重川材木店 密着ルポ 2012-13
第2回
“戦う”ニューイヤー駅伝に

写真は北陸予選4区の高橋秀昭から5区の三浦拓也へのタスキリレー

@力を出し切れなかった北陸予選

●守りに入った6区、7区
 結果的に力を出し切れない駅伝になってしまった。11月18日に行われた北陸実業団駅伝で重川材木店は2位。北陸地区の2枠に入って3年連続ニューイヤー駅伝出場を決めたが、優勝のYKKに10分近い差をつけられてしまった。
北陸実業団駅伝戦績
 今季の戦績を分析した重川隆廣社長兼監督は「背中が見えるような勝負をしたい」と考えていた。
「例年YKKとは6分程度の差でした。十和田八幡平駅伝や新潟県縦断駅伝、トラックの成績から今年のチームは5分短縮できると期待していました。ところが、ウチの選手は4区以外は1分ずつ悪かった。それに対してYKKは、(同時併催の)中部地区の優勝チームとの差を例年よりも3分縮めました。YKKが良かったのですが、ウチが悪すぎた結果で10分近い差になってしまった」
 河野孝志は脚に不安があり、レース直前に4区から7区に出場区間を変更した。また、1区の前田信哉が故障からの復調途上で、本来の力まで戻っていなかった。5区の三浦拓也も、新潟県内の試合のような力を出し切れなかった。選手個々に反省はあるが、6区の村井健太と7区の河野がレース展開を理由に挙げたことに対しては、その姿勢を重川社長が厳しく戒めた。

重川社長の応援を受けて力走する6区の村井
 6区(13.3km)の村井は中部地区8位だった柳河精機と同時にタスキを受け取り、向かい風が強かったことを考えて前に出なかった。風向きが変わった9km過ぎにスパートして柳河精機に21秒差をつけたが、区間タイムでYKKに1分24秒負けた。
「ニューイヤー駅伝のことを考えたら、柳河精機につかず、向かい風でもガンガン行くべきだったと思います。でも、ニューイヤー駅伝への出場を最優先に考えたら、守りに入ってしまいました。結果的に8割くらいの力しか出せませんでした。その点YKKは、中部の上位チームの流れに乗ることができた」
 7区(13.6km)は重川材木店のスタート10秒後に、繰り上げスタートの4チームが中継所を出た。北陸地区のセキノ興産と高田自衛隊、中部地区の柳河精機と陸上自衛隊富士教導団、守山35普連だった。河野は1.5km付近で「追いつかせた」という。
「北陸3位のセキノ興産との正確なタイム差はわかりませんでしたが、1分差以内でフィニッシュすれば大丈夫とわかっていましたし、先着すれば間違いなく勝てるわけです」と河野。その通りに最後で先着したが、結果的に「ラストだけ勝ったつまらないレースをしてしまった」と反省する。
「後ろと差を広げようとしていないし、前を詰めようともしていません。つないだだけの最低限のレースです」(河野)
 選手たちは反省を込めて話したのだが、YKKとの差が大きくなった理由にレース展開を挙げたことの裏には甘えがあると、重川社長は厳しく指摘

7区の河野も2位を確保するだけの走り
する。
「30秒以内の差であれば、レース展開で負けたと言えるのでしょうが、YKKと区間タイムで1分半もの差があったのです。展開をどうこう言う前に、自身の力のなさを口にすべきですね」
 重川社長の断固とした口調にはエースへの期待と、結果を正確に分析をする経営トップの厳しさがあった。

●4区・高橋の健闘
 重川社長が唯一、「設定通りに走った」と評価したのが、最長区間の4区(17.4km)に出場した高橋秀昭である。55分22秒でYKKには2分差をつけられたが、同じ新潟県内のチームである高田自衛隊・駒形英也と、セキノ興産・川原崇徳をエース区間で抑えた。
 中部地区7位のトーエネックと一緒にスタートし、最初の1kmは下りではあったが2分52秒とかなりのハイペース。
「これでは後半持たないと思いました。後半がすごい向かい風になると聞いていたので、いっぱいになってしまうと最後の3〜5kmで大きく失速するかもしれない。3分ペースに落としてトーエネックと、その前にいる柳河精機の様子を見ようと判断しました」
 高橋の判断は的確だった。前の2チームに徐々に引き離されたが、1km毎で2〜3秒程度にとどめた。また、実際に最後の5kmは強烈な向かい風で、1km3分30〜40秒までタイムが落ちた。
 河野に脚の不安があったため、「レース2〜3日前」に急きょ、7区から4区へ変更になった。さらには、後続との差など、情報がほとんどない中で走らなければいけなかった。その状況でトータルで設定通りに走ったことは、健闘といえるだろう。
 重川社長も「中部の6〜7位と対等の走りをした。YKKに2分離されたのは、向こうが強かったからで。エース区間をしっかり走った事は大きな収穫です」と喜んだ。

エース区間で役割を果たした高橋

●力を出し切れなかった三浦
 5区の三浦拓也もYKKから2分遅れたのは同じだったが、設定よりも1分悪かった。中部の7位には勝っているが、6位には1分遅れた。
 三浦自身、「セキノ興産と5秒しか差を広げられませんでした。もっと行けたと思うので、あまり良い走りではありません」と反省を口にする。重川社長も今季の戦績から、セキノ興産の選手には1分勝てると期待していた。
 クロカン主体の練習を続けてきた重川材木店だが、駅伝を前に実戦的な練習を取り入れるようになった。そこでも良い走りができていたのが三浦だった。「この1年の練習の流れは良かったと思います。クロカンで基礎ができて、スピード練習もしっかりやれたと感じていましたので、北陸予選ではもっと走れたはずなんです。最低でも37分台では走りたかった」と、三浦は悔しそうな表情を見せた。
 重川社長はその原因として、「緊張してしまうこと」を挙げた。
「北陸では、練習や県内の駅伝を走っているときの三浦とは違う雰囲気でしたね」と、重川社長は原因を指摘した。どうしたら大舞台で走れるようになるか。それはとりもなおさず、ニューイヤー駅伝対策にもなる部分である。

1区・前田信哉
「4kmまではスローペースで進みましたが、そこから一気にペースが上がり、7〜8kmで先頭集団から離れてしまいました。YKKに30秒差、セキノ興産とは同じくらいで2区に渡したかったのですが・・・・・
2区・ジョン・カギア
「3kmまでに柳河精機、セキノ興産、高田自衛隊に追いつきましたが、タイムは良くありませんでした。9月に日体大記録会で5000mの自己新を出せたのですが、脚の裏側の付け根を痛めて、スピード練習が思うようにできませんでした」
A練習も気持ちも“攻め”の姿勢ににつづく


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