2011/11/13 中部実業団対抗駅伝
The Last GERO記念記事
トヨタ自動車が尾田、高林抜きでも圧勝
下呂開催最後の区間で宮脇が区間新!
中部実業団対抗駅伝下呂開催の最後を、20歳の宮脇千博(トヨタ自動車)が区間新で飾った。7区10.4kmで29分18秒。浜野健(同)が9年前に出した29分26秒を更新した。
「走る前は意識していなかったのですが、途中、監督から檄が飛んできました。『区間記録を更新できるぞ』と。そこから意識しましたけど、最後まで出せるかどうかわかりませんでした。ゴールまで全力で行くことしか考えなかったですね。浜野先輩の区間記録は何年も残っていたものですし、偉大な先輩です。それを破ることができて嬉しいです」
浜野は中部では、ある意味特別な存在だ。37歳の現在もばりばりの現役であり(室伏広治と同学年)、1万mの28分08秒23、マラソンの2時間09分18秒という記録以上に存在感がある。今大会では1区(2003年)、5区(05年)、7区(02年)の区間記録を持つ。
当時の浜野を知る安永淳一コーチは次のように言う。
「展開が違います。浜野が記録を出したときは後ろから追う展開でしたが、今日の宮脇は独走で出しました。力があるな、と率直に思います」
前述のように、宮脇自身は区間新を狙っていたわけではない。独走でタスキを受け取ったこともあり「抑えていこうと」と思っていた。それが走り出したら「体がけっこう動いた」。1kmの入りは2分43秒とかなりのスピード。5kmは14分12秒の通過だった。10km通過は時計を押せなかったが、「そのペースを落とさずに行って後半も粘った」という。
しかし、下り勾配のコースの区間である。10月に1万mで28分01秒00を出した(こちらの記事参照)宮脇の力からすると、力を完全に出し切ったタイムではない。「あのときは練習が完璧でした。今回はそこまでではありませんでしたが、体が動いたということです」。
今月末にも1万mレースを予定しているが、そこでどこまで状態を上げてくるか。「これからの練習次第なのでわかりませんが、チャンスがあればA標準(27分45秒00)も狙いたいと思います」。グラウンドコンディションが良ければ、可能性はある。そう思わせる勢いが入社2年目の宮脇にはある。
冒頭で紹介したように中部実業団対抗駅伝の岐阜県下呂市での開催は、今回が最後になる。1986年から26回の歴史を刻んだが、来年からは愛知県田原市に場所を移す。その最後の大会の最後の区間で宮脇が区間新の快走を見せたことは、何か暗示的なものを感じさせる。
宮脇は岐阜の中京高出身で下呂は地元ともいえる。来年から開催の田原はトヨタ自動車が拠点とする街だ。そして、下呂のコースを象徴する選手である浜野の記録を、新時代の顔となるだろう宮脇が破った。
「自分は2年しか走っていませんが、何年も歴史を重ねてきた舞台で優勝のテープを切れて嬉しかったです」
下呂から田原へ。宮脇の走りが時代の変換点を告げていた。
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