重川材木店密着ルポ2005
第2回 初めての夏合宿を経て

B 鍋城と松本が月間800kmを走破
そして、いよいよ駅伝に

@契機となった野尻湖の30km走
A重川夏合宿はここが違う!

復調著しい鍋城

 松本と並んで練習を順調にこなしている選手として、鶴巻健監督が名前を挙げたのが鍋城邦一だった。7月、8月と月間約800kmを練習で走り込むことができた。月間1200kmを走るマラソン選手もいるが、駅伝やトラックが中心の選手で、合宿の数も多くないチームでは、これも立派な数字である。8月末の北陸選手権5000mでは、暑さの中を14分29秒とYKK勢と互角の走り。ゲタンダを除けば重川材木店選手でトップとなった。
 しかし、6月中旬に取材で新潟を訪れたとき、鍋城は故障で走れていなかった。
「去年(2004年)1年間ブランクがあったのに、4月に急激に走り込みを始めたら、5月に右の大臀筋を痛めてしまったんです」
 一昨年まではコニカミノルタに在籍していた選手。同社をやめた後は北海道に戻り、農業を営む実家の手伝い、ホテルへの就職、コンビニのアルバイトなどをしながら、「趣味程度」には走り続けていた。といっても、月間の走行距離は100 km程度。このブランクを取り戻すためにも、少しでも多く走り込みたいと考えている。
「週3日間のフルタイム勤務があると、800 kmは厳しいですね。7、8月と毎日が15時上がりになったので、距離を踏むことができました」
 走り込んだ成果は北陸選手権の結果だけでなく、夏合宿中にも鍋城自身、感じることができたという。それは、8月の菅平合宿中のこと。20〜25km走が実施され、このときは原田正彦も参加していた。その5km過ぎで原田が突然、ペースを上げた。それを追走したのが鍋城だった。原田は予定した20kmで走り終えたが、鍋城はそこからさらに5kmをプラスして、ペースを維持して走りきった。
「コニカの頃も同じ菅平で練習をしましたが、ほぼ同じペースで走ることができました。集団ではなく1人で走りきりましたから、当時の力には戻りつつあると実感できました」
 鍋城自身はメンバー入りできなかったが、全日本実業団対抗駅伝に4度も優勝しているチームの一員だった選手。その復調は、重川材木店にとって大きな戦力となる。

9月の菅平合宿最終日の25km走。(右から)松本、佐々木、萩野の
3人が設定ペースで最後まで走りきった

 何度も名前が出てきている松本も、7、8月と月間800 kmを走破している。北陸選手権1万mでは5000mの鍋城同様、ゲタンダ以外では重川材木店勢トップ。9月の菅平合宿でも好調ぶりを見せていた。2日目の1000m×10本のインターバルで、最後の1本は2分49秒で上がって萩野に勝っていたし、4日目の25km走終了後には1人、流しというよりもダッシュに近い走りをプラスしていた。
「7〜8月に走り込めた成果が出ていると思います。元々は、暑さは苦手な方。これから涼しくなれば、もっと走れるようになってきます」
 鍋城、松本以外でも、冒頭で紹介したように進藤と吉田も練習がこなせるようになった。選手たちのリーダー格である萩野が、4回の夏合宿を次のように総括してくれた。
「3回目まではベースを作る感じで、走り込みが主な狙いでしたが、9月の合宿から、駅伝まで2カ月という時期になりましたから、レースをイメージできる内容に、練習の質も変わってきています。今回、3日連続ポイント練習をこなしましたし、合宿2日前にもポイント練習を入れています。みんな、よく踏ん張ったな、という印象ですね。ただ、すべてを設定通りにこなせず、いっぱいいっぱいの選手もいた」
 その萩野が、7月のホクレン・ディスタンスチャレンジで13分台を出した。大きく違うメニューをこなしているわけではないだけに、「オレにもできる」という気持ちに他の選手たちをさせている。9月の菅平合宿には参加できなかったが、箱根駅伝2区区間賞の経歴を持つ原田も、8月の合宿では先頭を引っ張っていた。
 9月の菅平合宿に参加した萩野、進藤、鍋城、松本、吉田あたりが順調に練習をこなし、駅伝メンバー入りが有力視されている。その一方で、合宿に来ても同じメニューがこなせない状態の選手は、参加させていない。
 それに奮起したのが内田竜太と佐々木祐の2人。9月の菅平合宿期間中も新潟で仕事をしていたが、最終日が土曜日ということもあり、菅平に駆けつけて25km走を合宿メンバーと一緒にこなした。昨年からの部員でもある内田は、貧血などで練習ができない時期もあったが、やっと走れてきた。2日前にも新潟で20km走を1人でこなしてきたという。
「やっぱり、駅伝メンバーに入りたいですからね」


9月の菅平合宿最終日
に飛び入り参加した
佐々木(左)と内田(右)


 重川社長は夏合宿の手応えを、次のように話した。
「合同練習の効果が現れ始めたと思います。1人や2人の練習ではきついペース設定も、一緒にやることで楽にこなすことができる。そうしていくなかで、みんなの気持ちも1つになってきたように感じています」
 鶴巻監督は北陸実業団駅伝が迫っていることを踏まえ、練習ができている今こそ、気をつけなければいけないと話す。
「全員の意欲が上がっています。ポイント練習以外でも、積極的に走っている選手も多い。でも、そこでやり過ぎると逆に、故障を招くこともあります。強化練習の期間はともかく、調整期間に入ったら、あまり詰めて練習をしない方がいいでしょう」
 今季の5000mのデータを調べると、7人の合計タイムでは目標のYKKに迫っている。重川材木店の選手は過去に、いいタイムを出している選手が多く、そのレベルに戻るような練習と調整をすることができれば、YKKへの挑戦も可能なレベルとなる。
 あとは、“駅伝の走り”ができるかどうかだろう。ゲタンダという絶対的なエースがいるのは、大きなアドバンテージ。そのゲタンダが、力を発揮できる位置でタスキを渡せるか。そして、ゲタンダが築いたポジションを、相手にプレッシャーとする走りを続けられるかどうか。
 経験不足ゆえの不安要素があるのも事実。その不安を少しでも小さくするため、残り2カ月の取り組みに悔いを残さないよう、選手たちもスタッフも最善を尽くそうとしている。

重川社長自ら、選手たちに給水を渡す


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