2002/1/26
千葉国際クロスカントリー◆特別企画◆
ジュニア選手に浸透しつつある“海外志向”
その3 ジュニア男子編・下 その1 その2
1年時から世界クロカン出場の加藤のケース

 その2で紹介したように加藤直人(土岐商高)のこのところの安定した強さには、目を見張らせられるものがある。しかし、今大会は2連勝を逃したばかりでなく、1学年下の今井にも後れをとった。
「自分の持ち味は、みんなが落ちてくる中盤からガンガン攻める点です。それが今日はスタートから入れ込んでしまったらしく、知らないうちに速く出てしまった。その分、中盤でいっぱいいっぱいになってしまいました」

 反省の弁が先に出たこの日の加藤だが、クロスカントリーは得意種目といったらおかしいかもしれないが、競技生活の中でポイントとなっている種目なのは確かだろう。2年前、つまり1年時の福岡国際クロスカントリー・ジュニアの部で2位となり、世界クロカン(ビルモラ=ポルトガル)代表になっているし、前回の千葉はジュニアの部で優勝。
「クロスカントリーならみんなのペースが落ちても、自分はサーッと行ける感覚があるんです。起伏があるのも面白いですね」

 4月からは中大に進学する加藤。中大を選んだ理由の全てではないだろうが、動機の1つに、中大に藤原正和がいることが挙げられる。藤原の陸上への取り組み方、日常生活の律し方など、その意識の高さはつとに有名だ。
「見習うところがいっぱいある。そういう方と一緒にやりたい気持ちはあります。藤原さんとは1年生の時に、一緒に世界クロカンに行っているんです」
 加藤には中学時から、競技のために日常生活を律するのは当たり前、という気持ちがあったが、藤原と一緒に遠征することで、いっそうその思いが強くなった。「治療はお金を出せば行うことができるが、睡眠はお金では買えない」と旭化成の宗茂監督から言われたことも実践し、夜は10時頃には就寝する。

 高校1年で参加した2年前の世界クロカンでは、完走選手中最下位の64位だった加藤だが、藤原と一緒だったという点で、目に見えない収穫があったようだ。藤原が早生まれで、大学1年生でもジュニア資格があったことが幸いした。ちなみに、今大会日本人1位の空山隆児も、2年前の世界クロカンに出場している。
「世界クロカンは2年とも全然走れませんでした。海外は気を遣わないといけないことばかり。学んだことはいっぱいありますが、結局走れなくて、“何しに行ったんだろう”という結果です。3年連続で出られたら“走れたなあ”と思えることが一番の目標になります」

 最後にちょっと、注意をお願いしたい。今回の原稿で選手の意識が“海外に向いている”ことを紹介した。以前よりもその傾向が大きくなっているのは確かだろう。だが、今回は報道陣から世界クロスカントリーに関する質問が多く出たことで、選手も遠征を意識した答え方が多くなった、ということも否めない。
 仮に、どこかの大会で、今回紹介した選手たちに会っても、「駅伝よりも海外遠征が好きなんだって?」という意味の質問はしないでほしい。選手は「インターハイや駅伝よりも重視している」と言っているわけではないのだから。
 今回のテーマ(ジュニア選手の海外志向)に沿った原稿を書こうとすれば、選手の「海外に行きたい」というコメントが中心の紹介の仕方になってしまう。だが、それが選手の考えていることの全てではないことに、注意をしてほしい。