2001/9/15 スーパー陸上
全種目ショート記事●女子編
400 mは史上初の53秒台3人
棒高跳は4m56の国内最高記録
今井は1m96の日本新
▼100 m
ハードルが専門(シドニー五輪銀)のアロシー(スペイン)が、200 mを得意とするマニ(カメルーン)を抑えた。11秒26と11秒28。坂上香織(ミキハウス)が11秒58で3位。ベスト記録では0.50秒差があることを考えると、0.30秒差は健闘といえる。しかし、新井初佳(ピップフジモト)、二瓶秀子(福島大)が出ていなかったこともあるが、坂上以外の日本選手は、坂上からも0.33秒の差があり、3つのレベルの選手がレースをした格好となった。
▼400 m
柿沼和恵(ミズノ)と吉田真希子(福島大TC)の前半は、思ったより外国2選手と差がつかなかった。さすがにオグンコヤ(ナイジェリア)、ヌギンゴ(カメルーン)には届かなかったが、53秒台3人と好記録が出た。日本選手同士の争いでは、吉田がホームストレートで追い込むかに見えたが、柿沼も粘って逃げ切った。柿沼は自己の日本記録(52秒95)に次ぐ53秒01とパフォーマンス歴代2位。吉田は53秒23の歴代3位。杉森美保(京セラ)は53秒97と初の53秒台。
日本選手3人が同一レースで53秒台をマークするのは史上初めての快挙。2人が53秒台をマークしたのも、過去1レースでしかないのだ。信岡沙希重(ミズノ)の54秒64も自己新ではあるが、室内で54秒11の記録を持つので手放しでは喜べない。
▼1500m
楽観は禁物だが、世界が少し近づいた感じを受けた。外国選手もそれほど強い選手ではなかった。優勝したのが800 mで1分58秒71の記録を持つセブラク(スロベニア)で、2位がエドモントン世界選手権9位のコセンコワ(ロシア)。4分13秒台の優勝記録は、この2人にとってはそれほどハイペースではない。これまでのパターンでは、日本勢は最後で一気に離される展開が予想された。だが、3位の田村育子(グローバリー)は4分13秒66、4位の早狩実紀(KIコーポレーション)も4分13秒89と“勝負”をすることができた。日本人3番手の藤原夕規子(グローバリー)も4分17秒68と自己新、同4番手の斉藤由貴(玉川大)は自己記録に僅かに及ばなかった。
▼5000m
世界選手権金メダル、“注目”のエゴロワ(ロシア)とマロット(ケニア・松下通信)の外国2選手に最後まで食い下がったのは、福士加代子(ワコール)と橋本康子(日本生命)だった。最後は力の差を見せつけられた(エゴロワとは3.66秒差)が、福士が3位で15分25秒65、橋本が4位で15分28秒94。福士は7月にカナダで15分10秒23の日本歴代2位をマークした力を国内でも発揮した。また、橋本は今季日本のトップクラスに完全に定着し、今レースで日本グランプリ種目別年間優勝を決めた。
弘山晴美(資生堂)が日本勢3番手で15分29秒73(5位)。世界選手権代表の小崎まり(ノーリツ)は10位。
▼100 mH
シドニー五輪の金銀メダリストが対決したが、シシギナ(カザフスタン)に本来の後半の強さが見られず、アロシー(スペイン)が12秒78(+0.4)で逃げ切った。日本勢では徐々にリードを奪った茂木智子(秋田ゼロックス)が13秒39と、自己記録に0.01秒と迫ってトップ(4位)。森本明子(さとえクラブ)、藤田あゆみ(穴吹工務店)と続き、走幅跳終了後「ハードルは全然跳んでいないんです。13秒5くらいが出せれば」と話していた池田久美子(福島大)は13秒56で7位。
▼走高跳
今井美希(ミズノ)が1m96の日本新を3回目でクリアした。詳しくは記事をご覧ください。同じ高さを2回目に成功したババコワ(ウクライナ)が優勝、今井が2位、2mジャンパーのエイカフ(アメリカ)が1m85と自己記録を15cm下回って3位。岩切麻衣湖(プレジャー企画)が1m80で4位、太田陽子(ミキハウス)が同記録で5位。
▼棒高跳
グリゴリエワ(豪)が4m30で優勝を決めると、4m40を2回目に成功。4m56の国内最高記録(all-comers record)にバーを上げるとこれにも1回で成功し、バックスタンドの観客を喜ばせた。今大会のプログラムには、世界記録、日本記録、大会記録と並んで国内最高記録(all-comers record)が記載されていた。現在、世界選手権やオリンピックでも世界記録がそうそう更新されるわけはない。国内最高記録(all-comers record)のような実現性のある記録を観客に紹介することで、少しでも雰囲気を盛り上げることが可能となる。連盟や組織が公認する記録ではないが、こういった観戦に役立つ価値観は積極的に紹介した方がいい。スーパー陸上のプログラム作成に携わった人間に敬意を表したい。
日本勢では今季好調の近藤高代(長谷川体育施設)が記録なしに終わったのは残念だったが、日本記録保持者の小野真澄(ミキハウス)が4m10と、元気を取り戻してきた。
▼走幅跳
世界選手権金メダルで、前日の記者会見では400 mHのモーリ(伊)の通訳も務めたメイ(現在はイタリア国籍だが、以前はイギリス人)が、3回連続ファウル。4回目にガルキナ(ロシア)に並ぶ6m53(+0.8)を記録したが、セカンド記録がないのでその時点では2位。6回目に6m54(−0.4)と1cm記録を伸ばして辛うじて優勝した。元々、助走スピードの速さよりも、踏みきりのテクニックで跳ぶタイプだが、いつもよりさらに助走スピードが遅かったような気がする(正式な計測データがあるわけではないが)。世界選手権、ユニバーシアードと国際大会でも6m50を確実に跳ぶ力をつけた池田久美子(福島大)だが、さすがに疲れが出たのか6m37(+1.1)で3位。
▼円盤投
日本記録(56m84)保持者の室伏由佳(ミズノ)が2投目の53m55で優勝。今季は中京大の先輩でもある中西美代子(ミキハウス)に分が悪かったが、27cm差で破った。今大会の日本人優勝者は兄の室伏広治(ミズノ)と2人だけ。36歳のベテラン・影山富子(スズキ)の記事はスズキのWEBサイトで。