アテネ五輪2日目(8月20日)寸評
室伏以外はことごとく目標を下回った日本選手
■決勝種目の懺悔
・男子20kmW
・男子1万m
・女子七種競技初日
やっぱりオリンピックはやってみないとわからない。優勝間違いなしと思われたペレス(エクアドル)が4位と敗れ、優勝はATFS(世界陸上競技統計者協会)の年鑑にプロフィールの載っていないブルゲッティ(伊)だった。
男子1万mはゲブルセラシエがアキレス腱の故障もあり、7000m過ぎに後退。ベケレがペースを落として一旦は追いついたが、終盤は走りきるのがやっと。ベケレがラスト1周を53秒台でカバーして、同僚のシヒネに圧勝した。
女子七種競技はクリュフト(スウェーデン)が予想通りにリード。3種目目の砲丸投こそ自己新だったが、残り3種目は7001点をマークした昨年の世界選手権よりちょっとずつ悪い。
■日本選手
<男子>
・400 m予選 佐藤光浩 山口有希 小坂田淳
・1万m決勝 大野龍二
・20kmW決勝 谷井孝行 山崎勇喜
・三段跳予選 杉林孝法
・ハンマー投 室伏広治
<女子>
・800 m予選 杉森美保
・七種競技 中田有紀
普通に戦ったのは予選標準記録を1回で越えた室伏広治(ミズノ)だけ。残りの選手たちは軒並み、目標ラインを下回った。
男子三段跳予選の杉林孝法(ミキハウス)は16m00(+0.3)。過去の五輪・世界選手権を通じて自己最低記録という不振ぶり。故障が影響したことを、競技後にコメントしていた。ベルリン五輪金メダルの田島直人と同じ記録というのは何かの因縁。お家芸復活を託せる人材は、現時点では杉林と後輩の石川和義(筑波大)くらいしかいない。
男子20kmWの谷井孝行(日大)は1時間23分38秒で15位と、順位・記録とも五輪日本選手過去最高。室伏と並んで合格点の内容だった。山崎勇喜(順大)の途中棄権は、50kmWを考慮してのことか。
信じられなかったのが男子400 mの3選手全員が46秒台だったこと。最初のオリンピックの84ロス大会から、45秒台をきっちり出していた高野進とは、どこが違うのだろうか。高野が日本人離れしていて、高野以外の選手が“普通の日本人”なのだろうか。動きが国内レースとはどこか違ってしまう(力みが出てしまう)のだろう。昨年の世界選手権4×400 mR1走で快走した山口有希(東海大)でさえ、そのときとは違った走りになってしまった。本人もリレーとは精神面が違ってくると、富士北麓で話していたが、その不安が現実となってしまった。
高野やシドニー五輪でいきなり準決勝に進出した末續慎吾(ミズノ)は大舞台で最初から力を出し切れた。エドモントン世界選手権で準決勝に進出した藤本俊之もそのタイプか。しかし、それができないタイプの選手たちは、山崎一彦や朝原宣治、伊東浩司たちがしたように、海外の小さな試合を1人で転戦するなどして、経験を積むしか方法はないのかもしれない(山崎は“環境負荷”という言葉を使っていた)。練習でいくら走れていても、46秒台しか出ないのでは、足りないのは経験と考えるしかない。
杉森は海外日本人最高
杉森美保(京セラ)は100 m過ぎからトップを引っ張り、600mまでは引っ張った。400
m通過も58秒22と日本新を出した日本選手権と同じだったが、レース後に本人がコメントしたように同じスピードでも力みがあったのだろう。最後の直線で抜かれるのは仕方ないにしても、やや、差を開けられすぎたように思った。しかし、2分02秒82はプラスの最後の選手とは0.65秒差。海外日本選手最高記録でもある。男子400
mに比べれば、力を出せた方か。
中田有紀(栄クリニック)は1種目目の100 mHで自己ベストには及ばなかったがシーズンベスト。2種目目の走高跳で1m76の自己タイと出だしは良かった。砲丸投で自己記録に約50cm及ばなかった。世界的に見たら、そのくらいのショートは当たり前だが、自己新を出さないと上位で戦えない選手にとっては、痛いマイナス。初日最後の200 mも大幅に自己記録を下回った。
男子1万mの大野龍二(旭化成)は序盤こそ先頭集団の5〜6番手に位置したが、3000m付近からエチオピア勢がペースアップすると後退。29分06秒55で19位。優勝したベケレと2分差は、ベスト記録の差に国際経験の違いをプラスすれば、仕方のない差かもしれない。だが、自己のベストの走り(記録的な意味でなく)をしないことには、まったく通用しないレベルの選手は、“普通”の走りをしたのではまったく目立たない。
本当に、室伏だけだった。昨年のパリ世界選手権初日も同じような状況で、室伏以外は討ち死に続き。そこを最後に、3000mSCの岩水嘉孝(トヨタ自動車)が日本新を出して予選を突破。流れを変えてくれた。今回、岩水の役割を果たすのは誰になるのだろう。
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