2005/11/6
全日本大学駅伝ちょっとした企画
「箱根駅伝は何強?」

A順大
2枚看板不在で14位に低迷。
1区の1年生・小野が区間18位と出遅れ、
6区以降でも4分の誤算。
“名のある選手”軍団は箱根までに立て直せるか?

 レース前日に「明日は我慢のレースになりますが、とにかく小野ですよ。1区次第ですね」と話していた順大・仲村明監督。懸念されたその1区が、悪い方向に出てしまった。1年生ながら今季5000mで13分台をマークしている小野裕幸だが、区間18位と出遅れてしまったのだ。松岡佑起(2年)と今井正人(3年)。トラックと駅伝で学生を代表する2枚看板を欠いた順大としては、1区で出遅れると挽回が難しくなる。その責任は本人が痛感している様子だったという。
「小野には10位くらいでいいよ、と言ってありました。実際、区間10位とは50秒差、11位とは40秒差ですから、大ブレーキというほどでもない。タスキを受けた2区の(佐藤)秀和が10位くらいに上がれる位置でした」
 自身も1万m高校記録保持者として順大に入学し、1年時の箱根駅伝では指導陣の“気遣い”もあって6区で区間2位と好走できた。それがなかったら、世界選手権代表(3000mSC)にまで成長した“選手・仲村明”のその後はなかったと言う(詳細は「箱根駅伝(B・B MOOK)」参照)。そういった経験も踏まえてのことか、仲村監督は小野をかばった。

 2区の佐藤秀和(1年)も後半が伸びずに区間8位。仙台育英高の後輩からタスキを受けた3区・清野純一(3年)も同じく区間8位。4区の松瀬元太(3年)も区間7位だったが唯一、レース内容的にはよかったという。山梨学院大など3チームの集団を引っ張り、いったんその集団から落ちてしまったが、我慢をして最後にはひっくり返して5区に中継した(15位→12位)。
 しかし、6区の長門俊介(3年)が流れを悪くした。4秒前に中継所を出た神奈川大を逆転して引き離したが、追いつかれて並走になり、7区への中継では40秒も引き離された。その後の7区、8区も大幅に設定タイムを下回った。
「6・7・8区で4分悪かった。下位の流れだったのは理由にしてはいけません。実際、大東大は持ち直しています。流れに乗った中なら走れるのでしょうが、そうでないと走れない。力がないということです。仮に4分よければ6位になれたわけで、そこまで行けていたら箱根にも見通しが得られました。この状態では、今井と松岡が戻ってきても、どうでしょうか」
 どんな状況でも優勝を目指すことに変わりはないが、この日の結果ではさすがに、箱根は大丈夫とは言えなかっただろう。

 その代わりに、「荒療治が必要かな」と仲村監督はつぶやいた。
 しかし、状態が悪いときに、現実とかけ離れた高いレベルの練習をしても、逆効果になることも多い。もちろん、タイム設定を高くすることが有効な選手もいるし、走る量を多くすべき選手もいるだろう。その辺は選手個々に違ってくるところもあり、荒療治という言葉が持っているイメージとすべてが一致するとは限らない。メンタル的な部分の荒療治もある。
 順大の箱根駅伝にピークを持っていく上手さには、定評がある。最も印象的だったのが、駒大と順大、いわゆる紫紺対決の幕開きとなった98年度で、全日本で8位だった順大が箱根で優勝を飾った。当時は澤木啓祐前監督の時代だが、仲村監督が指揮を引き継いだ以降では、全日本に出られなかった03年度がそうだった。有望な1年生(現3年生)が多数いたとはいえ、シード落ちの可能性すら指摘される状態。箱根では1区で17位と出遅れ、往路は12位。そこから復路で5位にまで順位を上げてきた。
 最後の2カ月でチームの状態を上げるノウハウは蓄積されている。

 むしろ、気になったのは2枚看板がシーズン後半、試合でまったく実績を残していないこと。11月後半から12月前半で、ハーフマラソンや1万mの記録会に出場する大学が多いなか、順大は全日本大学駅伝後はレースに出ない。故障した選手自身というよりも、チームへの影響を考えたとき、2枚看板が走れるという何かしらの結果を残した方がいいのではないか。2人とも一度回復してからもう一度、故障を繰り返したのだ。なおさらそう感じられた。
 しかし、この点も順大陣営には自信があるようだ。全日本のレース前日、シーズンの流れが悪くて箱根を走れた選手がいたのか仲村監督に質問すると、「順大にはそういう選手も多いですよ」と即答した。古くは岩佐吉章(5000mで13分43秒02の順大記録保持者)、最近では03年大会で箱根駅伝のごぼう抜き記録をつくった中川拓郎(現スズキ)がそうだったという。
「たぶん今年も、レースには出ないと思いますよ」
 練習の中でチェックできるポイントや流れがあるということだろう。

 2枚看板の他にも前回1区5位でユニバーシアード&アジア選手権代表の村上康則、昨年の全日本大学駅伝で区間賞を取った和田真幸(4年)と松瀬、箱根で過去2年間“復路の順大”の9区を務めた長門、山の上り下りを経験済みの長谷川清勝と難波祐樹の4年生コンビ。高校時代に実績のある清野と全日本の展望記事で紹介した板倉具視の両3年生。そして5000m高校記録保持者の佐藤と13分台の小野の1年生コンビ。すぐに名前を挙げることのできる選手だけで10指に余る。
 箱根に合わせるノウハウが威力を発揮するとすれば、駒大、日大、東海大に加えて4強といえる力は持っているチームである。

@日大


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