重川材木店密着ルポ2005
第2回 初めての夏合宿を経て

A 計4回の夏合宿を実施
重川夏合宿はここが違う!

@契機となった野尻湖の30km走

5:40 起床 朝練習で菅平湿原の
周回コースを走る。
レベルの違うゲタンダ(左)は
単独走か他チームのケニア
選手と速いペースで行う。
日本選手は萩野(右)を
中心に集団走
6:00 朝練習
7:30 朝食
朝食後は各自休息    
10:30 午前練習
12:30 昼食
昼食後は各自休息
16:30 午後練習
18:30 夕食
22:00 就寝

 合宿中の1日の生活パターンは上記の通り。
 1日3部練習を行なっているが、これはどこもやっていること。他のチームと比較して特に、違いがあるわけではない。だが、重川材木店は通常の勤務・練習体制では、週のうち3日間が夕方までのフルタイム勤務。しかも、選手の多くが大工など建築現場の仕事に従事している。その点、1日の時間を練習のために全て使えるのが合宿。他のチームと比べたとき、日常との違いは、より大きくなる。
 進藤英樹は一昨年まで、日立電線で萩野とチームメイトだった選手。父親が大工ということもあり、重川材木店の“大工のチームで全日本実業団対抗駅伝出場”という目標に共鳴してこの4月に入社した。
「やはり、屋外でずっと紫外線を浴びながらの仕事は、それなりにきついですよ。合宿になれば仕事から離れ、走ること1本に集中できます。その分、練習効果は絶大になると感じています。選手同士が同じ部屋で寝起きを共にする間に、情報交換をすることもできる。いつも寮で一緒に生活をしていますが、仕事と両方頑張ることを考えると、自分の部屋で休むことを優先してしまいますから」

この春から重川材木店の一員となった進藤の走りも注目される

 1日のスケジュールに特徴はないが、合宿全体のスケジュールには重川材木店らしさが表れている。今季実施した合宿は4回。
6月:妙高高原(2泊3日)
7月:菅平高原(3泊4日)
8月:菅平高原(2泊3日)
9月:菅平高原(3泊4日)
 最長でも3泊4日と、1〜2週間単位で行う他の実業団チームの合宿と比べると、短期間で実施している。しかし、ポイント練習を3日間続けて行うなど、中身は濃い。下の表は9月の菅平合宿のメニューだが、2・3日目の午後練習と、4日目の午前練習がポイント練習という位置づけ。2日目の1000m×10は3分ペースで、それなりの負荷をかける。3日目の12000mはペースに変化を付ける“コントロール走”だが、それほど大きな負荷をかけずに、4日目の25km走まできっちりつなげる流れになっている。

朝練習 午前練習 午後練習
1日目     クロスカントリー90分
2日目 10km(jog) 90分クロスカントリー(jog) 1000m×10
3日目 10km(jog) 90分クロスカントリー(jog) 12000m
4日目 10km(jog) 25km走  

 松本が長期合宿との違いを、次のように話していた。
「長い合宿だと、自分では集中しているつもりでも、どこかダラダラしてしまっていた。重川の合宿は短いぶん、最初から最後まで、集中して取り組めます。3日連続でポイント練習をこなしてしまうんですから」
 重川社長は長期合宿を行わない理由を、次のように説明している。
「選手たちの体力を考えたとき、1週間〜10日間もやって体が持つのかな、ということです。環境は、力量に応じて、与えられるべきだと考えています。選手たちには現時点で“10”の環境を与えていますが、まだ“8”の力しか示していません。これが“9”くらいの結果を残し始めたら、“12”の環境を考えていいと思いますが」
 経営者らしい感覚で、選手たちの奮起を促している。

往年の名選手・鶴巻監督も、
朝練習で選手たちと汗を流した
9月の菅平合宿からは
トレーナーも帯同し、
空き時間に治療を受けることも
松本は自前でマッサージ
器具を持参していた
旅館の廊下には著名選手や
有力チームとともに
重川材木店の寄せ書き色紙も

 合宿自体の特徴ではないが、9月の菅平合宿3日目の夜に行われたミーティングには、重川材木店らしさが表れていた。通常の勤務&練習体制について、選手と重川社長との間で緊迫した話し合いが行われた。
 前述の進藤のコメントにあるように、重川材木店は週に3日間はフルタイム勤務。ポイント練習以外の日は、仕事を目一杯するという考え方である。だが、それでは疲れが抜けにくく、ポイント練習にも影響してしまう、と思える状況になり始めた。特に夏場の現場作業は体力の消耗が大きい。
 それを考慮して、7・8月は月曜日から金曜日まで、15時に仕事を上がる勤務形態になっていた。9月からは再度、従来の3日間フルタイム勤務に戻っていたが、北陸実業団対抗駅伝を2カ月後に控え、勤務時間の問題が再度、話し合われた。
 選手を代表して、萩野が口火を切る。
「今季、5000mで14分台前半の選手も多く出ていますし、それより上のタイムを出すには、15時上がりを希望します」
 だが、昨年の密着ルポで紹介しているように、選手が仕事を離れる間の会社への損失は、重川社長個人が穴埋めをしている。個人が負担する部分ではあるが、経営者としては、対費用効果を考えるのは当然だ。次のような話し方を選手たちにしていた。
「こういった環境があれば、このタイムを出せる、という言い方をしてほしい。お客さんに向かって『頑張りますから』と言っただけで、お金を出してはくれない。具体的に、こういった商品・サービスを提供できるとプレゼンしないと話はまとまらない」
 そう言われては選手たちも、明確に答えざるを得ない。合宿前に重川社長から、北陸実業団駅伝で戦うための目標タイム(5000m・1万m)が提示されていた。
「もう少し時間をもらえれば、14分10秒台を出せます。休息やケアに費やす時間も必要」(松本)
「最近、練習のタイム設定が上がっていい練習ができていますが、その分、疲労も出ている。時間をもらえれば、最低でも社長の設定したタイムは出せます」(吉田)
「(3日間の)フルタイム勤務でも5000mの記録は伸ばせそうですが、駅伝を考えたら1万mの記録を伸ばしたい。そのためには、時間がもっと必要」(進藤)
「7・8月と15時上がりになって、月間800 kmを走り込むことができました。北陸選手権でも14分29秒までタイムを戻すことができた。あと1カ月、走り込めば自己新も出せると思う」(鍋城)
 重川社長としては、選手たちからこういった声が挙がるのを待っていた。勤務時間を見直す必要があるのではないか、と問いかけもしていた。全ては、北陸実業団駅伝で戦うためである。週3日のフルタイム勤務が、週1日に変更される可能性が出てきた。
菅平合宿中に行われた
ミーティング風景。
緊張感のある話し合いが展開した
B鍋城と松本が月間800kmを走破 そして、いよいよ駅伝に

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