2003/5/5 水戸国際
男子100 m末續10秒03、国内日本最高!B
高野コーチの分析と展望
「今日の記録は風のアシスト。冷静に燃えれば、涼しい顔で出せる」
男子100 m末續10秒03、国内日本最高!@「青ざめました。行ったと思いましたから」
男子100 mA昨年の10秒05との違いは? 「暴れ馬ではなくなっています」
末續を指導するのは東海大の高野進コーチ。言わずと知れた400 mのファイナリスト(91東京世界選手権&92バルセロナ五輪)で、日本記録保持者である。
末續によれば「高野先生が青ざめて駆け寄ってきました。“微妙だ”って言って」ということだが、これはあくまで末續の観察によるもの。実際に青ざめていたかどうかは、余人の知るところではない。
第三者が他人の精神状態を勝手に推し量るのはどうかと思うが、高野コーチにしても複雑な心理状態だったのではないか。9秒台が日本短距離界にとって快挙であることは間違いない。だが、現在の末續が出していい記録かどうかとなると、担当コーチにしかわからない事情もある。シーズンイン直後という時期に、世間的な大騒ぎにも巻き込まれることになるのだ(世界選手権前は個々の取材は受けない方針だが)。
「……レースに出ないで我慢していましたから、本人にとっては痛快だったのでしょう。しかし、走りとしては100 点満点じゃありません。今年の目標を100%としたら、85%くらい。それは今日の走りだけで言っているのではなく、調整や気持ちの持って行き方なども含めて、感覚的に85%かなと。これからです。日本選手権を経て世界選手権で、100%にしたいですね。
水戸で仕上げ過ぎないようにしようと、話してきました。実際、それほど磨き上げていません。(1.8mの追い風が仮に)無風だったら、10秒20を切るくらいのタイムだったでしょう。風のアシストで出た10秒0台です。ついていましたね」
高野コーチがここまで慎重なのは、末續の調子が上がりすぎるのを心配するのは、昨年の反省からだ。水戸で10秒05を出したあと、大阪国際グランプリ、関東インカレと10秒1台前半を連発。そのあたりの末續の精神状態を、第三者は完全に理解できるものではないが、高野コーチからすると……。日本選手権を前に故障をしてしまった。疲労性のものではなく、本人の不注意によるものだったというが。
「去年、ここで10秒05が出て、ハイになり過ぎました。インカレで油断しました。今年は手堅く、しっかりプロセスを踏んでいきたい。やることも残されています。練習でも上げ切っているわけではありません。彼の場合、1週間調整で練習を落とすと、バネが溜まって走れてしまうんです。実際、去年は練習で、もっと(いいタイムが)出ています。
初っぱなの大会で出た記録を1年間破れないというのも、どうかと思います。今年は、初戦の記録を抜けないことのないように、したいですね」
では、どういう状態になったときに、9秒台が出ていいと考えているのだろうか。
「10秒0台を3回くらい出して、やっと“王手”と言えるんじゃないでしょうか。これまでは、まだ1回だけでしたから。ポンと(9秒台に)入ると苦労します。(9秒台は)最も出るべきときに出て欲しいと思っています。精神状態と体の状態と、全てが一致したときですね。
今日はゴール前の20〜30mが硬かったですね。もがいていました。その点、予選(10秒13・+2.0)は最後も楽に行っていましたね。記録を追いかける走りをするのでなく、課題の走りをすればいいんです。(練習で)作り上げた走りを自動化し、冷静に燃えろと言っているんです。(そうすれば)涼しい顔をして9秒台を出せるんじゃないですかね。
周りが騒がしくなることも、声援と受け止めることが必要です。それにしても、9秒台が出ないと凡記録と言われるようだと、きついですね」
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