2009/6/14 日本学生個人選手権3日目
最終日の大会新3種目は全員がオーバー22選手
男女やり投優勝の富山大&弘前大など
地方勢が活躍

 最終日のキーワードは“地方勢”と“オーバー22”だったような気がする。
 大会新が出た種目は男子では3000mSCと砲丸投、それと女子100 mHの計3種目。3000mSCは東北福祉大M1の冠木雅守が8分58秒79。レベルが高いとはいえないが、(関東以外の)地方勢にとってこの種目は狙い目でもある。そこできっちりと結果を出した。
 女子100 mHの城下麗奈(青学大4年)は13秒42の関東学生新。
 男子砲丸投は織田記念で18mの大台に乗せた山田壮太郎(法大4年)が17m52で優勝。「パワーポジションの切り返しのところで左に乗り切らないので、右が上がってこなかった」と不満を口にした。それでもセカンド記録タイを投げるのだから、底力は確実にアップしている。

 3人に共通しているのは今年で23歳以上となる点。城下は今年で学生5年目で、山田は6年目。授業料などの出費を負ってまで学生(院生)でいるということは、それなりの覚悟を伴っている。
 山田は留年の理由を「授業に出なかっただけです」と言うが、現在の目標は日本記録や19mを投げ、「砲丸投でも世界に行くこと」だ。来年は実業団チーム入りを目指している。遠回りした2年間は、陸上競技中心の生活を送ることに結びついている(城下に関してはこちらの記事を参照)。
 山田と城下は関東インカレには出場していない。山田の場合は出場回数が4回までと制限されていたからだが、「練習を追い込む時期にできました。ちょうど良かった」と意に介していない。城下は100 mHに好選手が揃う部内のことを考えて、出場を辞退した。2人とも山田が言うように、その分、春季GPのあとにまとまった練習期間をとることができ、日本選手権へのテスト試合として今大会を位置づけることができた。

 冠木が優勝した3000mSCは“関東勢が出場しにくい”種目で、2位に大体大の中津匡嗣、3位には静岡大の鈴木慎が続いた。中盤まで独走したのも、神戸大の選手。
 最終日では男子やり投も堀田顕生(富山大)が68m28で優勝し、武長央幸(金沢大)が68m06で3位。400 mHの佐々木秀(東北福祉大)、110 mHの西澤真徳(福岡大)、女子では200 mの田中千智(福岡大)、走幅跳の佐藤芳美(福岡大)、やり投の遠藤和加(弘前大)が、関東勢以外で優勝を果たした。
 昨年までの傾向を細かくチェックしたわけではないが、今大会が全般的に関東勢よりも地方勢の活躍が目立った(東海大跳躍ブロックや国士大投てきブロック、中大女子は力を入れていたが)。
「学連というよりも陸上界全体の日程に影響されました。トップ選手の多くは2週間後の日本選手権のことを考え、苦渋の選択になったと思います。それと地区インカレで調整をしないといけないのが関東で、ここに合わせるのが難しかった点も挙げられます」

 実際、地区インカレよりも調子を上げてきた地方勢が目立った。
 男子400 mHの佐々木の優勝記録は50秒94で、地区インカレの記録を2秒近く短縮。男子三段跳優勝の斉藤大輔(岩手大)は地区インカレよりも78cm記録を伸ばす15m93だった。記録だけで調子を測れるものではないが、その傾向はあったといえそうだ。
 内容も評価された選手も多かった。女子やり投の1・2位は「日本インカレでも活躍しそう」と、関東の名門大学の投てきコーチは警戒する。女子走幅跳2位の角山美穂(岩手大)は、ファウルだったが6m10以上の跳躍があったと関係者が話していた。そして、投てきで7人の入賞者を出した九共大勢も存在感を示した。
「チャンピオンシップとしては物足りないが、参加標準記録を下げて活性化を期待した部分の目標は達成されたと思います」(尾縣強化委員長)
 関東勢が出なかったことをどうこう言うよりも、地方勢にとって格好の目標となったことで有益な大会となった。


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