輪種目では最古の日本記録だった石井隆士さんの記録を、27年ぶりに小林史和選手が更新しました。これは頑張らないといけない“時”です。
 その他、五輪直前ならではの仕事もあります。それに加えて、アテネに行けないのですから、今、頑張らなくていつ頑張るのか、という心境。土曜日まで、本当にきついスケジュールですが、今の集中力を持続できれば乗り切れそう。昨日のスプリントチャレンジカップIN山梨の記事も書けちゃったりして……それは無理か。


◆8月3日(火)
 7:30から成田空港に。もちろん、小林史和選手の凱旋帰国を取材するためです。昨日の時点では誰の取材か明かせませんでしたが、今は書いても大丈夫……ということは、ライバル誌も取材に来ていて、隠す必要がなくなったということ。わかってらっしゃる方も多いとは思いますが、ここは個人的な日記とはいえ、何でもかんでも書けるってわけではありません。
 取材は順調。オリンピック種目最古の日本記録を更新した――そのことだけでも、色々と聞くことはあるのですが、それがなくとも、面白い話のできる選手なのでしょう(ギャグという意味ではありません)。自分のことを観察する目が鋭くて、突っ込んだ考えを持っているからだと思うのですが。
 13時にはWSTFに戻りました。構想は昨晩、別の原稿を書く最中にできていたのですが、移動の車中とWSTFで15時までに原稿を書きました。
 その後、陸マガ次号別冊付録用にアテネ五輪の優勝者を予想。担当編集者の“真夏の夜の秋山”次長に、「優勝者を予想するだけでは、どのくらいの自信を持って予想をしているかわからないので、“優勝確率”のパーセンテージも書いていいか」と質問したら、ダメとのこと。かといって、優勝者予想の解説もできないし。実は、男子ハンマー投は……おっと、このネタは雑誌の発売後にしないと。
 この予想がけっこう時間がかかりました。その作業最中に、急な取材依頼があって、予想作業終了後に電話で高橋尚子選手について話をしました。寺田への電話取材で、この手の依頼はオリンピック前はときどきあります。Qちゃんの今後進む道を予想するという企画でしたが、個人的な希望も話をさせてもらいました。けっこう面白い話をしたつもりです。その“面白さ”が、どこまで通じているか。週刊現代と言っていました。発売はいつなのでしょうか。
 その後はこなさないといけない雑用も多く、なかなか原稿に取りかかれません。わずか20行だったのですが…。今日明日中に200行規模の原稿を3本書かないといけませんし。1カ月前の7月3日は、ローマからナポリに列車の旅をしていました。原稿を抱えていましたから、優雅に「ローマの休日」とは行きませんでしたが、ちょっと懐かしいです。オードリー・ヘップバーンの「ローマの休日」の次の主演作は「麗しのサブリナ」。そうそう。今日はインターハイのテレビ中継もしっかり見ました。男子100 mの優勝者は……。


◆8月4日(水)
 インターハイの男子棒高跳で川口直哉選手(磐田南高)が優勝。今大会の静岡県勢としては優勝者第一号です。静岡県出身(袋井です)の寺田としてはひと安心です。実は昨日、次のようなメールをいただきました。
IH2日目を終えて、静岡県勢男子の入賞がゼロ。
女子では入賞者がわずかに一人。
男女の4継では1チームが決勝に残ったのみ。
うーん・・・。
静岡出身の寺田さんはこの現象をどうとらえますか?
日記へどうぞ。

 2日目終了時点での過去最低成績ってことなのでしょうか。その辺の詳細な記録はわかりませんが、かつの陸上王国としては寂しい限り。でも、静岡の関係者の方には申し訳ありませんが、静岡が弱くても何も感じなくなっています。93年の宇都宮インターハイで、連続優勝が途切れたときは大ショックでしたし、その後もしばらくは王国復活を切に願っていましたが……なんでしょう。プロ野球で言うと、阪神ファンみたいな心境になってしまいました。勝利を願ってはいるけど、負けても仕方ないか、みたいな。
 あっ、93年以降も古田哲弘&村松寛久の頃の浜松商とか、昨年の静岡国体のように、頑張った年もあります。インターハイや国体では、復活気配のあった年もありますが、ひどいのはシニアの代表。オリンピックは96年のアトランタ(馬塚貴弘選手)を最後に、世界選手権は97年のアテネ(尾上三知也選手)を最後に、静岡県の高校出身の選手が世界選手権とオリンピック代表になっていません。釜山アジア大会代表もいませんね。98年のバンコク・アジア大会もいないんじゃないかな。眠くて正確に調べられません。
 凋落の原因はなんでしょうか。たぶん、中学生が全体的に弱くなっています。サッカーに人材が流れているのかもしれません。でも、高校にも問題があるような。
 以前は西部の浜松商・西遠女・浜松工、中部の橘、東部の富士見・富士宮北と陸上強豪校が多くあり(ちょっと昔は磐田南や日大三島)、進学校の浜松北・浜松西・沼津東などからも、それなりに選手が育っていました。進学校の方はまあ、あれですけど、強豪校の低迷が大きいですね。浜松商の山下昌彦先生、磐田北の鈴木吉之先生、西遠女の高田先生、富士見の花崎先生、橘の大塩先生といった優秀な指導者が現場から離れたのが凋落の一因でしょう。浜松商は山下先生の跡を継いだ杉井先生が頑張っていますが。長距離に力を入れる学校が増えても解決しません。
 解決策は社会的背景をどうこう論じるより、上記の先生たちの現場復帰。陸上競技は指導者個人の頑張りが大きい!(福島大を見よ!)


◆8月10日(火)
 すいません。また1週間近く、日記をさぼっています。それにはもちろん、理由があります。単純に猫の手状態。つまり指が肉球のようになっている……わけないでしょう。要するに、取材と締め切りの連続。飛び込みの調べもの依頼なんかも、今日はありましたし。
 一応日記ですので、今日の出来事を。
 11時くらいまでに原稿を仕上げて送信。難しい内容ではないのですが、“気を遣う”類の原稿でした。その後、“電話かけまくり”タイムに。何本したでしょうか。3〜4本ほどかかってきた電話も。
 その後は15:30からの取材準備に。13時頃だったか、すごい勢いで雨が降り始めました。今日はカメラマンも兼ねての取材でしたが、その勢いで降り続いたら撮影はまず無理。と、思っていたら、WSTF(新宿の作業部屋です)を出発する際には天気は回復していました。こういうことがあると思い出すのが、信岡沙希重選手の静岡国際のときの「日頃の行いの違いでしょう」です。
 本気にする人はいないと思いますが、寺田も日頃の行いがいいのです。いい例が今日、ありました。ある女子選手の取材でしたが、応接室でのインタビューが終わると、その選手がドアを開けて寺田を先に通してくれようとしてくれました。その選手の会社での取材でしたから、一応こちらがお客さんとなるわけで、そう考えると普通のことです。
 しかし、です。アテネ行きのなくなった寺田は最近、妙にパリ(昨年の世界選手権)が懐かしくてしょうがないのです。
「こちらがお客さんですが、パリでは女性より先に出たり入ったりしてはいけないんですよ」と言って、その女子選手に先に出てもらった次第。これって、日頃の“いい”行いにならないでしょうか。
 取材終了後、陸マガ編集部に。今月は12日発売ですから今日が配本日。皆さんより一足早く9月号をゲットしました。表紙は女子4×100 mR優勝の埼玉栄アンカーの高橋萌木子(ももこ)選手。別冊付録が「アテネオリンピック陸上競技完全ガイド」。いやー、どっちにも頑張って書かせていただきました。写真も何点か撮っていますね。具体的な内容については、明日か明後日にでも。
 今晩もWSTFに泊まりで原稿書き。もしかしたら明後日からに変更される可能性もありますが、明日の夕方から2泊3日で出張予定。それまでに、200行原稿を1本仕上げないと。


◇8月5日(木)
 インターハイは男子5000mがすごかったですね。モグス選手が1500mに続いて2冠を達成し、2位の佐藤悠基選手が13分45秒23の高校歴代2位。4位にも佐藤秀和選手が13分47秒65の高校歴代4位で続きました。従来の高校歴代1〜3位は全て、10〜11月に出た記録でしたから、夏場に出たという点が評価されますね。佐藤悠基選手は歴代3位だった佐藤清治選手の13分47秒8を破る、“佐久長聖高”最高記録であり、“佐藤姓”高校最高記録でもあったわけです。
 朝の4時までかかって30行原稿6本セットを書き上げました。


◇8月6日(金)
 2時間睡眠で富士北麓公園へ。短距離・ハードル五輪チームの国内最後の公開練習日です。記事は陸マガ9月号に書きますので、そちらをご覧ください。
 今日のネタは、土江寛裕選手が日本選手団男子最年長選手と判明したことです。同じグラウンドに2学年上の朝原宣治、谷川聡両選手がいましたが、独身では土江選手が最年長だなと、ある記者が気づいたのでした。同学年の室伏広治選手を4カ月抑えての堂々の最年長。だからなんだというわけではりませんし、何が意味があるのかと聞かれれば、意味はないと思いますが。
 土江選手といえば、7月24日の全国小学生の際の講演が印象的でした。最初は、司会の方が末續選手の名前を出したこともあって、ちびっ子たちが「末續選手が来ているのか」と、辺りをぐるぐると見回し始めました。最初の方は小学生たちの集中の仕方が散漫になっていたのです。それを徐々に、ちびっ子たちの興味を惹き付けていった話の仕方、ネタの面白さには正直、感動すら覚えました。退場する際には小学生たちが集まってきて、なかなか帰してもらえないほどの人気ぶり。末續選手も真っ青といったところ。
 話の内容も、寺田が聞いても“そうだったのか”と思えるほど、専門的な部分もありました。そういった部分まで、小学生にも興味が持てるように話せてしまう土江選手。将来、陸上競技の普及に役立つ人材ではないかと思いました。
 でも、それは将来の話。まずは、目の前のアテネで結果を出すことが土江選手の仕事です。そして今回は、寺田がアテネに行けませんので、4年後の北京でも頑張ってもらうということにしましょう。冬期練習中の取材で、今年は引退をかけて走る云々と話していたような気もしますが、いざ、引退しようかという状況になっても、体が動けば「まだ、できるじゃん」という気になるもの。日本選手団最年長の弘山晴美選手が、いい例です。


◇8月7日(土)
 昨日は原稿を即日仕上げ。2時間睡眠で、かなり頑張りの要る仕事だったので、さすがに早めにダウン。その前に、石井隆士先生に電話をして、日本記録を27年ぶりに破られたことに関するコメントをいただきました。かなり濃密に話していただいたので、陸マガ次号に掲載するだけでなく、今後の取材にも活用できそうです。
 今日は成田空港で取材した小林史和選手のコメントをまとめました。
 21:30にはWSTFから自宅に移動。何日ぶりだろう。


◇8月8日(日)
 えーと、久しぶりの休日です。昼間は本当に久しぶりに、高校野球をじっくり見ました。いやあ、野球もよく見ると面白いですね。“能動的に見る”という表現をさせてもらいます。どういう意味かというと、陸マガ9月号の別冊付録にも書いたことなのですが、スポーツは受け身で見ているうちは本当の面白さがわからないということです。自分で考えながら見るのです。
 ピッチャーの投球をしばらく見ていて、配球を考えるのは……みんな、やっているかもしれません。今日、気づいたのは野球の練習方法について。バットの素振りは、某投てき選手が話していたあの練習法、イメージもってやれば有効じゃないかとか(素振りのときのイメージの仕方で、かなり差が出てきそうな気がするのですが)。バッティング練習の量をMAXでやり尽くしたら、次はこんな方法があるんじゃないか、とか。試合のこの局面で監督が選手にかける言葉は、こんな内容で、こんなトーンの話し方がいいんじゃないのか、とか。これまで、取材で見聞きしたものが結構、応用できる気がしました。一応、中学の時は野球部でしたし。もちろん、自分の考えが正しいと思っているわけではありませんが、休日ということで、そういったどんどんイメージが湧いてくる、いい精神状態だったのでしょう。
 23時から仕事モードに復帰。


◇8月9日(月)
 午前中、某選手の取材。できれば、別の200行原稿を早めに片づけ、今日取材した原稿に取りかかりたかったのですが、午後はいろいろいろと忙しくて、なかなか原稿が進みません。新宿の作業部屋に、BSアンテナなんぞもつけたりして。やっぱり、オリンピック観戦にはBS放送を見ないことにはダメでしょう。
 8月4日の日記に書いた、静岡の凋落ネタに反響3通。全て、静岡県関係者からでした。1人は静岡県出身カメラマン、1人は現役高校生。1人は元インターハイ優勝者からでした。立場が違いますから感じ方もそれぞれでしたが、共通していたのは強い静岡が復活すること。結局、今インターハイは男子110 mHと棒高跳の2種目に静岡勢が勝ちましたが、入賞者数はどの人も少ないと受け取ったようです(正確な統計資料はありませんが)。


◆8月11日(水)
 昨晩は4時にダウン。今朝は8時から仕事再開。キャンセル待ちの便に空きが出れば明日からの出張でしたが、今朝、ANAから“キャンセルは出ませんでした”メールが。夕方のJALで2泊3日の出張に出ることになりました。夏休みで“シーズン”となる場所のため、ホテルの空室もありません。最後にやっと、民宿で空室を見つけました。
 羽田空港で電話を3本。WSTFからかければよかったのですが、作業部屋にいる間は原稿を書いて、電話は移動の乗り換え待ち時間でやった方が効率的だと判断。あるコーチの方から「運転中なので20分後に」と言われて、寺田が「20分後はこちらが機上になってしまうので、2時間後に…」と言おうとしたら、そのコーチの方は車を止めて話を続けてました。感謝します。
 なんとかWSTF出発までに200行原稿を仕上げたかったのですが、結局、機中と移動中の待ち時間、最後は電車の中で書き上げました。
 民宿に着いたのが23:50。以前、輪島(4年前の競歩)と、もう1箇所どこかで民宿は経験がありますので、あまり期待はしていませんでした。実際、玄関にカギはかけない(そういう地域も田舎には多いです)、共用の男子トイレにもカギはない、タオル・浴衣・石鹸・歯ブラシもなしです。出発間際まで原稿を書いていたので、歯ブラシこそ持ってきましたが準備不足。タオルと石鹸、ビニール製のコップをコンビニで購入しました。セブンイレブンが100mの距離にあるのが救いでした。
 困ったのがPHSが通じないこと。つまり、ネットができません。部屋には電話はもちろん、デスクすらないのですから。うーん、どうしよう。原稿を送らないとちょっとやばいのです。
 明日、朝練習の取材に選手たちの泊まっている旅館に行きますので、そこにグレ電があれば問題ないのですが。徒歩10分で行ける距離というので、それは助かる部分です。


◆8月12日(木)
 朝の6時から朝練習の写真取材。3時間睡眠ですけど、全然平気です。急ぎの原稿を、スタッフルームの電話をお借りして送信しました。朝食後に複数選手にインタビュー。今日もいい話が聞けました。
 昼食後、いったん自分の宿に戻って2時間ほど昼寝。これでまた、元気になりました。夕方からまた、撮影取材でした。
 今日は陸マガ発売日。別冊付録はアテネオリンピック陸上競技完全ガイド。寺田もちょっとお手伝いをさせていただきました。寺田が担当したなかで一番の力作は「日本人全39選手 ここに注目!」です。650行くらいの超大作だったと思います。編集部の秋山次長が「単なる成績予想でなく、“ここを見ようよ”という部分を書いてほしい」と言ってくれました。アテネに行けない寺田として、は我が意を得たりとばかりに、取材し貯めたネタを一気に吐き出しました。
 その選手が本番でやろうとしている技術的なことだったり、その選手が達成しそうな成績の価値だったり、トリビアの泉的な“へー”という話題だったり。とにかく、日頃から取材をしている立場だから書けるネタを、ふんだんに盛り込んだつもりです。
 次はやはり全46種目の優勝者予想でしょう。これは、「優勝確率の%も出したい」という寺田の申し出は却下されましたが、まあ、雑誌の企画ということで割り切って、優勝者を各種目1人に限定して提出しました。
 言い訳の文章を書かせてもらえなかったので、ここで書きます。男子ハンマー投の優勝者をティホン選手としました。室伏広治選手が現在取り組んでいる技術的な課題や、それが上手くいっていること、今の精神状態がかなり期待できそうなことなど、わかってはいるつもりです。それでもなお、ティホン選手としたのは、過去2回の世界選手権で室伏広治選手を予想して(陸マガとは別の企画で)、その2回とも外しているから。つまり、今回も寺田が予想した選手は外れるだろうという、期待を込めてのティホン選手予想なのです。ベラルーシの人が読んだら怒られそうですけど。
 今日はこれから、ちょっと飲み。早寝早起きで仕事をします。ネットにつながらないのですが、この日記がアップされていたら、グレ電が見つかったということです。どこに出張に来ているか明かすことはできません。選手の写真や名前も出せませんが、旅館にいた猫ならOKでしょう。 鯉川 監督のサイトに対抗して、たくさん出しちゃいましょう。
 猫1 猫2 猫3 猫4 猫5


◇8月13日(金)
 午前中に練習の取材。午後、電車と飛行機を乗り継いで夜、東京に戻りました。

◇8月14日(土)
 自宅で仕事。

◇8月15日(日)
 自宅で仕事。夜、WSTFに移動。
 アテネ五輪を録画するため、WSTF用にハードディスク&DVDレコーダーを購入しました。2年前に80GBの同商品を購入しましたが、今回は250GBでダブルチューナー。2番組が同時にハードディスクに録画できます。
 今回、最後まで迷ったのが購入した東芝製にするか、シャープ製にするか。シャープは地上波デジタルとBSデジタル、110度CSのチューナーです。現行のアナログ地上波とアナログBSは2011年に終了しますから、7年以上使い続けるのなら、シャープ製が“買い”です。しかし、現行のBSアナログが受信できません。目の前のアテネ五輪を録画するには、やはり、アナログBS(要するにNHKのBS)が受信できないと話にならないということで、東芝製を選択した次第です。
 昨年までの世界選手権と違って、テレビ放映を見ながら録画したり、DVDへのダビングもできるので、保存するDVDの枚数が節約できるはず。でも、時間があるかどうか。

◇8月16日(月)
 14時から都内で取材。誰を取材したのかは書けませんが、最後は競技場にいたを撮影しました。

◇8月17日(火)
 WSTFで仕事。アテネ五輪を10倍楽しく見るページを作っているのですが、なかなか進みません。まずは、優勝者予想を確定させなければいけません。陸マガ9月号に提出した時点から後の状況を考慮して、いくつか微調整を加えました。変更した種目は以下の通りです。
<男子>
800 m
ハンマー投
やり投
<女子>
200 m
1万m
円盤投

 変更した理由は、各種目のPREVIEWで説明していく予定です(あくまで予定)。その他にも女子100 mHのロンドン(ジャマイカ)など、「なんでこの選手?」という種目もいくつかあります。それらも同様に、各種目のPREVIEWで説明していく予定です(と書いていて、相当に厳しいなあと思っています)。


◆8月18日(水)
 いよいよアテネ五輪の陸上競技が始まりました。
 全種目のPREVIEWと寸評を書いていこうと思いましたが、無謀な企画でした。いつまで続けられるかわかりません。4年に一度のオリンピックですから頑張りたい気持ちは強いのですが、そういうレベルではなくなってきています。寸評だけなら、毎日パパッとやっていけばなんとかなるのでしょうが、PREVIEWが書けていないのが大誤算。8月に入ってからは3日くらいWSTF(新宿の作業部屋)に泊まり込んで、1日帰宅するというパターンが続いています(とっても忙しいという意味です)。おかしいですね。当初は、オリンピックに取材に行けなくなって、ヒマになるはずだったのですが。
 それに加えて、また悪い傾向が出てきています。先の仕事を「あれをやらないと、これもやらないと」と考えて、精神的に焦りが生じていること。6月末、ヨーロッパ取材に出発する前に克服できたと思った部分ですが、10何年もやってきたクセはなかなか直らないということでしょうか。左の首筋に張りが出て、軽い頭痛になることも。
 いつも書いていることですが、いかに精神的に開き直れるか。表面的な意識の部分で開き直るだけではダメなんです。気持ちの奥底でそう感じないと。スポーツでも同じですよね。大舞台で緊張してはいけないということは、誰でもわかっているし、開き直ろうと意識するのは誰でも実行している。でも、気持ちの奥底というか、体が緊張しないようにできるのは一部の選手だけなのです。
 末續選手の言うところの“動きの自動化”じゃないですけど、頭で「緊張したらいけない。硬くなったらいけない」考えていたら、その時点でもう遅いのかもしれません。体が自然とそうならないと。
 一流選手と一緒にしたら申し訳ありませんが、寺田も「焦ったらいけない」と考えているうちはダメでしょう。意識しなくても「このくらい大したことはない」と、思えるようにならないと。そうなるための方法は……思い切って散財でもしたら、自分を変えられるかもしれません。


◆8月19日(木)
 今日は自分で言うのもなんですが、ものすごく集中しました。電話が1本もかかってこなかったし、面倒なメールも来なかったのが幸いしたかも。
 まずはオリンピック関連で1本原稿を書くと、次に本サイトの男女砲丸投に寸評を書き、続いて貯めてしまった日記を6日間分駆け足で書いて、さらに陸マガの「座右の銘」ページの原稿を8割方書き上げました。
 休憩&昼食が18〜19時で、その後に精算やら何やらの事務的な作業。オリンピック期間中の締め切りやら、取材の段取りを確認。
 続いて、本サイトのアテネ五輪全種目PREVIEW & 寸評を男子100 mから男子20kmWまで、朝の6時までかけて書きました。途中から、近所のファミレスに場所を移してペンも折れよとばかりに書き続けた次第。でも、この辺が限界でしょうか。残りは、日程の順に頑張れ……るでしょうか?
 柔道の井上康生選手が金メダルを逃したとのニュースがありました。代わって、東海大の後輩の井上大資選手が頑張ってくれるでしょう。秋のどこかの試合で…。
 現在、朝の8時。日記まで書いてしまうとは、集中というより久しぶりにハイになっているのかも。眠くありませんけど、12時まで寝ましょう。


◆8月20日(金)
 昨晩から朝まで仕事をし、8時頃に新聞記事をチェックしたら、ケニアの男子マラソン代表のコリルが欠場するというニュースが。ということは、補欠のジェンガ選手の出番か……と思い、急ぎヤクルト・物江コーチに電話。ジェンガ選手は第2補欠で、現時点では何の連絡もないとのことでした。
 12:30まで寝て、WSTF(新宿の作業部屋)に移動。オリンピックの陸上競技は日本時間でいうと深夜から明け方にかけて行われます。期間中は泊まり込むことになりそう。
 夕方から室伏広治選手が出場する男子ハンマー投などの中継があり、原稿も書きたいのに、なかなか進められません。結果的に、ハンマー投だけをチェックするなら、20時からのテレビ朝日(録画のダイジェスト)を見れば時間の節約になったのでしょうが、20kmWや男子三段跳もあったので、生中継を見続けるしかありません。結果的に、この2つはそれほど画面に映らなかったのですが。
 DVDディスクなど買い物もあったので、空き時間(現地の午前中の競技と夕方からの競技の間)を利用してヨドバシカメラに。
 深夜はテレビとハードディスクレコーダーにかかりっきりです。陸上競技の中継が始まったのは3時頃だったでしょうか。
 男子400 mと女子800 mはスタート時に、スターターの発煙が画面に入っているので、タイム計測が可能でした。1組目の小坂田淳選手のタイムは寺田の計時で46秒36……間違いだと思いたかったのですが、正式タイムも46秒39。3組の佐藤光浩選手は46秒77。これも間違いと思いたかったのですが46秒70。山口有希選手は46秒17で止まって46秒16。なんで45秒台が出ないのでしょう。
 女子800 m予選を見て、次は男子1万mでしたが、その間に眠ってしまい、目を覚ますと2400m付近。大野龍二選手が先頭集団を走っていましたが、エチオピア勢がペースアップした後は、展開がよくわかりませんでしたが、陸マガに書いたように自分に適した集団は見つけられなかったのでしょうか。
 日本選手の出来は正直、室伏広治選手以外は芳しくありません。今後への期待を込めて2日目の寸評(総評?)記事を書きました。ただ、毎日書けるのかというと、かなり厳しそう。


◆8月21日(土)
 朝の7時まで原稿を書いた後、昼間で寝させていただき、午後から再度原稿書き。夕方からはテレビを見ながらの作業。
 今日も日本選手の成績は芳しくありませんでした。詳しくは寸評記事3日目をご覧いただきたいのですが、期待の末續&岩水まで勝負所に行くことすらできなかった。確かに、これまでもオリンピックでは日本選手はそれほど活躍していません。シドニー五輪と比較したら、それほど悪くもない(100 mで伊東浩司選手が準決勝まで行っていますが)。今回の選手団が、特にトラック&フィールドでは過去最も期待できる力を持っているという期待があったので、どうしても結果に落胆してしまうのでしょう。
 女子砲丸投・800 m・七種競技という東京オリンピック以来出場を果たした3種目が終了しましたが、今後につながる収穫を、出場した選手・当該種目関係者が得られたかどうか。今後の関係者の頑張り次第で、今回の40年ぶり出場の価値が高まりもするし、逆に低くもなります。
 昨日の寸評記事で、「高野やシドニー五輪でいきなり準決勝に進出した末續慎吾(ミズノ)は大舞台で最初から力を出し切れた。エドモントン世界選手権で準決勝に進出した藤本俊之もそのタイプか。しかし、それができないタイプの選手たちは、山崎一彦や朝原宣治、伊東浩司たちがしたように、海外の小さな試合を1人で転戦するなどして、経験を積むしか方法はないのかもしれない」と書きましたが、少し捕捉させてください。
 朝原・伊東両選手は、五輪初出場のアトランタで、ともに準決勝まで進出しました。自己新こそ出せませんでしたが、それに迫る記録で完全に力を出し切っていた。その2人が本格的にヨーロッパのGPを転戦するようになったのは、アトランタ五輪後ですから、昨日の記述はやや不正確かもしれません。
 伊東・朝原両選手はアトランタ五輪の年の日本選手権でともに日本新をマークし、上り調子でオリンピックに臨みました。そういう時期は勢いで結果を出せる。そういうパターンもあります。昨年の沢野大地選手も、日本選手権で日本新を出し、世界選手権で結果を残すという同パターンでした。
 しかし、海外転戦で経験を積んだから、その後の伊東・朝原選手の記録更新があったわけですし、故障直後とコンディションがよくないにもかかわらず、伊東選手のシドニー五輪2種目準決勝進出があったと思います。強いていえば、山崎一彦選手に加え、為末大選手が最初のオリンピックで失敗後、海外転戦の経験をもとに世界選手権で結果を残しています。


◆8月22日(日)
 家族T氏がアテネから帰国。以前に書いたかもしれませんが、彼女は柔道男子日本選手団付きの管理栄養士です。寺田と違って2回連続オリンピックに行っています。だから、なんだというわけではありませんが。成田からの帰路、WSTF(新宿の作業部屋)に寄ってくれて、写真なんかを見せてくれました。
 野村選手や鈴木選手などのメダリストの写真にまじって、選手村やサポートスタッフのアパート、練習場所、アテネ市街、の写真などを自慢げに見せていきます。ミズノが現地で借り切っていたカフェは、相当にお洒落だったようですね。柔道選手団はそこで打ち上げをしたとか。陸上選手団も打ち上げができるくらいに頑張ってほしいものです。えっ、打ち上げは成績に関係ない? それに、陸上競技の選手団は、競技が終わった選手は順次帰国するスケジュール。まとまって何かをすることはできませんね。
 柔道・水泳・体操と好成績が続いていますから、陸上競技が悪いと絶対に比較されるでしょう。本来、比較すべきこととは思いませんが、JOCのお偉いさんは絶対に比較します。それが自分たちの仕事だと思ってらっしゃる。一部マスコミ、有名スポーツ・ライターも同様で、これが理由だと、知ったかぶりをして書き立てるでしょう。そうならないように、今日がまず勝負です。

◆8月22日(日) その2
 いやあ、よかったです、本当に。野口みずき選手の金メダル、そして室伏広治選手の銀メダル。これで、JOCのお偉いさんも、水泳・柔道・体操と比較してどうこう言わないでしょう。ホント、メダルの数しか頭にない人たちですから。
 対JOC、対世間的には一安心ですが、それと陸上界内部の評価を一緒にしてはいけないでしょう。確かに室伏選手は、マラソン以外の種目では68年ぶりのメダル獲得ですが、この後の他の種目がここまでと同じような状況だったら、陸上界としては不本意な結果と言わざるを得ません。
 男子マラソンや400 mHの入賞は当然期待されますが、これまで国際大会で振るわなかった吉沢賢選手や若手の高平慎士選手が好走したり、フィールド種目であと1人誰かが入賞すると、ずいぶん印象がよくなると思います。あとはリレーですかね。
 昨日は女子マラソンから男子ハンマー投、男子100 m決勝とテレビに釘付け。しかも、朝の5〜6時くらいに野口選手がテレビ各局に出演し、7時くらいから室伏選手も4局ほど出演していました。ただ今朝の10時。女子100 m金メダルはネステレンコ選手ですが、こちらは眠れんこ。


◆8月23日(月)
 実はオリンピック以外の原稿も抱えてしまっている状況です。なんでオリンピック開幕前に書けなかったんだと、自分でも情けないのですが。本当に進歩がない。生活パターンは、メモを取りながら朝までテレビを見て、その日の原稿を書いて10〜11時に就寝し、15時頃に起きて(アテネ時間で)午前中の競技を見始めるパターン。どうも、生(ライヴ)で見ると効率が悪いんですよね。午前中の競技はダイジェストを夜やってくれているので、見るのをやめようかな。でも、ダイジェストだと日本人選手だけに絞られることも多いので、有力選手の予選とかが見られなくなります。うーん…。
 空き時間が5〜6時間あるので、そこで食事や洗濯、買い物など日常生活をこなします。もちろん、そこで少しでも原稿を書かないといけないので、頑張ってはいるのですが…。
 昨日の寸評記事で、野口みずき選手に日本記録を狙ってもらいたいと書いたら、ちょっとした抗議のメールが来ました。特定の選手への応援じゃないかというニュアンスです。デリケートな部分ではありますが、全ての選手に記録は出してもらいたいという考え方。日本記録レベルにある選手なら、日本記録を出して欲しいと思います。高橋尚子選手にも出して欲しいです。
 明日は谷川聡選手にも、内藤真人選手にも日本記録を期待しています。


◆8月24日(火)
 ある種目の、あることで“引っかかり”があって、ある方からのメールで“これはそうかな”と、確信に近い気持ちになったので、アテネの何人かの知り合いに電話をしました。結果的に、こちらの思うように事は運びませんでした。やっぱり、現地に行かないとダメですね。
 ネットでオリンピックの記事を見ていて思うのは、やっぱり日本のスポーツ報道の体制はオリンピックが中心だなあ、ということ。当たり前っていえば、当たり前ですが。スポーツ報道専門サイトには、このくらいの内容でいいんだ? という記事が散見されます。オリンピック=総合競技会ですね。寺田のように陸上競技しか記事が書けないライターよりも、内容はともかく多くの競技を書ける(と思われている)ライターの出番の方が多い(負け犬の遠吠えですね)。オリンピックのときだけ陸上競技に関心を持つ読者に対しては、その方がいいということでしょうか。
 でも、それだと陸上競技のファンは増えにくいと思うのですね。いいのかなあ、それで。
 オリンピック報道とは直接関係ないのですが、日本のメディアの記事は“個人の魅力”に重きを置きすぎているような気がします。その記事を読んだ読者や視聴者は、その選手個人に関心を持っても、陸上競技(あるいは、その種目)自体に興味を持ってくれるのかな、という内容です。どうしても、スポーツをやっていない人(ビジネスマンや主婦)の共感を得られる部分を書かないといけない、ということでしょう。極端な話、その選手がやっているのが陸上競技でもバスケットボールでも、どっちでもいいというスタンスの書き方です。
 報道はあくまで報道で、陸上競技ファン拡大を目的としているわけではない、と言われればそれまでですが。雑誌なども、陸上競技ファン拡大よりも、雑誌が売れればいいわけですからね。
 こう考えてくるとますます、自分の存在価値はないような気がしてきます。
 日本にいることの数少ない利点は、取材をしなくていいので、テレビをじっくりと見られるということ。選手の競技中の表情や、競技直後の表情もよくわかります。でも、やっぱり現地で聞いてみたいこともたくさんある。その場にいる、ことが重要なんです。ただ、現地でも報道陣の殺到する人気選手には、なかなか質問もできないのですが。
 すいません、支離滅裂なことを書いてしまいました。
 今日は原稿が一行も書けないうちに、深夜のオリンピック放映時間に。3時の400 mHまではテレビを止めて(録画はしていますよ)原稿書き。日本にいても、オリンピックとなると、色々とやることがあるのです。ハードディスクレコーダーの追いかけ再生機能で為末選手のタッチダウンタイムを測り、寺野伸一選手のコメントをメモして、女子棒高跳を見ていたらダウンしてしまいました。原稿が…。


◆8月25日(水)
 頑張れペチョンキン! と言いたいですね。ペチョンキンは男子110 mHのロシア選手。今日の2次予選は13秒53で突破できませんでしたが、本当にもっと頑張らないと(内藤真人選手も頑張らないと)。というのは、中継のアナウンサーにペチョンキナと言われてしまったからです。
 ペチョンキンは400 mH世界記録保持者のペチョンキナの夫ではありますが、英語の綴りは Pechonkin Yevgeniyで、ペチョンキナでは断じてありません。詳しくは知りませんが、かの有名なアンナ・カレーニナの夫はカレーニンです(自信あり)。つまり、スラブ民族の名前は(全部か一部かは知りませんが)、男性の名字と女性の名字は語尾が違うのです。女性はaがつくんですね。エゴロフ氏の夫人は(娘も?)エゴロワとなる。ツルゲーネフの女性姓はツルゲーワ。レーニンはレーニナ。フルシチョフはフルシチョワ。チャイコフスキはチャイコフスカ…かどうかまで確認していませんが。
 確かに、旧ソ連関係の情報は、驚くほど我々は知りません。2年前にモスクワ経由でロンドン・マラソンの取材に行ったとき、ロシアのガイドブックを探しましたが、本屋にはまったくなかったですからね。で、昨年の世界選手権の際にペチョンキナが有名となり、ペチョンキンがその夫であることも合わせて、世間に知られるようになりました。でも、彼らの知名度に反して、日本人のロシアに対する知識は低かったということでしょう。
 つまり、日本にロシアの知識を広める一番の方法は、ペチョンキンが強くなって、「なんで夫婦で姓が微妙に違うんだ?」と、話題になることです。12秒8台の世界記録を出したり、世界選手権やオリンピックで勝ちまくるようになれば、そのうちペチョンキンの方が有名になって、奥さんは引き合いに出されなくなるかも。最初はマラソンの谷川真理選手の従兄弟ということで注目された谷川聡選手に、今では誰もそのことを話題としないように。
 ちなみに、陸マガで最初に谷川聡選手を取り上げたのは、中大4年時の中大・日体大対校で13秒8(手動)をマークしたとき(1995年でしょうか?)。従兄弟選手という部分も興味を持ちましたが、何より「こんなにクレバーな元○○の選手がいるのか」と思ったからです。でも、本当に最近は、どの記者も谷川真理選手のことを聞かないので、ちょっと寂しいですね。谷川真理選手もあれだけの有名選手ですから。今度記録を出した際に、従姉妹の活躍にどんな影響を受けたか聞いてみましょう。確か、谷川真理選手が東京国際女子マラソンに優勝したときは、御茶ノ水にある予備校に通っていたはずです。


◆8月26日(木)
 室伏広治選手の原稿を書き上げました。現地に行っていないので、こちらでわかる範囲の情報と、これまでの取材で蓄積したもので書いたのです。200行となかなかの大作。でも、困ったことにアヌシュ選手のドーピング疑惑が浮上し、順位が繰り上がる可能性も出てきました。媒体は、オリンピック閉幕直後に発売される、ある新聞社系の雑誌です。
 ちょっと思ったのですが、女子砲丸投でも当初優勝したと思われたロシア選手が失格しています。上位の選手が繰り上がるのはいいとして、一番口惜しがっているのは予選13番目の記録で決勝に進めなかった選手ではないでしょうか。これはトラックでも同じこと。メダルを剥奪された選手と準決勝で同じ組になり落選した選手は、再レースを要求したいところでしょう。オリンピックのファイナリストと、予選・準決勝落ちでは、その後の人生が違ってくるかもしれません。
 いっそのこと、予選終了直後、準決勝終了直後に全員のドーピング検査をするっていうのはどうでしょうか。えっ、物理的に無理? そんなこと言っていると、進歩がないんですよ。何事も無理と決めつけてはダメ。解決策は、ごく短時間でできるドーピング検査の方法を開発することです。ドーピング追放はスポーツが生き残るため、必要不可欠な部分。どんなにお金がかかっても、ないがしろにしてはいけない部分でしょう。


◆8月27日(金)
 12時半に起床して成田空港に。京成スカイライナーに乗っている際、ふと車窓から外を眺めると、大きな風車があるではないですか。スカイライナーで成田空港に行ったのは数知れず。でも、初めて気づきました。これは、98年か99年頃、三代直樹選手の記事を陸マガに掲載したことがあるのですが、そのとき、この風車をバックに写真を撮らせてもらっています(寺田が担当したわけではありませんが)。
 三代選手も早く復活して欲しい選手の1人。先日、富士通の福嶋監督に電話をして、ちょっと状況を聞きました。腰の痛みといかに上手く付き合っていくかが重要、というような話をしましたっけ。
 成田空港まで行った目的は書けませんが、土佐選手の取材ができたので、記事にまとめました。三段跳の杉林孝法選手にも合いました。今後は日本記録を目標にするそうです。杉森美保選手にも合いました。杉林選手に対抗して、今後は三段跳で頑張るそうです(こちらの記事参照)。
 夜中はオリンピックをテレビ取材。男子両リレーの決勝進出に、ホッとしています。今大会、短距離陣は準決勝進出がゼロ(76年モントリオール五輪以来らしい)ということで、リレーも心配されましたが、各選手の調子は上がってきているようです。やっぱり、短距離種目でラウンドを突破していくと盛り上がるんですよね。大会の盛り上がりに果たす短距離種目の役割を書きたいところですが、300行くらい必要なのでやめます。


◆8月28日(土)
 今日でオリンピックのトラック&フィールドは最終日。男子の4×100 mR、4×400 mRともに五輪最高順位の4位に入賞し、テレビの前で興奮しまくって観戦していました。特に4×100 mRはそうですが、前半はどこがリードしているとか、レース展開はほとんどわかりません。ホームストレートに出てきて初めて、だいたいの順位がわかる。400 mだとまだ少しはわかるのですが、4×100 mRとなるとダメ。冷静に見られるときは、次走者のスタートでちょっとは順位もわかるのですが。日本チームが出ているとどうしても、応援してその走りだけに目が行ってしまいます。インカレなどでレース全体を見てしまう各大学のコーチは、尊敬してしまいます。
 その視点でいうと(…ちょっと違うかもしれないが)、大会本部にいるお歴々方も尊敬できる。ホームストレートの中央付近、しかもスタンド下から見ていてもレース展開がわかるらしいのです。寺田には、この芸当がどうしてもできない。100 mでいうならスタートから中盤まではわかるのですが、肝心のホームストレート終盤の位置関係がわかりません。まあ、最近は大きな大会なら、大型スクリーンにリプライが映し出されますから、大丈夫なのかもしれません。
 女子1500mはホームズ(英)がホームストレートで強さを見せて快勝。800 mに続いて2つめの金メダル。ホームで2回勝ったからホームズ……じゃあ、ないと思いますが。走高跳金メダルのホルム(スウェーデン)の複数形……でもありませんでした(HolmとHolmes)。
 そうそう、ホルムのWEBサイトはすごく充実しています。英語表示ができないのが残念ですけど。「金」の文字のイラストまである。なかなかの執念です。それで1つ、ある仮説が浮かびました。今回のホルムは髪の毛を坊主刈りにしていましたが、憧れの選手は長身&長髪で有名だった同国の先輩、パトリック・ショーベリだそうです(87年に2m42の当時の世界記録)。ホルムのサイトには過去の写真集なんかもあって、それを見ると以前のホルムは、ショーベリーほどではないにしろ、髪の毛を伸ばしていました。つまり、髪の毛をばっさり切って余分な重さをなくすほど、今五輪に賭けていたのかな、と。髪のことだけに、真実は神のみぞ知る……今日のジョークは全部、かすってバーを落としている感じです。だ1にあやかりたい。


◆8月29日(日)
 アテネ五輪男子ハンマー投はアヌシュ選手の失格により、室伏広治選手の優勝となりました。寺田が記事を書いた某雑誌は昨日の時点で「8月28日現在、アヌシュに薬物疑惑が持ち上がっている」という一文を、文末に付記して校了しています。五輪終了3日後には発売される雑誌ですから、致し方ありません。
 まあ、書き直すのも変というか、アヌシュの記録は存在しなかったものとして「室伏が1投目から79m90でリードし、6投目に82m91と記録を伸ばし、2位のティホンに3m10の大差をつけた」という記事も、どこか違和感があります(実際には、それが正しいのですが)。やはり、試合展開はアヌシュ込みで書いて最後に、実はアヌシュの記録は不正の結果としてこの世に存在したもので、公式記録とはならないと書いた方が、後世に正確に伝わるのではないでしょうか。公式サイトIAAFサイトも、失格した選手の記録を消し去っていますが、戦いの跡を記録するという意味では、試技内容を欄外に小さな文字で残しておいた方がいいように思います。
 不正の結果として世の中に存在した記録など、記録と認めない、というスタンスはわかるのですが。そこまで堅いことをするのなら、寺田が数日前に書いたように、予選終了時点でしっかりドーピング検査をするべきでしょう…あっ、そうか。予選終了後にドーピングをするのか。すいません。考えが浅かったです。
 考えが浅かったとは言いませんが、男子マラソンの乱入男を阻止する手段はなかったのでしょうか。うーん、ロードを使って行う競技の特性上、仕方ありません。高速道路で観衆の出入りができないコースにするとかしたら、白けますからね。ロードレースを走る選手は、こういったアクシデントも覚悟しないといけない、ということでしょうか。でもなあ。こればっかりは本当に、選手は気持ちをどう収めていいのかわかりません。デ・リマ選手のあの態度は本当に立派だったと思います。フィニッシュ前に見せたあの飛行機ポーズは、東京で優勝したときにもやっていましたよね。今、東京国際マラソンのプログラムを見たら、1996年大会に優勝しています。と思ったら、そのレースでは2位と秒差の勝負ですから、飛行機ポーズはできませんね。でも、どっかで見たような記憶があるんです。いずれにせよ、デ・リマ選手を来年の東京に招待したら、視聴率上がりますよ、主催者さん。
 テレビの話になったところで1つ、持論を言わせていただきます。今回のオリンピックもそうですが、海外のマラソン中継って、日本と比べたら見にくいですよね。後方集団の選手のアップをいきなり画面に映すのはいいのですが、その選手がどのあたりを走っているのかがわからない。先頭集団の人数だって、上空からのアングルが映し出されないとわかりません。まあ、テレビ中継車がドーンと先頭選手の前を走るのって、海外ではないのかも。ほとんどがオートバイからの撮影のため、揺れたりして見えにくいことも多々あります。
 しかし、今日の昼間に行われた北海道マラソンの画面は、ある意味日本らしくありません。その原因は、男女同時スタート。画面が男子と女子と交互に切りかわるわけで、レース展開に集中しにくいのです。さらに、女子の先頭集団の周りには男子選手がいる。これも、視聴者が女子の勝負に集中しにくい一因となります。せっかく千葉真子選手が独走しても、遅い男子選手がくっついているわけです。駅伝など独走になると視聴率が落ちることもあるそうですが、勝負の結果として独走しているはずの選手の周囲に、関係のない選手が走っているという絵柄は興ざめです。
 一緒に走っている男子選手も、適当に走っているのでなく、真剣に走っているのでしょう。でも、視聴者が見たいのは、“真剣に走っている遅い男子選手”ではありません。以前にも書いたと思うのですが、市民マラソンは参加して楽しむものですが、見て楽しめるものではありません。見て面白いのは間違いなく、エリート選手同士のレベルの高い勝負です。
 01年・02年と取材したロンドン・マラソンの中継など、市民ランナーがお祭り気分で走っている絵柄に、しょっちゅう画面が切りかわります。2年前までは時差スタートでしたが、それでも男女が同時進行して集中できませんでした。アテネ五輪の野球中継を見ていたら星野仙一氏が「メジャーリーグの(日本人)テレビ解説者が、なんでもかんでもを褒める」と批判していましたが、寺田も欧米の市民マラソンにエリートランナーを参加させる方式を、やたらと褒めるのはどうかと思います。日本には、テレビで中継を楽しむ人たちをバックボーンとして発達してきたマラソンの伝統があります。
 今年から東京国際女子マラソンに市民マラソンも併設されるようです。警察の許可を得やすくなるという、日本ならではの事情もあるようですが、テレビ中継で市民マラソンを映し出してほしくありません。はっきり言いますし、何度でも書きますが、見ていて面白いのはエリートランナーのハイレベルな走りです。近田さん(北海道文化放送アナウンサー)には、今度合ったら申し上げておきましょう。男女同時進行でもいいので(道路使用時間を短くする必要はあるはずですから)、時差スタートにして、テレビ放映は国際千葉駅伝のように別の時間帯にした方がいいですよと。


◆8月30日(月)
 昨日でアテネ五輪が閉幕。この興奮を味わうのにあと4年待たないといけないのか、と思うと寂しいですけど、その間に世界選手権が2回もあります。最近の陸上競技ファンは幸せだと思います。オリンピックに端を発したドラマを、来年、その2年後、そして4年後と継続的に見続けられるのですから。やっぱり、その競技を見続けることで、より面白くなると思うんです。今五輪の野球やソフトボールだってそうですよね。もちろん柔道や水泳の何人かの選手たちも。そういった、見続けてくれるファンが増えるような、世間へのアピールの仕方を考えるべきでしょう。特に陸上競技の場合は、球技や格闘技に比べてゲーム性(娯楽性)が劣ります。ちょっと前にも書いた気がしますが、選手個人に興味を持ってもらうのもいいのですが、競技自体を面白いと思ってくれるファンを増やすことが重要だと思います。
 えっ、誰がそれを考えるのかって? それはもちろん、陸上競技関係者全て、ですよ。陸連だけが考えてもエネルギーが小さいでしょう。ましてや、寺田がこんなWEBサイトでとやかく書いても何の影響力もない。陸上界全体の課題です。書きましたっけ、陸協登録者OBに継続的に情報を送り続けるって話。そうか、このアイデアはタダで、こんなところに書くわけにはいかないのでした。
 アイデアといえば、アテネ五輪帰りの家族T氏が、珍しくいいことを言っていました。1都市開催が古代オリンピック以来の五輪開催理念のようですが、複数の都市、または国にまたがっての開催でもいいんじゃないか、と。今のようなオリンピックの開催の仕方をしていたら、アメリカ開催が多くなってしまうのではという指摘。実際に夏季では84年のロサンゼルス、96年のアトランタ、冬期では02年のソルトレイク、80年のレークプラシッドと、経済的に余裕のあるアメリカが多くなりがち。逆に、1都市開催だと、今回のアテネのように財政的に厳しかったり、工事が間に合わなかったりします。外国人がオリンピックを見に行きたくても、ホテル代が5倍とか10倍に高騰して話にならない。
「ベネルクス五輪やスカンジナビア五輪があってもいい」というのが、彼女の意見です。ベネルクスはヨーロッパの大国である独仏間にあるオランダ・ベルギー・ルクセンブルクの3国。人口は3つ合わせても2700万人しかいません。スカンジナビアのノルウェー・スウェーデン・デンマークは全部で1800万人。しかし、各国の首都や2番目の都市はそれなりの規模で、国際スポーツイベントが開催できる都市は、3国合わせれば5つや6つ、あります。
 家族T氏によると人口40万人の、ルクセンブルク(1つの都市だけ?)はけっこうリッチな雰囲気なんだそうです(旅行経験あり)。外務省のサイトで調べると、英仏独伊のヨーロッパ4大国の1人当たりのGDPが2万ドル台なのに対し、ルクセンブルクは5万ドル。人口が少ないですから同列に論じることはできませんが、それなりの国力、イベントを開催する体力はある。サッカーの日韓共催ワールドカップがそうだったように、別に複数国で開催しても、移動が大変ということはありません。というか、陸上競技はこの都市、柔道はこの都市、水泳はこの都市と分散開催されるわけですから、サッカーのように移動して試合ということもありません。
 ベネルクスやスカンジナビアは陸上競技のグランプリだってけっこう開催されています。オスロ(ノルウェー)、ストックホルム(スウェーデン)、ブリュッセル(ベルギー)はゴールデンリーグ、小林史和選手が1500mの日本新を出したゲント(ベルギー)や、ヘンゲロ(オランダ)は確かGPU。ロッテルダム・マラソンもメジャーな賞金レースです。昨年の静岡国体が、県内の全域に各競技を振り分けて開催した感じですね。
 困るのは報道機関かも。1つの都市に腰を落ち着けて取材することができないし、柔道会場から水泳会場への移動も、1都市開催よりも大変になる。でも、逆に、1記者1競技の取材に専念できる環境になるかもしれません。取材パスも、現在のような全競技共通のパスでなく、競技毎に発行されるようになるかもしれません(寺田にも回ってくる可能性が高くなる?)。そうすると、現在の報道機関内部のシステムも変わるかも。オリンピック取材体制が中心でなくなり、各競技の専門記者が増える。それがいいことなのか、悪いことなのか…。


ここが最新です
◆8月31日(火)
 今日で8月も終わり。何年か先に思い返してみても、アテネ五輪の行われた思い出深い月となるでしょう。29日に男子マラソンで油谷繁選手が5位、諏訪利成選手が6位に入賞して、締めてくれました。「また5位かよ!っていう感じです」と、インタビューに答えていた油谷選手自身にしてみれば、相当に悔しい結果でしょう。でも、本人の目標と、客観的な評価はまた別もの。男子マラソンは頑張ったと評価できると思います。女子マラソンと比べてどうこうと話すテレビのコメンテーターは勉強不足。まあ、勉強しろというのも無理な話ですが。
 陸連の掲げた目標(予想?)は「メダル2個と入賞5〜6」。結果として金メダルが2個で、入賞が女子マラソン2、男子両リレー2、男子マラソン2で目標をクリアしました。期待していた男子100 mと400 mHが入賞できませんでしたが、最後になんとか踏みとどまりました。終わりよければ全てよし、という雰囲気でアテネ五輪を終えられた陸上ニッポンでした。跳躍だけ入賞できませんでしたが、棒高跳の決勝進出は入賞に準じる評価ができると思います。表面的な成績だけでなく、今回の結果をいかに今後につなげられるか、そこが肝心です。入賞できなかった100 mと400 mHも、例えば来年の世界選手権の好成績や、新記録に結びつけられれば、アテネに出た意味は大きくなるはずです。
 話は変わりますが10日目寸評に、両リレーの4位入賞に喜んでいるだけではダメだと書きました。でも、よく読んでいただければわかるのですが、前半部分ではダブル4位入賞をちゃんと評価しています。今後に向けて、選手の意欲も間違いなく上がるでしょう。今後に続く選手たちが「俺たちもできる」という意識になれるという点では、昨年の末續選手の銅メダルに匹敵する効果があるかもしれません。それはともかく、ここで言いたいのは要するに、どちらが先かという順番で印象が変わるということ。前半で褒めて、後半で厳しく書くと、結論として厳しいことを書いているような印象になります。実際は、両面を書いていてもそうなってしまう。
 つまり、先に行われた個人種目はダメで、後から行われたリレー種目がいいと、「よかったな」という印象になります。これが逆だったらどうなるか。先にリレー種目が行われて好成績を残しても、後から行われる個人種目が惨敗だったら、「なんだ短距離は」という印象になる。人間の心理とは、そう感じる傾向があります。「終わりよければ全てよし」っていう格言に象徴されているように。単に心理的な部分ですが、陸上競技も人間のやることですから、それがけっこう大きかったりする。だったら、それを強化や宣伝に利用する手もあるわけですね。


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