2017/3/4 びわ湖マラソン前日
30歳台の代表経験4選手に注目!
石川、佐々木のリオ五輪代表コンビに加え
仁川アジア大会代表だった
松村も代表入りに意欲
テグ世界陸上7位の
堀端は3年半ぶりのマラソン出場

 リオ五輪代表の佐々木悟(旭化成・31)と石川末廣(Honda・37)は記者会見時のコメントを記事にした。他のメディアでも取り上げられるだろう。寺田的では松村康平(MHPS・30)と堀端宏行(旭化成・30)の同学年2選手の走りにも注目したい。
 松村は2014年のアジア大会銀メダリストで自己記録は2時間08分09秒。堀端は2011年テグ世界陸上7位入賞選手で、自己記録は2時間08分24秒。13年モスクワ世界陸上でも連続代表となった。
 松村は有力候補だった15年北京世界陸上、16年リオ五輪で代表入りを逃したが、今大会で「2時間8分台で総合3位以内」と、ロンドン世界陸上代表入りを狙っている。堀端は14年2月に左ヒザを手術(腸脛靱帯)。一度は復帰したが、その後再度、手術をしている。今大会が途中棄権したモスクワ世界陸上以来、3年半ぶりのマラソン出場だ。

松村のマラソン全成績
回数 月日 大会 順位 日本人 記 録
1 2012 2.05 別大 4 1 2.11.18.
2 2013 3.03 びわ湖 7 4 2.10.12.
3 2014 2.23 東京 8 1 2.08.09.
4 2014 10.03 アジア大会 2 1 2.12.39.
5 2015 2.22 東京 25 16 2.16.08.
6 2016 2.28 東京 19 10 2.13.46.

堀端のマラソン全成績
回数 月日 大会 順位 日本人 記 録
1 2,008 2.17 東京 9 2.11.47.
2 2,009 3.22 東京 22 2.18.27.
3 2,010 8.29 北海道 20 2.26.55.
4 2,011 3.06 びわ湖 3 2.09.25.
5 2,011 9.04 世界選手権 7 2.11.52.
6 2,012 3.04 びわ湖 11 2.10.05.
7 2,012 12.02 福岡国際 2 2.08.24.
8 2,013 8.17 世界選手権 dnf dnf

 松村は、チームメイトの井上大仁(MHPS)が1週間前の東京マラソンで日本人トップ(2時間08分22秒)と快走したことに、影響を受けないわけがない。井上は山梨学院大の後輩でもある(6学年違い)。井上がLineで「一緒にロンドンに行きましょう」とメッセージを送ってきたという。
「刺激半分、プレッシャー半分ですね」
 複雑な思いがあることは、想像に難くない。
 びわ湖は2度目のマラソンで2時間10分12秒をマークし、トップランナーへのステップとした大会。1年後の14年東京で2時間8分台をマークして日本人トップとなり、アジア大会代表入りを決めた。
 3年後の今シーズンは、東京のハイペースに対応できるのは井上の方だという判断で、東京出場を後輩に譲って自身はびわ湖に回った。ニューイヤー駅伝でもエース区間の4区は、2年連続井上が走っている。プレッシャーのかかるポジションを井上に任せ、自身は肩の力を抜いて代表を狙える立場になった、はずだった。
「事前取材もほとんどなくて気楽だなと思っていたのですが、井上からだめ押しのLineが来ました」
 ポーカーフェイスで淡々と話す選手で、感情的なところは外に出さない選手である。明日の走りで刺激になったのか、プレッシャーになったのかがわかる。

 堀端は残念ながらまだ、代表復帰を狙うレベルに戻っていない。練習の距離走をチームメイトと行っても、堀端だけ後れてしまうという。かつては旭化成の歴代選手と比べても、40km走のタイムが高い方だった選手である。
 びわ湖出場は堀端の強い希望だった。
 2011年に世界陸上代表入りを決めたのもびわ湖なら、翌年、ロンドン五輪代表入りを逃したのもびわ湖だった。特に12年大会は、雨で低温という悪条件のなか、外国人選手を終盤で積極的に追ったことが裏目に出た。
 奇しくも今年のびわ湖は、“ロンドン”世界陸上の選考会であるが、西政幸監督は「3分ペースで行ったらゴールできない」と言う。
「状態が良くないから欠場しよう、というのでは中途半端なままです。仮に4月のマラソンにスライドしても、結果はそんなに変わらないと思う。2時間17分とか19分かかるかもしれませんが、一度マラソンをやり切って、リセットした方が前に進める」
 昨年30歳になった。まだまだ老け込む年齢ではないが、「体が変わる時期にブランクがあった。頭の中と噛み合っていくのに時間がかかる可能性もある」が、心肺機能は陸連医科学委員会も太鼓判を押す選手。
「トラックももう一度やって、しなやかさ、躍動感を取り戻させたい」

 世界陸上で入賞した堀端は、本来なら旭化成のエースとしてリオ五輪も狙うべき立場だった。堀端と入れ替わるように強くなったのが、14年びわ湖で初サブテンを達成し、15年福岡国際で2時間8分台の日本人トップとなってリオ五輪代表を決めた佐々木だった。佐々木は堀端の1学年上になる。
 堀端が松村に「佐々木さんが(旭化成のエースの立場を)背負ってくれているから」と漏らしたことがあったという。前日会見やカコミ取材からも、佐々木の落ち着きぶりが伝わってきた。日本人トップ候補の筆頭だろう。
 代表復帰を狙う力はあるが、プレッシャーは大きい立場にいる松村。代表争いのプレッシャーはないものの、是が非でも復活へのステップを踏みたい堀端。複雑な部分もあるが、強い思いを持ってびわ湖を走る2人の30歳。その走りに加え、レース中やレース後の表情にも注目したい。


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