2008/4/2 ナチュリル入社式
丹野が社会人競技生活への抱負を擬態語で表現
「ガツンと前半突っ込み型で行きたい」
4月2日、ナチュリルの入社式が東京・明治記念館で行われ、丹野麻美と松田薫が社会人競技生活への抱負を述べた。
丹野「より競技に集中できる環境を作っていただき、本当に嬉しく思います。大学時代よりも良い結果を残せるよう、頑張っていきたいです。ナチュリル社員の一員として、仕事もしっかりと行い、競技と仕事の2つを両立できる選手になりたい。同じチームに世界を目指す先輩がたくさんいらっしゃいます。一緒に練習をして、お互いに刺激しあいながら、チーム全員で世界を目指していきたいと思います」
松田「社会人としての自覚と責任をしっかり持ち、会社に対しても、また社会に対しても貢献できるよう、しっかり努力をしていきたいと思います」 昨年10月の入社発表会見時の記事もご覧ください
新人だけでなく選手全員が壇上に上がり、1人1人が今季の抱負を述べた。その際に丹野は「北京オリンピックはずっと目標にしていた大会。個人種目の400
mと、4×400 mRの2種目で出場したい。400 mは大学2年のときに出した日本記録(51秒80)が更新できていないので、まずは日本記録の更新、そしてA標準(51秒55)を目指します」と、具体的な目標を口にした。
入社式後には囲み取材の時間もあり、丹野に沖縄合宿など冬期トレーニングの成果について語ってもらった。
「まだ短い距離の練習はしていませんが、300 mとか250 mのタイムは去年の今の時期よりも明らかに上がっています。全力のスピードはもう少し暖かくなってからですが、確実に、ケガなく冬期練習はできました。今年一番の課題としているスピード持久力が、よりついたと感じています」
昨年の世界選手権で感じたのは、「後半は大きく離されないけど、前半で大きく差を広げられてしまうこと。前半のためにはスピードが一番大事」というテーマを持ち、この冬期は取り組んできたという。
「(200 m通過は)51秒台のときは24秒台後半です。いきなり速くはできませんが、24秒台中盤くらいで行きたい。後半失速しなければ、日本記録は出せると思います。200
mでも日本記録を出せるくらいのスピードはつけたいですね」
補足すると、後半に著しく失速することがないのが丹野の特徴である。
以前から指摘されていたことだが、選手と指導者が擬態語で話せることが、相互理解の目安となる。擬態語とは、実際には音をたてないものごとの様子を、音声的な印象にうつしかえて表現する言葉。走っている様子をビューンとか、グングンなどの音声に擬する表現だ。
川本和久監督は著書の「2時間で足が速くなる!―日本記録を量産する新走法 ポン・ピュン・ランの秘密」(ダイヤモンド社)のなかで、指導現場における擬態語について記述している。
たとえば丹野の場合、スピードに乗って、いい感じで走れることを「スーッ」と表現します。雉子波はうまく加速していることを「ポン・ポン」と表現しました。
(中略)
ただし、「スーッ」や「ポン」は、自分の運動感覚を置き換えているだけでなので、その中身は人によって違います。
(中略)
池田の場合はうまく踏み切れたことを「ガツーンと踏み切れた」と表現します。この「ガツーン」は池田と私にしかわかりません。
(後略)
「川本和久監督のスポーツオノマトペ」(コーチングクリニック編集長ブログ)も参照してください
丹野は昨年11月の取材時に川本監督と出会った高校時代を、次のように振り返ってくれたことがあった。
「川本先生からアドバイスをもらった高3の国体で、初めて53秒台を出すことができました。(大学2年時の)マウントサックの時のような動きのアドバイスではなくて、レース構成を擬態語で説明してくれました。『最初にガツンと入って、その後はスーッと行って、水濠からビューっと頑張ればいいんだよ』って。すごくわかりやすかったことを覚えています。その頃は前半を抑えたレースをしていたのですが、53秒台が出せなくて、どうすればいいのか悩んでいた時でした。そのタイミングも良かったのでしょう。特にバックストレートの“スーッ”という表現が、自分の課題に適した走りだと感じました」
囲み取材の最後にある記者から、社会人競技生活をどう送りたいか、擬態語で説明して欲しいという依頼が出た。
「最初の3年間とか仕事に慣れるまでは、ガツンと、前半突っ込み型で行きたいです」
“ガツン”は丹野にとって、最初の50mの走りを表現する擬態語だが、“3年間”という期間は、バックストレートを走るときの“スーッ”という例えの方がいいような気もする。取材時間の最後だったため、確認することができなかった。
勝手に解釈をさせてもらうと、北京五輪までの短期的な部分は“ガツン”と行き、その勢いで仕事と競技の両立を、3年くらいで軌道に乗せようということだろうか。そこを、力を抜く“スーッ”で取り組むのでなく、“ガツン”に近い意気込みで行くということなのかもしれない(機会があったら確認しておきます)。
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