2008/6/25
日本選手権2010・日付別展望
第2日・6月5日(土) 男子編
高平、史上初の5回目Vなるか
ハンマー投は野口次第で3選手70mの快挙


●200 m
 大阪GPは高平慎士が日本人トップの3位。20秒78(±0)に「遅いです」と悔しさを顕わにした。初戦の順大競技会100 mで右大腿内側を痛めた。「練習を休んだケガは初めて。単純に練習不足」。東日本実業団と上海国際で調子を上げ、5回目の優勝を目指す。
 静岡国際日本人1位で、大阪GPでも0.02秒差と迫った藤光が打倒・高平の最右翼。大阪GP同3位の安孫子充裕、静岡国際同2位の小林雄一の学生勢、好調が伝えられる長谷川充も要注意。
 静岡国際の予選で20秒58のジュニア歴代3位と快走した飯塚翔太は、連戦に不安があることと、世界ジュニアを優先するために日本選手権は出場しない。

=陸上競技マガジン6月号記事。以下同

 高平慎士は東日本実業団で20秒93(−0.3)、翌週の上海ダイヤモンドリーグでは21秒12(-0.8・7位)と、故障からの“戻し”に苦しんでいる節がある。ただ、僅差の勝負になっても勝ち続けてきたのが高平。本命から外すことはできない。勝てば史上最多の5回目の優勝となる。
 藤光謙司は北陸実業団で20秒74(+2.0)。楽に行ってこのタイムなら強い。北陸実業団では長谷川充が20秒91で2位。世界選手権代表コンビへの“遠慮”がなくなれば面白い。
 関東インカレは日本選手権に出ない飯塚翔太が20秒76(−0.5)で優勝。2位の安孫子充裕は21秒02と0.26秒離された。谷川聡コーチによれば安孫子選手は動きの改善に取り組んでいるところ。
「タテの動きをやっていますが、本当は横(前後)の動きが良くて速い選手。肩も腰もグリグリ回して前半からスピードが出ていますが、後半まで持たない。タテをやることで動きが大きくなり、後半もスピードが維持できます。ただ、スタートは遅くなっています。今後は横(前後)の動き、プッシュとウイングを上手く融合させたいのですが、日本選手権までにできるかどうかはわかりません」
 昨年までの安孫子なら、彼が前半をリードするところ。コーナーの出口から直線で高平がリードを奪い、直線の後半で藤光が追い込むのがパターンだろう。
 それが高平は準備不足なのに対し、藤光が昨年よりも力がついている。そして前半型から変身中の安孫子。今年の200 mは見る側の先入観をなくしておかないと、レース展開を把握できなくなるかもしれない。

●1500m
 金栗記念は日本記録保持者の小林史和が3分41秒88で日本人トップ(2位)。兵庫リレーカーニバルは上野裕一郎が3分42秒95で日本人トップ(2位)。小林に0.27秒差で競り勝った。大阪GPでは上野が3分40秒83の自己新で日本人トップの3位。
 日本選手権は金曜日が1500m予選で土曜日が決勝、日曜日が5000m。上野は「1500mに刺激、刺激の位置づけで出て、勝てたらラッキー」と話すが、現時点では本命といえる。
 小林とすれば、上野が経験したことのない3分30秒台のペースに持ち込むことができればチャンスが生まれる。大阪GP日本人2位の村上康則、兵庫で日本人3位の田子康宏らはロングスパートに勝機を見出せるか。


 優勝者に予想した上野裕一郎はその後、レースに出場していない。
 小林史和は中部実業団で800mと1500mの2冠。1500mは3分47秒台。
 関西実業団で渡辺和也が復帰したが3分49秒台で3位。同じ3分49秒台で、3000mSCが専門の松本葵が優勝しているが、日本選手権にはエントリーしていない。
 九州実業団優勝の三津谷祐も同様だ。
 動きがあったのが東日本実業団で、高谷将弘が日本人1位(4位)に。3分43秒45で村上康則を抑えた。小林、村上と同格と見て良いだろう。
 いずれにせよ上野のラストを押さえ込むには、他の有力選手が交互に先頭に立つなどしないと難しいかもしれない。

●110 mH
 ここ数年内藤真人、田野中輔、大橋祐二が3強を形成していた種目。それが織田記念では田野中が13秒79で快勝し、2位に古川裕太郎、3位に内藤、4位にモーゼス夢、5位に大橋と勢力図が変わった。大阪GPも13秒73(−0.4)で日本人トップだった31歳の田野中が、日本選手権でも本命だろう。
 古川は実業団3年目の選手で、08、09年と13秒79を連発。昨年の日本インカレ優勝のモーゼスは、大阪GPで日本人2位。他にも日本選手権前回2位の首藤貴之、昨年の国体優勝の西澤真徳ら新しい力が台頭している。
 だが、内藤も北京五輪以後悩まされたアキレス腱痛から回復。大橋も3月の故障から「驚異的な回復」(谷川聡コーチ)。激戦予想だ。


 優勝予想は田野中輔で変わらないが、東日本実業団の決勝を棄権(大事をとっただけと思われる)。その東日本実業団では、長らくアキレス腱痛に苦しめられていた内藤真人が久しぶりの優勝を飾った。
 13秒80(+2.4)とタイム的にはいまひとつだが、同じ13秒8台だった隈元康太や大橋祐二に競り勝ったのは明るい材料。新しい治療法が合っていたようで(内藤選手ブログ参照)、日本選手権ではさらに良くなっているだろう。
 田野中も13秒6台前半くらいを出さないと勝てないかもしれない。
 関西実業団はモーゼス夢が13秒80(+1.4)、中部実業団は古川裕太郎が13秒85(+2.3)で順当勝ち。ニューフェイスとしては、関東インカレを13秒84(−0.3)で制した川内裕太(国武大)がいる。
 田野中、内藤の代表常連コンビに割って入れるかどうか。

●400 mH
 為末大が5月中旬に、北京五輪以来のレースに復帰するプランがある。練習では好感触を得ているようだ。成迫健児は2月に腰を痛めてハードル練習不足。出雲の300 m(33秒71)や静岡国際の400 m(47秒01)で徐々に仕上げている。
 静岡国際は3組の今関雄太が優勝したが、風も影響したのかタイムは50秒09。1組の秋本真吾が2位、3組の小池崇之が3位。昨年の世界選手権準決勝進出の吉田和晃は、研修による練習不足もあり4位にとどまった。
 大阪GPでは小池が49秒42の好記録で日本人1位。今関が49秒77、岸本が49秒95で続いた。現時点では小池が一歩リードだが、2強の復帰次第で様相は変わってくる。

 為末大の復帰は間に合わなかったが、2強の1人である成迫健児が東日本実業団で今季初400 mHに出場。優勝したが49秒86にとどまり、小池崇之に0.33秒差と迫られた。
「後半に入ってリズムがわからなくなってしまいました。全体を通じてカツカツでしたね」
 冬期は腰痛の影響もあってハードルや速い動きよりも、長めの距離で追い込んできた。前半でいっぱいになってしまうのは「明らかにハードル練習とスピード練習不足」だという。「スピードをやらないと噛み合ってくれません」
 ただ、東日本実業団はまったく調整せず「(400 mも含めて)4本走ること」が出場の目的だった。「次につながると思う」と、自身に言い聞かせるように話していたが…。
 成迫に対抗できる一番手と見られていたのが、昨年の世界選手権で準決勝に進出した吉田和晃。ところが、新入社員研修などもあり出遅れている。静岡国際、大阪GPと50秒が切れず、調子が上がってくると思われた関西実業団も50秒17にとどまった。ただ、河北尚広には競り勝っているので、風などの条件が悪くて50秒を切れなかった可能性もある。
 いずれにせよ、為末不在なら前半は成迫がリードしそうだ。それを追うのが同じ“前半13歩”の吉田か。しかし、“前半14歩”の小池も東日本実業団では成迫からそれほど遅れていなかった。
 成迫のハードルとスピード練習がしっかりとできていなかったら、後半で小池や今関雄太に逆転される可能性も出てくる。


●3000mSC
 日本記録保持者で2001年以降の国際大会代表を続けてきた岩水嘉孝が、マラソン転向も視野に入れ、今年は3000mSCに出場しない。
 岩水に続く存在だった梅枝裕吉は、春先はアメリカで2戦を消化。ペースに恵まれず8分53秒10と8分39秒02だったが、外国選手と競り合った経験は生かされそうだ。
 兵庫リレーカーニバルでは佐々木徹也が8分48秒70で優勝し、山下洸が2位とニューフェイスが上位を占めた。一方、昨年の日本選手権2位で国体優勝の松浦貴之は12位、日本インカレ4連覇の菊池敦郎は7位と低迷している。岩水がいなくなったチャンスを生かす選手が誰か。そこが最大の注目点だが、レベル低下は避けたい。

 地区実業団でタイムが良かったのが関西。篠藤淳が8分38秒49で優勝し、新人の松本葵が0.05秒差の2位。梅枝がアメリカ遠征で出した記録を上回り、今季日本1、2位のパフォーマンスに。
 故障(3月前半にひざ)の影響でシーズンインを遅らせていた菊池昌寿(富士通)が、東日本実業団に8分41秒56で優勝。手元の計時で2分53秒、5分51秒の通過で、2000mからスパート。最後を1000mを2分50秒でカバーして、篠浦辰徳に7秒近い差をつけた。
「日本選手権は優勝しかありません。記録はついてくるもの。勝ってアジア大会の選考に入れれば。岩水(嘉孝)さんがいませんから、狙っていかないと怒られます」
 菊池が富士通の後輩なら、梅枝裕吉は同じ東海地区の先輩として、「岩水さんは高校時代から憧れていた方」と話していたことがある。中部実業団は8分45秒台できっちりと勝った。
 そして、今季はまだぱっとしていないが、日本インカレ4連勝の菊池敦郎は、岩水の順大の後輩にあたる。中部実業団ではNTNの先輩である梅枝に10秒差をつけられているが、どこまで状態を上げてくるか。


●棒高跳
 澤野大地が織田記念に5m70で優勝。5m40から跳び始めて10cm刻みでバーを上げ、すべて1回目でクリアした。5m80の3本目も惜しい跳躍で「あの助走が1本目からできれば」と、5年ぶりの5m80台に手応えを得た。
 助走が無意識でも安定すれば、空中動作をコントロールしやすくなる。日本記録を更新し続けた03〜05年までとは違ったアプローチになっている。5m80台は、夢の6mへの挑戦が再開することも意味している。
 2位争いは織田記念で5m50の自己タイを跳んだ笹瀬弘樹が一歩リード。だが、織田記念記録なしの荻田大樹も、5月8日に5m50に成功した。昨年の世界選手権代表の鈴木崇文は織田記念5m20と出遅れている。

 東日本実業団で鈴木崇文が5m40をクリア。記事にもしたように、冬期のケガで出遅れていたが、5月に入って助走の踏み切り前5〜6歩が走れるようになってきたという。
 ケガの間に行った筋力トレーニングの成果か、硬いポールも使えるようになってきた。
 関東インカレは雨の中という棒高跳にとってはかなりの悪コンディションとなり、笹瀬弘樹の優勝記録は5m20にとどまった。
 澤野が安定してきただけに優勝の確率は高い。若手トリオとしてはとにかく自己記録を更新していって、その結果がどうなるかにかけることになる。


●走幅跳
 2007年は荒川大輔が優勝し、08年は菅井洋平が優勝。そして昨年は8m00の同記録で荒川1位、菅井2位。今季も2人の優勝争いか。
 安定しているのは菅井で、兵庫リレーカーニバルに8m00で優勝すると、大阪GPでも日本人トップ。兵庫では「8m10くらいは行きたかった」と、控えめな表現にも強い気持ちを感じさせた。
 荒川は兵庫3位で大阪GPでも菅井に12cm差をつけられた。ただ、菅井が1.2mの追い風だったのに対し荒川は1.2mの向かい風。昨年も春季GPではよくなかったが日本選手権に合わせてきた。
 2人以外で今季7m80を超えているのは、兵庫2位の猿山力也だけと寂しい状況。


 東日本実業団の菅井洋平は7m76(+1.9)と記録的にはいまひとつだったが、きっちりと優勝した。2位は7m70(+1.4)の猿山力也で、思い切った助走が特徴だが、兵庫の2位に続いて安定感が出てきた。7m66(+1.6)で3位の志鎌秀昭もきっかけさえつかめば大きく伸びそうな感じがする。
 品田直宏は中部実業団で7m58(+0.8)。本人ブログによるとシーズンイン前は最後の4歩のストライドに着目して助走をしようとしていましたが、日本選手権直前には何も意識しないで走るという考え方にしているようです。

●ハンマー投
 室伏広治が大阪GPで77m86で3位。海外のトップ選手と優勝争いを演じた。「練習投てきで感覚的なズレ」があり、1投目も73m74にとどまった。だが「1、2投目で今日の感触がわかって、これなら今の力を出し切れる」と、3投目以降で77m前後の投てきを連発した。国内に敵は見当たらず、日本選手権16連勝は間違いなさそうだ。
 静岡国際では土井宏昭が70m14を投げた。室伏には勝てないが(8年連続2位)、アジアでの活躍をモチベーションにしている。「アジア大会代表になり、昨年のアジア選手権で負けた中国人選手に負けないようにしたい」
 昨年69m82を投げた野口裕史が、今季も67〜68m台を出している。大台突端なるか。


 東日本実業団は土井宏昭が69m26で優勝。2位の野口裕史が68m50と今季3回目の68mオーバー。シーズン初めのアベレージとしては過去最高だという。しかし、冬期トレーニングは例年よりも長くしているという。過去に4、5月によくても6月に記録を落とすことが多かった。「これまでは小さい試合でもいいと思っていましたが、70mは日本選手権で投げたい」という理由からだ。
 動き的には「スタンスを狭くして進みやすくしている」と言う。「スタンスを大きくして右に乗ってしまうと進みにくい」
 野口が日本選手権で70mを投げれば自身初。と同時に、日本選手3人が70mを投げる初めての大会になる可能性も高い。


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