特別レポート

計測工房

@春の高校伊那駅伝

競技会運営を
舞台裏で支える
タイム計測会社の
活動をレポート



後編 藤井社長の
タイム計測に懸ける思い

                                       前編 中継所のタイム計測
写真F 中継所の選手通過と同時にデータを集計
中継所で計測されたタイムは選手通過と同時に、電話回線を通じて競技場記録室の計測工房コンピュータに送信される。1つの中継所に対して1台のコンピュータが対応。春の高校伊那駅伝には予備も含め、11台のコンピュータが現地に持ち込まれた。(写真はレース前日のシステムテストのときに撮影)
写真G 中継所の選手通過と同時にデータを集計
中継所から送られてきたデータは専用ソフトで瞬時に処理される。チップの番号と用意されていたデータベースの選手名を照合し、並べ替え、順位づけなどがなされ、プリントアウトされる。それを陸協役員がチェックした後に正式リザルトとして、各部署にコピーが配布される。(写真はレース前日のシステムテストのときに撮影)
写真H テレビ中継画面にもデータを提供
春の高校伊那駅伝は地元テレビ局でオンエアされる大会。男子は生中継で、計測工房が計測したタイムが同時にテレビ局にも提供され、画面にも選手が通過後瞬時に記録が表示される。箱根駅伝予選会、全日本大学女子駅伝などでも同様の手順で、計測工房が提供したデータがテレビ画面に表示されている。
写真I フィニッシュ地点も2つのマット(センサー)で
フィニッシュ地点も中継所と同様、2枚のマットが敷かれていた。予備の部分にどこまでコストをかけるかは計測する会社によって異なるが、計測工房は「すごく重視している部分」だと藤井社長は言う。「計測の仕事ではトラブルを完全にゼロにすることは難しいのですが、だからこそ、どうやったらリスクを減らせるかを考えています」
写真J トラブルなしで全チームがフィニッシュ
春の高校伊那駅伝では午前中に行われた女子が59チーム、午後の男子は121チームがフィニッシュ。女子は5区間295人、男子は6区間726人、合計1021人のタイムがトラブルなく計測された。
写真K 最終走者フィニッシュ後、約2時間で撤収作業も終了。11名のスタッフを動員して2日間、計測工房も全力で駆け抜けた。藤井社長は「どの仕事も一期一会」という気持ちで取り組んでいる(計測工房のPhilosophy企業理念参照)。
写真L タイム計測に懸ける藤井社長の思い
計測工房を2007年5月に設立した藤井拓也社長。当時31歳。自身は中学、高校、大学と長距離選手だった。大学卒業時に「陸上競技に関係する仕事をしたい」と考え、タイム計測の世界に足を踏み入れた。独立・起業を考えたのは「この仕事を一生涯やりたい」という思いが強くなったからだ。
「何が面白いかといえば、計測という“特殊な仕事”だからです。一般的な企業ではできない仕事で、そこにやり甲斐を感じられました。そして今回の春の高校伊那駅伝もそうでしたが、現場に来ると“自分たちの居場所がある”と実感できる。その現場で、自分たちが役に立つことができるのです」
 バックアップに対する考え方に表れているように、藤井社長は利益最優先の姿勢では臨んでいない(計測工房のBusiness Policy営業方針参照)。
 それが大会サイドから信頼されることになり、特別な営業活動はしなくても計測した大会は増え続けている。今後の目標も「積み重ねていくこと」で、売り上げや、会社の規模を大きくすることではない。
「計測した大会数が増え続けているのは、やってきたことは間違いがなかったということだと思っています。これからも1つ1つの仕事を大事にして、積み上げていきます。その結果10年後、20年後にどうなっているか、ということだと思います」
 強い意思と誠実さで、タイム計測という仕事に日々取り組んでいる。


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