2002/3/3 びわ湖マラソン
マラソン2回目の諏訪が“サブナイン”に迫る2時間09分08秒!!
「ゲッラがペースメーカーとは知らなかった」
本人も驚く快走だが、マラソンへの適性は大


 諏訪利成(日清食品)は並走しているゲッラ(エクアドル)が、ラビットの選手だとは知らなかった。
「25kmでやめた選手がペースメーカーだと思っていました」
 26kmの給水付近から集団の先頭に立った諏訪は、27km付近で独走していたゲッラに追いついた。30kmでゲッラが立ち止まったのは、諏訪にとっては青天の霹靂だったに違いない。
「2時間12〜13分は予想していましたが、(優勝争いまでは予想していなかったので)誰がペースメーカーなのか、伝えていなかったんです」
 白水監督も、諏訪が予想以上の好走をしたことに舌を巻く。完璧なマラソン練習をしたわけではなかったのだ。
「ニューイヤー駅伝が終わってから合宿を組みましたが、40km走は1本だけ。30km走は3本、1000m×10本が2回、3000m×5本が1回……ここまで後半を粘れるとは思っていませんでした。(練習を)無茶苦茶やるのがいいのかどうなのか、今後の大きなヒントとなったと思います」

 30kmで独走になった諏訪は「このまま行っちゃったら申し訳ない」と感じていた。しかし、こうなったら行くしかない。レース前は「これ以上行ったら危ないと感じる前に引きなさい」と指示を出していた白水監督も、32km地点では「行け、行けーっ」と指示を出した。
 諏訪本人も腹をくくるしかなかった。残り12.195kmを1人で走る。
「1万5000mのペース走とかも練習でやっていましたが、全然感じが違いました。脚が動かなかったですね、筋肉が破裂しそうでした」
 優勝した武井隆次(エスビー食品)には36km過ぎで、続いてウアーディ(フランス)に37km手前で抜かれた。普通、トップを独走していた選手が脚が動かなくなって抜かれ始めたら、どんどん後続選手に抜かれ続け、20〜30番台に順位を落とす。完走できないケースも多く目にしてきた。
 しかし、諏訪はウアーディとキプロプ(ケニア)の外国2選手に食らいついた。35〜40kmを15分40秒にまとめ、ラスト2.195kmも6分55秒。本人の感覚はともかく、落ち込み幅をこれだけにとどめたのは、マラソン向きの選手といえる。

 白水監督も、諏訪のマラソンへの適性を感じていた。
「走法的にも体質的にも、マラソン向きです。性格的にも非常に粘っこい。駅伝で最初からガーっと突っ込んで走れるタイプじゃありません。本人には『お前は“ポスト実井”だよと言い続けてきましたが、やっと卵が孵化し始めました。まあ、若い頃からガンガンやる必要はないですから、身体ができる25歳くらいからと考えていました」
 あらためて説明の必要もないかもしれないが、“実井”とはアトランタ五輪代表だった実井謙二郎(日清食品)のことで、日清食品唯一のサブナイン・ランナーでもある。

 諏訪は群馬・桐生工高出身。5000mは14分55秒がベストで、インターハイには出場できなかった。東海大に進学し、箱根駅伝は2年4区(区間10番くらい、と本人)、3年、4年とエース区間の2区でともに区間5位。大学3年時の立川ハーフで1時間02分36秒をマークし、4年時の箱根ではエース区間の区間賞候補の1人にも挙げられていた。浜野健(トヨタ自動車)が順大OB初の2時間10分突破なら、諏訪も東海大OB初の2時間10分突破。
 駅伝向きでないと言われるが、1万mでも入社1年目(99年)に28分15秒45、昨年も28分27秒84をマークしている。ただし、選手権的な順位を要求されるレースでなく、記録会でのタイムなので、白水監督の言うようにペース変化に対応できるのかどうかは断定できない。

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