2013/3/10 名古屋ウィメンズマラソン
直前展望記事
高温予想も実際は15℃〜18℃
有力選手の大半は16分50秒〜17分00秒のペースに付く予定
後方から追い上げられるのは?
ペースメーカーは5km毎が16分50秒〜17分00秒の設定と決まり、前日夜の段階で変更はない。ただし、ロノ(ナンバー1)とアガイ(同3)のケニア勢(エージェントも同じ)は、先行する可能性があると聞いた。それに対してゲタネ(同4)、ディババ(同7)、トゥファ(同9)のエチオピア勢がどう出るかは、前日段階では情報がない。
有力日本選手のほとんどはペースメーカーに付くようだ。だが、最高気温が18℃という予測のなかで、17分00秒ペースは速すぎるという意見も出ている(レース前日)。
注目点としては
@誰が最後まで先頭で粘りきるのか
A誰がハイペースに持ち込むのか
B最初からペースメーカーに付かない選手が、後半でどう追い上げるか
C早めにペースメーカーから距離をとり、後半に追い上げるのは誰か
といったところだろうか。
野口みずき(シスメックス)には「ペースメーカーを気にせず走れ」という指示を廣瀬永和監督が出している。ペースメーカーの前に行けという意味ではない。
会見で「2007年の東京国際女子マラソンに値するかはわかりませんが、それに近いワクワク感を持てるようになりました」と野口が話したが目標タイムはあくまで「2時間23分台」である。さすがの金メダリストも、まだ、16分40秒台で押していく練習はできていない。
廣瀬監督の指示はペースメーカーが遅かったり、不安定だったときには自分のリズムを守れ、ということである。元々、ペースメーカーに頼らずに、自身でハイペースを作ってきた選手である。
昨年のように、集団の中で動きすぎないように、という意味もあるだろう。
調整段階の30kmで自己記録が出たようだが、走った場所は千葉県富津で平坦なコース。今回初めて使った練習場所で、過去にマラソン練習を行ったときのデータとは比較できない。
練習場所を過去のデータと比較するのを避けたわけではない。大阪国際女子から名古屋ウィメンズに急きょスライドしたため、海外の高地トレーニングをする時間がなかった。「追い込む段階では神戸で起伏の大きい場所を走ったため、調整では平地を走ろうと思った」という廣瀬監督の説明だ。短期間で追い込んだため、調整はスピードを出せるが負荷が少なくなる場所を選んだ、ということか。
以前のレベルまでは戻っていないが、野口が良い状態で臨めるのは確か。ペースメーカーに問題なく付いていくだろう。廣瀬監督の言うように、もしもペースが遅かったら、集団をリードするのは野口になるだろう。
ペースメーカーに付かない選手の代表が大久保絵里(セカンドウィンドAC)だろう。期待の選手だが現時点のベスト記録は2時間26分08秒。それを出した昨年の東京では40kmまでトップを走ったが、下り基調の最初の10kmを除けば17分20秒台平均だった。
アルバカーキに入った1月以前はトレーニングも「あまりできていない」と大久保。1月以降は良いトレーニングが積めたのは確か。だが、東京よりも良いという言葉は本人からも、川越学監督からも聞かれなかった。
川越学監督は高温が予想されるなか、17分00秒のペースに付くことにメリットはないと言う。
「気象条件が最高で、大久保が絶好調でないと2時間23分台は出ません。20℃前後のなかで16分50秒〜17分00秒で行ける選手は世界的なレベルです。条件や体調に合わせて走り、現時点でのベストを尽くすことが今後につながります」
実際はスタート時点で15℃。気温が上昇しても15〜18℃の予想だ。予想以上に涼しいことに、大久保がどう対応するか。
ほとんどの有力選手はペースメーカーに付く予定だ。
取材したなかでは、早川英里(TOTO)の山本光宏コーチは、記事でも紹介したように「先頭集団で走ることがレースの醍醐味」という話し方をした。練習もかつてないほど良いものを積むことができた自信がある。
堀江美里(ノーリツ)の森岡芳彦監督も、先頭集団で勝負して意味がある、という考え。記事でも紹介したように、2007年の名古屋国際女子を制して世界陸上代表になった橋本康子よりもレベルの高い練習ができた。
宮内洋子(京セラ)と木崎良子(ダイハツ)の関西勢もペースメーカーに付くと思われる。宮内は記事にしたように、これまでで最高の手応えを新原保徳監督が感じている。1万mのスピードも元々ある。
木崎は勝負所まで付いていき、ラスト勝負で勝つのがパターン。今回は良い練習ができ、そのスパートが早めになる可能性もある。
ただ、本来の持ち味を殺してしまうような超ハイペースになったら考えるのではないか。実際に走り始めてからの木崎本人の感じ方で、自重することもないとは言い切れない。それでも、見える範囲では付いていくはずだ。
堀江や野口が押し切れず、木崎が35km以降も残る展開になれば木崎の可能性が高くなる。
永尾薫(ユニバーサルエンターテインメント)も、昨年の名古屋こそ転倒で30位に沈んだが、2011年の横浜国際女子2レース(2月と11月)はともに4位。その実績と、日本選手権1万mで4位(2011年)になったスピードから、先頭集団に付く可能性が高い。
ただ、永尾の1万mのスピードが、マラソンをする上でスピードに該当するのかどうかは、小出義雄代表に聞いてみないとわからない。
前日の夜になって、2人の指導者から情報が入った。
小倉久美(四国電力)は先頭集団に付く予定だという。先月のアジア選手権マラソンは2位、2時間35分02秒という結果だが、それ以前のマラソンはほとんど実績らしい実績はない。だが、アジア選手権前の丸亀ハーフでは1時間10分51秒(9位)と自己新。
四国電力は3月いっぱいで廃部が決まっているが、小倉は松浦忠明監督らとともに移籍先を探している最中。窮地に立っても気持ちが切れない選手は、覚悟が決まっている。思わぬ力を出す可能性もあるだろう。
鈴木澄子(ホクレン)は大久保と同様、先頭集団に付かない。自己記録の2時間29分25秒更新が目標で、5000mは16分台、1万mは33分台ということで典型的なスタミナ型。ただ、1月から徳之島と沖縄でトレーニングを続け、本拠地の北海道には戻らずに名古屋入りした。「“暑さ慣れ”は一番しているかもしれない」と太田崇コーチ。
川越監督が指摘しているように、ペースメーカーに付いて最後まで残る選手は、それほど多くはないだろうが、最後まで走りきった選手が勝つ(日本人1位)可能性が高い。だが、早めにマイペースに切り換えた選手が後半で息を吹き返す可能性もある。
大久保も能力は高く評価される選手で、「持久力などを整えられているかどうかですが、持っている能力を発揮できればチャンスはある」(川越監督)
先頭集団に最初から付かない大久保や鈴木が、落ちてきた選手を抜いて行く展開もあり得る。
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