淡路決戦間近!
実業団女子駅伝“関西4枠”をめぐる熾烈な争い
今年の関西勢は超ハイレベル
  後編 前編

 しかし、チーム力という点では、前編で紹介した全日本実業団で活躍が目立った4チームよりも、ダイハツとノーリツの方があるのでは、とも思わせる。グローバリーを含めた各チームの有力選手は以下の通り。
ノーリツ: 岡本治子、小崎まり、董 朝霞、上岡正枝
ダイハツ: 大越一恵、西村みゆき、田鍋久美、山中美和子、河相 緑
グローバリー: 野口みずき、田村育子、藤原夕規子、斎藤 梢


 ノーリツは昨年の淡路島関西地区優勝チームだが、全日本を会社の都合で欠場せざるを得なかった。その鬱憤を晴らすかのように、6月の日本選手権で岡本と小崎がワンツー・フィニッシュ。そろって世界選手権に出場した。董朝霞は1万m30分47秒22と日本記録を上回り、上岡正枝は31分57秒2。4人が32分を切っているのだから驚異的である。不安材料は董と上岡が今季、目立った記録を出していない点だ。

 ダイハツは大越と西村に、昨年の勢いがないのが不安材料。だが、この2人が復調すれば鬼に金棒。田鍋が全日本実業団1万mで32分12秒01と好タイムを出し、新人の山中姉が神戸の5000mで15分36秒88。河相は全日本実業団ジュニア3000mで4位9分18秒50。長い距離を担うであろう大越と西村が大丈夫なら、全国でも優勝を狙える陣容である。

 面白いのがグローバリーである。真木和コーチ(バルセロナ五輪1万m、アトランタ五輪マラソン代表。1万m元日本記録保持者)が現役復帰するのではないか、などという噂もあるが、淡路島の区間距離構成は、グローバリーにとって有利となる。全日本実業団女子駅伝と淡路島女子駅伝の区間距離は、以下のように違うのである。
   淡路島 全日本
1区 3.5km 6.6km
2区 8.0km 3.3km
3区 5.3km 10.0km
4区 11.2km 4.1km
5区 3.8km 11.6km
6区 5.2km 6.595km
合計 37km  42.195km


 淡路島の方が全体に短く、それが毎年、混戦・激戦を生じさせる結果となっている。全日本は10km区間を走れる2人の選手に加え、1区でもきっちり走れる選手が必要。さらにもう1枚、他チームが手薄となる区間に好選手を配置できれば万全に近い。
 その点、淡路島は2区と4区が長距離区間。グローバリーの陣容から見て、2区に田村、4区に野口は確定的。田村は1500mで日本選手間に無敵(関西実業団のみ敗北)の強さを誇るが、5000mでも15分20秒台の記録を持つ。野口は言わずとしれたハーフマラソンの女王。今年は日本選手権1万mでも3位となり、世界選手権にも出場するなどスピードも向上している。
 この2人に加えて、新人の藤原夕規子が1区で通用しそうな勢いを見せている。1500mで全日本実業団で優勝。9月のスーパー陸上から2試合連続自己記録を更新し、4分16秒05まで記録を伸ばしてきた。藤原がトップに近い位置で渡せば、2区と4区でドカーンといけるのである。好条件の中で32分10秒前後を出している選手とは、この2人の爆発力は桁が違う。真木和コーチが現役復帰を云々されるのは、真偽はともかくとして、つなぎの区間に不安があるからである。だが、この3区間がしっかり走れば、4位以内というのはかなりの確率であり得るのではないか。

 9月の全日本実業団1万mで好走した4チームと、その他の3チームを比べると、先に紹介した4チームは大砲がやや非力である。ワコールの福士加代子は別格としても、1万mのタイムは好条件の中で出したものである。その中では、日本生命の岩本&橋本が後述3チームのエースに対抗できるかもしれない。京セラは原がどこまで、他チームのエースに対抗できるか。
 だが、後述の3チームは、それぞれ不安を抱える。ノーリツの大駒4枚はすごいが、董と上岡がどんな状態なのかわからないし、ダイハツは大越と西村が秋口になってどうなのかわからない。グローバリーはつなぎの区間がどうか。こう見ると本当に、どのチームも絶対とは言えないのである。

 まさに群雄割拠。しかし、確実に3チームは落ちる。レースが白熱し、見ている方もハラハラドキドキ、駅伝の醍醐味を味わうことができるのは確実なのだが、“なんとももったいない”というのが正直な感想である。聞くところによると、参加チーム数が全国枠に満たない地区もあるという。関西に枠を振り分けてもいいのでは、と思えるほど今年の関西勢は充実している。だが、当事者である選手やスタッフは、そんなことを気にかけているわけにはいかない。思い切って走るだけだ。
「どこが勝ってもおかしくなく、どこが落ちてもおかしくない歴史に残る淡路決戦。一期一会一走です」
 ある監督がこう心情を綴っていたのが印象的である。