2008/7/31 為末帰国
「ぎりぎり合格点」だったヨーロッパでの走りと
“原・為末”が期待できる雰囲気

 為末大(APF)が、よりいっそうの“本能モード”に入る。
 31日の11時過ぎにヨーロッパ遠征(ロンドン8位・51秒36、モナコ7位・49秒51)から帰国した為末は、「できれば48秒台を出したかったのですが、ぎりぎり合格点」と振り返った上で、今後は“原(げん)・為末”(陸マガ8月号記事参照)の特徴を出すために北京五輪本番までを過ごそうと計画している。

 日本選手権の際に「腰の位置を一段下げる走り」をして成功した。その後も、その走りを意識しているのかを質問すると、次のような答えが返ってきた。
「細かいことを言えば、そういう感じです。でも、あんまり技術的な変化がどうこうと、気にはしていません。今は、朝起きて、脚の張りがどうかとかを気にしています」
 細かい部分よりも大きな部分を気にし始めているわけである。

 今後は「強い練習を3〜4日後と、出発前日の2日やります。あとは体調を見ながら」という予定だが、生活全般としては「何もしないのが一番」だと言う。
「ぼけっとして、色んなものを貯め込みます。弓を振り絞れるだけ絞る感じでしょうか。朝原さんに言わせると、試合前の僕はボーっとするクセがあるみたいなんです。何かを外に発信したがるときと、勝負に没頭するときの差が大きいと」
 そういうときの方が結果が出ているのか? という問いには次のように答えた。
「そうですね。こもって我を忘れていくこともあります。実際はレースだけなのですが。極端に言うと自分でレースをしている感じがしないときがあって、(そういうときに)あり得ない結果が出ています。昔はそれを能動的にコントロールしようと思っていましたが、どうも、そうはできないようですから。日本選手権のときはホント、引きこもりでした」

 今季は400 mHの世界情勢もレベルの高くない混戦模様で、為末に追い風となっている。47秒台はクレメント(米国)だけ。ヨーロッパで2試合しても、前半からハイペースで行く選手は見あたらず、モナコでは6〜8台目までトップを維持できた。
「変な奴がヒョコっとか勝つかもしれない。1位と8位の差がないんじゃないかと思うので、僕の特徴が有利になる」
 為末自身が言うように、“原(げん)・為末”は能動的に出せるものではないが、期待できそうな雰囲気は徐々に高まっている。


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