2008/9/23 スーパー陸上
室伏、最終6投目で逆転V!
「技術が上回った」の意味するところは?

 大会MVPがあるとしたら、今年は間違いなく室伏広治(ミズノ)だろう。
 1投目の77m49でトップに立つと、2投目に79m41、3投目に80m08とリードを広げる。4投目に試技順が先のパルシュ(ハンガリー)に80m67で逆転されたが、自身も80m20と記録を伸ばす。そして、最終6投目に81m02で再逆転勝利を収めた。
 北京五輪金メダリストのコズムス(スロベニア)は直後のワールド・アスレティック・ファイナルでも優勝したが、今回は78m59で3位。2位のパルシュは北京五輪4位だが、2・3位のベラルーシ2選手は禁止薬物の反応が出ていて、いずれは銀メダルに繰り上がる見込み。スーパー陸上は現在の世界トップ3が揃った大会だった。
 優勝記録の81m02は大会記録でもシーズンベストでもない。だが、世界レベルで戦い、きっちりと勝つ。それができるのは日本の陸上界で室伏をおいて他にいない。

「最後の試合の最後の投てきで、技術的に良い投てきができました。(昨日の会見は風邪でキャンセルしたが)風邪は治りかけている。練習はできていませんでしたが、技術がそれを上回ったと思う」
 北京五輪では前半の3投で80m71を投げていたが、後半の3投は記録を伸ばせず、投てき後に首を振るシーンが目立った。ハンマー投チャレンジカップの記事でも紹介したが、まずは安定した記録を残すのが室伏のやり方。
 スーパー陸上の何投目までがそのやり方だったのかはわからないが、5投目は明らかに失敗スロー。ちょっと冒険をした投げ方だったのではないか。直後の6投目では、それまでよりも1mの伸びがあった。室伏自身はどう技術的に変えたかは話さないが、北京五輪では上手くいかなかった試合中の技術変更が、スーパー陸上では成功した。

 専任コーチである室伏重信氏は、次のように評価した。
「80mを越えたあと、81mまで行った。4月から変えてきた動きがまだ完全ではないが、良い方向に行っている。この冬を上手くやっていけばさらに良くなる。今までにないレベルの高い動きだ」
 この時期の試合の順位は重要ではないと重信氏は言うが、室伏の技術を追求するこの姿勢が、世界のトップ3が会した試合で勝利を手にする結果となった。


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