2015/3/8 名古屋ウィメンズマラソン
ハイペースの中で……

 予定よりも速いペースで進んだマラソンになった。
 ペースメーカーが30kmまでを、5km毎16分55秒〜17分05秒で先導する設定だった。10秒の幅はあったものの、ペースメーカーの5km通過は16分49秒、10km通過は33分32秒(16分43秒)。10km以降は16分59秒、16分58秒と落ち着いたが、日本人3位の竹中理沙(資生堂)は、同2位の伊藤舞(大塚製薬)から3分27秒差があった。距離にすると約1kmである。結果的にこのペースを“利用できた”といえる日本選手は、前田彩里(ダイハツ)と伊藤の2人だけだった。

【1】初マラソンの竹中と野上が日本人3、4位と好走

 竹中と竹地志帆(ヤマダ電機)の初マラソン・コンビが先頭集団から離れたのは11km過ぎあたり。水口侑子(デンソー)と野上恵子(十八銀行)の29歳コンビは15km過ぎで、アジア大会代表の早川英里(TOTO)は17km過ぎに、10代日本最高記録を11月に出した岩出玲亜(ノーリツ)は19km付近で、そして初マラソンのスピードランナー小原怜(天満屋)も中間点過ぎに後れ始めた。
 結果的に長く先頭集団で走った小原(124位・3時間05分21秒)、岩出(8位・2時間29分16秒)、早川(10位・2時間30分21秒)よりも、比較的早めに後れた竹中(5位・2時間28分09秒)と野上(6位・2時間28分19秒)の方が上に来た。
 ただ、後れた地点と、どこまで体力的な限界に近いところで走ったかは、イコールではない。さらにいえば、序盤からハイペースで行く考え方と、後半に追い上げる考え方の両方があった方が良い、と個人的には考えている。

 日本人3位の竹中は初マラソンということと、順位よりも「2時間26分半」というタイムを目標だったので、早めに離れる決断ができた。
「前半が予定よりも速く、付けなくはなかったのですが、今できている練習では無理だと思って引いてしまったところがあって、自分のペースで押して行くことにしました。30km過ぎまでは練習の成果で余裕を持てていたのですが、後半でかなりバテてしまいました。後半はタイムを見ず、早くゴールすることだけを考えて走ったのですが、目標タイムから大きく後れてしまったので、かなり悔しいです」
 竹中本人は“引いてしまった”という言葉を使ったが、安養寺監督に確認すると、レース前から「16分台が続いたらつくのは難しいから、速いと感じたら自分のペースに切り換える」と、話し合っていたという。
 今大会はナショナル・チームに入ることが目標だった。2時間28分台ではどうなるかわからないが、次回と目されるリオ五輪選考レースまでにどれだけ練習ができるかで、次のマラソンのペースが決まる。

 初マラソンの野上恵子は「行けるところまで行こう」という気持ちで臨んだ。
「落ちたら1人になってしまいます。先頭集団で行った方が楽なんだろうなと思って走りました。後半で落ちることも想定して、前半でタイムを稼ごう、と。初マラソンなので2時間30分を切りたいと思っていました。最初にペースを聞いたときは5kmもつけないのでは? と思ったくらいですから、自分なりに頑張った方だと思います」
 目標を達成した野上だが、日本代表など高い目標を持って走ってきた選手ではない。想定よりも少し上のタイムで走ったことで、その気持ちがどうなるか。
 十八銀行の高木監督は「全然少ない練習で28分なので、2時間25分を切らせたい」と、希望を込めて話した。

【2】厳しい結果となった早川、水口、岩出

 早川英里は2012年に市民マラソンと同時開催となった名古屋ウィメンズマラソンで、3年連続結果を残して来た選手。記録は右肩上がりで、昨年は日本人2位となってアジア大会にも出場した。
 だが、今回は2時間30分21秒で10位と初めて落ち込んだ。
「今回が一番、前半の流れが速いレースでした。昨年は中間点が1時間12分半でしたから(今回は1時間11分08秒)。でも、それには対応したいと考えていましたから付こうと思ったのですが、付けませんでした。練習のベースは年を追って上がってきていますが、まだまだ力不足なのだと思います。スピードに対応していかないと、次が見えてきません」
 山本光宏コーチは「少し後ろから行ったら対応できたかもしれませんが、行かざるを得なかった。途中で1人になったのが難しかった」と、愛弟子をかばいつつも現在の力を認めていた。
 翌朝には早川と突っ込んだ話もして、課題としていた調整段階に、さらに工夫ができる部分もあると感じられたという。

 昨年の名古屋(14位・2時間31分39秒)に続いて2度目のマラソンとなった水口侑子だが、2時間41分27秒で29位という結果に終わった。10日ほど前に自信を見せていた若松誠監督は「僕は持てていたのですが、本人が自信を持てなかったようで…」と、いつもの快活な話しぶりにも無念の表情を隠せない。
「(15kmまで先頭集団で走ったことは)それで良かったのですが、(問題は)頭が良くて真面目すぎるところだけですね。もう少し物事を単純に、リラックスして考えてくれたら、と思います。会見でも有森(裕子)さんから、『練習ができたのになんでプラスの発言が出てこないの?』と指摘されました」
 しかし展望記事でも触れた気持ちの強さは、今回の失速でも失われなかった。フィニッシュ後に涙を見せた水口を、「泣くのだったら(競技を)やめたら?」と若松監督が突き放すと、きりっと前を向いた。
 取材中に若松監督が「次は、〇○マラソンで優勝するでしょう?」と水口に問いかけると、小さめの声ではあったが「優勝します!」と、芯の強さを感じさせる口調で答えた。

 岩出玲亜はレース直後、失敗の理由を問われても明確な答えを見つけられないようだった。序盤のハイペースではないか、という問いかけに対しても、即座に否定した。
「気にしなかったし、実際、速いとも思いませんでした」
 しかし、そう言った後に、次のように続けた。
「最初から心と体が、いまいち合っていない気がしました。上手く調整できなかったのか、自分でもよくわかりませんが、調子が良いときは心と体が一致して、呼吸と動きが連動していると感じられるのですが、そこが今日はバラバラでした。その原因がわかれば立て直せたと思うのですが」
 少し気になったという腹痛が、その原因だった可能性もあるが、岩出本人は「(原因が)わからないところが経験不足」と、その場で答えを決めることは避けた。
 唯一、良かったと思えるのは、30kmまでの5kmが18分56秒まで落ちていたのに、35kmまでは18分50秒に、40kmまでは18分26秒に上げられたこと。「30km以降が、今日のなかでは自分の走りに近かったと思います」
 初マラソンの横浜で10代日本最高をマーク。そのとき以上に「しっかりと作ってきたつもり」(岩出)だったが、結果につながらなかった。だが、それを早いうちに経験したことは必ず今後につながる。
「42.195kmが初マラソンの倍くらいに感じました。でも、めちゃくちゃキツイところもなく、めちゃくちゃ楽なところもなく終わってしまった感じです。横浜で感じられなかったマラソンの奥の深さを、今回気づくことができたことは良かったと思います。何が悪かったのか反省して、もう一度一からやりたい」
 20代初レースに誓いを立てた。

初マラソン歴代40傑
歴代順位 記録 選手名 所属 年月日 大会 着順 年齢
1 2.21.51. 坂本直子 天満屋 2003/1/26 大阪 3 22
2 2.23.11. 渋井陽子 三井海上 2001/1/28 大阪 1 21
3 2.23.30. 小崎まり ノーリツ 2003/1/26 大阪 5 27
4 2.24.19. 原 裕美子 京セラ 2005/3/13 名古屋 1 23
5 2.24.43. 加納由理 資生堂 2007/1/28 大阪 3 28
6 2.25.35. 野口みずき グローバリー 2002/3/10 名古屋 1 23
7 2.25.40. 赤羽有紀子 ホクレン 2009/1/25 大阪 2 29
8 2.25.51. 中村友梨香 天満屋 2008/3/9 名古屋 1 21
9 2.26.02. 小川清美 京セラ 2005/3/13 名古屋 5 23
10 2.26.05. 田中智美 第一生命 2014/3/9 名古屋 5 26
11 2.26.19. 尾崎好美 第一生命 2008/3/9 名古屋 2 26
12 2.26.26. 小鴨由水 ダイハツ 1992/1/26 大阪 1 20
13 2.26.27. 安部友恵 旭化成 1993/1/31 大阪 2 21
13 2.26.27. 鈴木博美 リクルート 1996/1/28 大阪 2 27
15 2.26.46. 前田彩里 佛教大 2014/1/26 大阪 4 22
16 2.26.54. 松岡範子 スズキ浜松AC 2011/4/17 ロンドン 16 31
17 2.26.55. 扇 まどか 十八銀行 2008/1/27 大阪 5 24
18 2.26.58. 永尾 薫 ユニバーサル 2011/2/20 横浜 4 21
19 2.27.02. 松野明美 ニコニコドー 1992/1/26 大阪 2 23
20 2.27.13. 坂田昌美 京セラ 2006/1/29 大阪 4 21
21 2.27.21. 岩出玲亜 ノーリツ 2014/11/16 横浜 3 19
22 2.27.22. 山崎智恵子 天満屋 2005/3/13 名古屋 6 27
23 2.27.32. 真木 和 ワコール 1996/3/10 名古屋 1 27
24 2.27.34. 木崎良子 ダイハツ 2010/1/31 大阪 6 24
25 2.27.42. 藤川亜希 ラララ 1999/1/31 大阪 7 20
26 2.27.44. 永山育美 デンソー 2001/3/11 名古屋 8 26
27 2.27.46. 森本 友 天満屋 2006/1/29 大阪 5 22
28 2.27.55. 麓 みどり デオデオ 2000/3/12 名古屋 4 28
29 2.27.58. 大山美樹 三井住友海上 2004/3/14 名古屋 4 24
30 2.28.09. 坂下奈穂美 三井海上 2001/3/11 名古屋 9 25
30 2.28.09. 竹中理沙 資生堂 2015/3/9 名古屋 5  
32 2.28.10. 田中めぐみ あさひ銀行 2002/3/10 名古屋 3 26
33 2.28.13. 藤永佳子 資生堂 2009/3/8 名古屋 1 27
34 2.28.14. 萩原梨咲 第一生命 2003/3/9 名古屋 2 20
35 2.28.19. 野上恵子 十八銀行 2015/3/9 名古屋 6 29
36 2.28.49. 樋口紀子 ワコール 2011/2/27 東京 2 25
37 2.28.50. 原 万里子 富士銀行 1995/11/19 東京 3 24
38 2.28.56. 吉田直美 リクルート 1995/11/19 東京 4 26
39 2.29.08. 城戸智恵子 キヤノンAC九州 2015/1/25 大阪 5 24
40 2.29.12. 堀江知佳 積水化学 2000/4/9 長野 4 19


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