2013/3/8 名古屋ウィメンズマラソン2日前
森岡監督門下で“一番練習できる”堀江
女子マラソンの断層を埋める候補の一番手か?

 森岡芳彦監督門下になって4年目の堀江美里(ノーリツ)が、昨年の名古屋(16位・2時間31分39秒)に続き2回目のマラソンに挑戦する。2時間25分以内の選手層が薄くなってしまっている日本女子マラソン界だが、その断層を埋める候補の1人である。

 東海テレビのホームページに本人のインタビューVTRが掲載されているが、そのなかで堀江は目標を明確に語っている。
「日本人1位で帰ってくること。タイムは派遣設定記録の2時間24分未満です」
 トレーニングの手応えも十分のようだ。
「今まで100%でやっていた練習が、70〜80%の集中力でできています。去年は距離走の練習を、監督の判断で時間走に変更したこともありました。今年は4日連続のポイント練習も、予定を変えずにやらせてもらいました」

 森岡監督にも話を聞かせてもらった。
 昨年の名古屋前の練習と、今年の違いを次のように話している。
「量的にも遜色ありませんが、質が高くなりました。30kmなら昨年は19分くらいで入って、最後もそれほど上げられませんでしたが、今年は18分半で入って、後半は17分前後でまとめています。5〜6分は良いタイムでできましたね」
 そのレベルの練習ができるようになった理由は特定できない。総合的に力が上がったとしか言えないが、昨年の失敗で「堀江の思いが強くなった」(森岡監督)のは確かだという。そこまでの力があったわけではないが、本気でオリンピック代表を狙っていた。高い目標に果敢に挑戦させるのが森岡監督の考え方でもある。

 堀江は武庫川女大の出身。4年時の2008年には3000mSCで10分32秒26の学生新(当時)を出した。スカウトしたのは森岡監督ではないが、男子のジュニア日本記録保持者の愛敬重之ら3000mSCのトップ選手を何人も育てた森岡監督門下になったのは運命だったのかもしれない。
 だが昨年は、日本選手権は3000mSCで3位(10分05秒40)となったが、トラックの自己記録は1種目も更新できないシーズンだった。その分も、「マラソンに懸ける思いが強くなっている」(森岡監督)
 2月3日の丸亀ハーフでは1時間10分26秒と自己記録を更新したが、森岡監督は1時間09分30秒前後が出せると踏んでいた。練習したことをレースで100%発揮できないのが堀江の課題。
 それでも、森岡監督が女子の指導をするようになってからの15年間で「練習では一番」と言い切るレベルに成長している。

 2月の丸亀でかなりレベルの高い記録で走り、名古屋につなげるのは橋本康子と同じパターン。橋本は2003年から5年連続で名古屋に出場し、2007年に優勝して大阪世界陸上代表入りを果たした。2時間25分21秒のベスト記録は、森岡監督が指導した選手の最高タイムである(2番目が小崎まりの2010年ロンドンで2時間25分43秒)。
 名古屋に合わせる練習パターンは確立されている。確立されているから、そのときどきの選手の状態を見て微調整ができる。今回の堀江では、丸亀の1週間後に10kmレースを入れて、33分00秒で走ったし、その後の練習は昨年より少し追い込み方を少なくした。
 丸亀では1時間9分32秒で日本人トップ(3位)だった清水裕子(積水化学)に最後まで食い下がった結果、終盤で松見早希子(第一生命)と早川英里(TOTO)にかわされた。丸亀の後に40km走を1本行うのは橋本と同じパターンだが、「もう少しスピードが要る」と判断しての10km出場だった。今年は例年と違い、名古屋の外国勢の持ちタイムが上がっていることも考慮した。
 これは練習の力が100%発揮できないことへの対策でもある。
「堀江は橋本ほどのキレはありませんし、小崎のような集中力もない。それらも考えての10kmだったんです」
 集中力という点では、小崎の取り組みを見ていたことが大きいという。1月の大阪国際女子を、出産後初マラソンで2時間26分41秒で走った。
「小崎はレース2週間前は状態がよくなかったんです。練習、治療、食事と、子どもを抱えながら、やれることは全てやって調子を上げました」

 トレーニング内容、森岡監督のノウハウ、本人のマラソンへの思い、そして名古屋という舞台。堀江がブレイクする準備は整った。


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