2009/9/23 スーパー陸上
村上、公約の“ベルリンの再現”を実行
試技展開の共通点と相違点


 村上幸史(スズキ)が82m41で2位。銅メダルのベルリン世界選手権と同じ82m台のアーチを架け、「ベルリンの再現をする」という公約を実現した。
 試技展開(シリーズ)もベルリンに似たものになった。
 1回目は75m24。ベルリンは76m01。
「ベルリンと同じで失敗しました」と村上。
 3回目に82m41。ベルリンでは2回目に82m97。回数に違いはあるが、前半の3投までにハイレベルの記録を残すという、今年のテーマに沿った投げを実現した。
 そして4、5回目をパスして6回目に臨んだのもベルリンと同じ。
 6回目は80m21。ベルリンでも77m90で記録を伸ばせなかった。

 違いは2回目の記録で、ベルリンでは前述のように82m97。「2回目に投げられなかったら3回目も投げられない」という決意で、結果的にメダルを決める記録を残した。それに対してスーパー陸上は79m40で、「2投目は完全に失敗でした」と村上。
 原因はプレッシャーだったようだ。「僕の性格上、プレッシャーをかけられた方がしっかりとやれる」と前日会見では強気に話していたが、スーパー陸上の競技後には「ベルリン以上の試合をすると決めていたことでプレッシャーがあった」と本音を漏らした。
 しかし、失敗でも79mまで伸びたことが村上に少しの余裕を与え、3投目の82m41につながった。ウィルッカラ(フィンランド)の5回目の82m60で19cmの逆転を許したが、その記録で“公約”は果たしたといえる。

 収穫は6投目の“違い”だった。前述のように記録を伸ばせなかったのはベルリンと同じだが、課題である“高さ”が出ていた。ただ、高さは出ても穂先が上を向き、後尾が下を向いたままやりが飛んでいった。穂先が風を切っていく軌跡ではなく、やりの腹の部分が抵抗を受ける飛び方。それでも80mを越えたのは評価できた。
「あれが3投目くらいに出て、あの高さでライナー性の軌跡の投げができれば、僕の見ている記録(85m)が出たかもしれません」

 しかし、単純によかった、悪かったと色分けできないのがスポーツである。スーパー陸上でベルリンよりも感触が悪かった点もあった。
「安定感は全体的に上がってきたと思います。体の感覚ともマッチしていて、今日は技術もそれなりでした。ただ、ベルリンではもっと弾くイメージがありました。今日の投てきで、その上でそれができるようになれば、ビックリする記録が出ると思います」
 大会プログラムにも記してあったように、村上は完成されたメダリストではなく、成長するメダリストであることを実証した。


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