2012/8/11 ロンドン五輪展望
9日目(8月11日)午前の部
男子50kmWに過去最強トリオ
北京五輪7位の山崎、テグ世界陸上6位の森岡、
そして“競歩エリート成長路線”先魁の谷井

 大会9日目午前の部に行われる種目は男子50kmWのみ。日本からは以下の3選手が出場する。

男子50kmW決勝:森岡紘一朗(富士通)
           :山崎勇喜(自衛隊体育学校)
           :谷井孝行(佐川急便)


 3人のフルエントリーは1964年の地元東京五輪、1992年のバルセロナ五輪に続き3回目。過去最強トリオと言っていいだろう。過去2回ではバルセロナの方が成績が良く、今村文男18位、園原健弘22位、小坂忠広24位だった。
 今回のトリオは、バルセロナの3人の成績を上回るのが最低目標だ。

 バルセロナ五輪トリオは当時、4時間切りの先陣争いを繰り広げた。1987年に4時間00分11秒を出した園原が3時間台一番乗りの最有力候補だったが、しばらく足踏みをしてしまった。その間に成長した今村が(3人の中では最年少)91年6月に3時間59分18秒を出したときは大ニュースとなった(陸上界的には)。
 今村の記録を91年11月に小坂が更新し、バルセロナ五輪のあった92年には園原が更新。93、94年には今村が更新したが、96年には小坂が更新。同年のアトランタ五輪は小坂しか出場できなかった。
 しかし、そこで奮起した今村が97年、98年と日本記録を更新。98年は日本人初の3時間50分突破を果たした。
 バルセロナ五輪のトリオは日本の50kmWを国際レベルに引き揚げたトリオだった。

 シドニー五輪まで頑張った今村の後を継ぎ、アテネ五輪から代表入りしたのが谷井と山崎で、森岡も北京の20kmWに出場。山崎は前回の北京五輪で7位入賞を果たした。世界陸上では今村が2度入賞していたが、五輪では競歩種目初の入賞だった。
 森岡は昨年の世界陸上で6位入賞、谷井も9位と入賞にあと1つと迫った。記録的にも山崎は3時間40分12秒と3時間30分台に迫っている。山崎とは少し開きがあるが谷井が日本歴代2位、森岡が日本歴代3位と歴代トップ3を占めている。

 山崎は大阪やベルリンの世界陸上で見せたように、世界を相手に臆せずトップを1人で歩ける選手。今回も独歩するかどうかはわからないが、先頭集団でレースを進めるだろう。
 森岡は先頭集団がハイペースになったときは(5km毎が21分とか)、後方でレースを進め、テグのように終盤で追い上げる歩きをするだろう。
 谷井は今年の日本選手権20kmWではかなり積極的に飛ばしていた。4月の日本選手権50kmWでは日本新ペースで歩いた山崎から、10km前に離れている。積極的に行く中にも、冷静な歩きをしそうだ。

 3人はそれぞれの立場で強い気持ちを持っている。
 山崎は故障による1年余りのブランクから復帰した。
 20kmWから距離を伸ばしてきた森岡は、順大の先輩である山崎との対決を心待ちにしていた。 Number 記事参照
 谷井は第1回世界ユースメダリストから始まり、各世代で日本代表になってきたエリートだが、実は挫折も多く経験している。過去最多の9人代表派遣の競歩 エリート選手成長のモデルケースとなった谷井への期待

 最強トリオで臨むロンドン五輪。バルセロナ五輪トリオの成績を上回るのは当然で、競歩初のメダル、あるいは初の2人入賞も目標にしていいのではないか。


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