2015/3/9 名古屋ウィメンズマラソン翌日
3年ぶり自己新の伊藤。新トレーニングの効果も翌日に実感
「まだまだ課題はあると思いました。でも、次につながるレースだったと思います」
男子日本人初の2時間6分台選手を育てた河野監督と目指すリオ五輪
レース翌日の9日朝、日本人2位(全体4位=2時間24分42秒の自己新)に入った伊藤舞(大塚製薬)が共同取材に応じ、前日の走りや河野匡監督とのトレーニングなどについて語った。
「昨日の結果には正直ホッとしています。(3年間)自己新が出せなかったですから。でも前田(彩里・ダイハツ)さんは私よりも速かったので、スッキリというわけではありません。まだまだ課題はあると思いました。でも、次につながるレースだったと思います」
今大会は展望記事(【視点3】今年は私がセンターに!)でも触れたように、良い状態と故障を繰り返してマラソンに臨んでいた。練習が継続できなかったことに対する不安はあったが、「ケガ明けの練習で集中できた」ことが自信になっていた。
故障が左側に続いたことで(昨年8月と12月)、河野監督からの提案も参考に、左右のバランスを整えることも目的に体幹の強化に取り組んだ。
「ヒザが内側に入ってしまう走りだったので、足の指先とヒザをそろえてのスクワットや、(相撲の)股割りの動きでおなかを引き締めたりしました」
もちろん、これまでの積み重ねや試行錯誤で作ってきたベースがあり、そこに新たな取り組みが加わってマラソンの結果として現れた。
「以前は速く走って自信をつけたくて、40km走を(強引に)やってしまったりして、練習で疲れてしまいました。練習したい気持ちと体が一致しないことも多かったのだと思います。それが今回は、継続できなかった不安もありましたが、そのとき確実にできることをして状態を上げられたのが良かった」
その結果、が3年ぶりの自己新となり、レース翌朝のダメージも、これまでのマラソンよりも「少ない」と感じている。
「いつもは腿や脛(すね)、足首などにダメージが来ますが、今回は腿とお尻に集中している。出て欲しくない前脛の張りが出ていないのが良いですね」
北京世界陸上代表に選ばれるかどうかは、3月11日の陸連理事会を待たないとわからない。2011年のテグ世界陸上代表になったときも、大阪国際女子で赤羽有紀子に敗れて2位となり、陸連の決定までどうなるかわからない状況だった。
「だから今回も、日本人トップになりたかったんです。もしも選ばれたら、前回のテグでは大会の雰囲気に飲まれてしまったので(22位。日本人5位)、今度はしっかりと力を出したいと思います。日の丸への思いがあるから、30歳になってもやっています。世界陸上に出られたら、オリンピックにつなげたいと思っているんです」
伊藤舞のマラソン全成績
回数 |
年 |
月日 |
大会 |
成績 |
日本人順位 |
記 録 |
1 |
2010 |
3.14 |
名古屋国際女子 |
4 |
3 |
2.29.13. |
2 |
2011 |
1.30 |
大阪国際女子 |
2 |
2 |
2.26.55. |
3 |
2011 |
8.27 |
世界選手権 |
22 |
5 |
2.35.16. |
4 |
2012 |
3.11 |
名古屋ウィメンズ |
5 |
4 |
2.25.26. |
5 |
2012 |
11.18 |
横浜国際女子 |
5 |
2 |
2.27.06. |
6 |
2013 |
4.21 |
ロンドン |
7 |
2 |
2.28.37. |
7 |
2013 |
8.25 |
北海道 |
3 |
3 |
2.32.54. |
8 |
2014 |
2.23 |
東京マラソン |
7 |
1 |
2.28.36. |
9 |
2014 |
4.13 |
ウィーン |
7 |
|
2.35.15. |
10 |
2015 |
3.08 |
名古屋ウィメンズ |
4 |
2 |
2.24.42. |
伊藤がリオ五輪代表となれば、大塚製薬としては2000年シドニー五輪の犬伏孝行(日本人初の2時間6分ランナー。現大塚製薬男子監督)に続き2人目のマラソン五輪代表となり、河野匡監督は史上3人目の、男女マラソン選手を五輪代表に育てた指導者となる。
「監督には本当にお世話になってきました。そのとき、そのときで私の心を見抜いて言葉をかけてくれます。今回も練習が継続できなかったことに不安がありましたが、『自信を持って走れる状態だ』と説いてくれた。(フィニッシュ後に)これからもまだ続きますが、『ありがとうございました』と言いました」
30代初マラソンで自己新記録に「まだまだ工夫することがある」と感じられた。大きくなった河野監督への信頼も、伊藤の手応えの1つだろう。
◆河野匡監督の語る伊藤とのトレーニング
「伊藤はそこまで素質がある選手ではありませんが、競技への姿勢は日本一だと思っています。(筑波大大学院出身で)自分が研究者っぽくなるところがありますが、伊藤は素直に受け容れてくれる。選手に納得してもらうために、(半ば)冗談めかして、こういうトレーニングに良いんじゃないか、と話すと、それを信じて一生懸命に取り組んでいます。(故障をした)今回も股割りのほかにも、三点倒立をコアトレーニングとして提案しました。そういった補強を距離走のあとにやったら、その後が楽になるよと話すと、僕が出張でいないときにも1人で取り組んでいる。そういう姿を見ると、自分も、もっとできることがないかと前向きに考えられます」
◆伊藤の語る河野監督とそのトレーニング
「大塚製薬に移籍してきて、どんどん記録を更新して、私には(河野監督の立案する練習が)合っているんだ思って、言われることをやってみようと思うようになりました。(名古屋ウィメンズマラソンに向けて取り入れた)股割りや三点倒立、遊び的な要素もあるトレーニングで、取り組みやすかったですね。私のことをよく見てくれていて、心を読んで、私の気持ちを当てる言葉をかけてくれます。今回も練習が中断して、名古屋に間に合わないと不安を感じていたとき、『舞の集中力と意欲があれば間に合うから』と言ってもらってスッキリしました。レース展開でも、あそこで付かれて嫌だっただろうとか、あそこで出たかったんだろう、と言い当ててくれる。私がわかりやすいんですかね(笑)」
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