2005/12/3 福岡国際マラソン前日
選考レースでないからこそ“純”福岡が面白い
藤田に日本記録の00年再現の期待
ビルハヌは第二のアベラになるか?


 この冬のマラソンはアジア大会の選考レースに指定されているが、オリンピックや世界選手権ほど、選手たちはアジア大会出場を意識していない。しかし、だから面白くない、という考え方はあまりにも貧弱だ。むしろ、選考レースでないからこそ、その大会だけで完結する世界があって面白い。今年の福岡国際マラソンも、純粋に福岡として見ると面白さが際だつ。

 まずは、福岡で好走した選手が多い(日本人招待全選手マラソン全成績参照)。
 藤田敦史(富士通)は2000年大会で日本最高記録で優勝、国近友昭(エスビー食品)は03年大会に優勝してアテネ五輪代表の座を射止めた。野田道胤(ホンダ)も2年前の福岡で、自身唯一のサブテンを達成している。
 藤田と国近が今大会の日本人2強だが、その2人はそれぞれ、福岡で優勝したときと同じ練習が積めているという。

 しかし、藤田は練習に対する“考え方”を変えた。以前は、しゃにむに走り込むのが信条だった。それが高ずるあまり、「月間何kmを走るために、今日は何kmを走らなければいけない」と考えてしまった。5年前の完璧な練習にこだわるあまり、練習で走ることに執着が大きかった。その結果が相次ぐ故障。02年3月の東亜以降、今年のびわ湖まで3年間、マラソンのスタートラインに立てなかった。
 それを昨年末頃から、練習での距離やタイムに、こだわり過ぎなくなった。
「このタイムだと決めつけず、30kmの距離走をやったとしたら、その後の体調を見て、次のポイント練習のタイムを決めるようになりました」と、富士通の吉川三男コーチ。
 今年のびわ湖は練習期間が少なく終盤で失速したが、無理な負担をかけなくなり、この1年間は故障が皆無となった。その結果、走行距離は5年前より若干少なくなったが、5年前と同じ流れで練習ができているし、ポイント練習のタイムは劣っていない。福岡で復活するんだという意気込みも強い。
 大八木弘明駒大監督も、「2年前に(練習拠点を)駒大に戻ってきたときから、今年の福岡で結果を出そうと、2年計画でやってきた」と言う。

 対する国近も、2年前とほぼ同じ練習ができたと言う。ただ、9月にトラックで自己記録をマークした2年前に比べ、「今回はそれができていないのがマイナス」と、昨日の会見で話している。それと、モチベーション的な部分で、2年前ほど上がっていないという。
 しかし、2年前と違う勝負所を意識した練習ができた、とも言う。楽しみな部分でもある。これらのプラス面とマイナス面が、レースにどう影響するか。

 野田は日本人招待全選手マラソン全成績からもわかるように、福岡の後の2レースで失敗続き。「福岡と同じような練習をしようとして失敗した。今回は2年前よりいい練習ができた」と言う。

 外国人選手では当初、G・アベラ(エチオピア)が参戦予定だった。99年の福岡に2時間07分54秒で優勝して世界の一線に躍り出て、翌00年のシドニー五輪、01年のエドモントン世界選手権と連覇した選手。福岡では01年&02年にも優勝して3回の優勝を誇る、“福岡色”の強い選手。
 ところが、そのアベラが故障からの回復が不十分で、参加できなくなった。
 その代わりに、アベラの代理人でもあるマーク・ウェットモア氏が送り込んできたのが、デジェネ・ビルハヌ(エチオピア)だ。アテネ五輪5000m5位入賞者で、5000mは12分54秒15、1万mは27分12秒22がベスト。今大会参加者中、一番のスピードランナーだ。
 トラックをほとんど走らないアベラとは若干タイプが違うが、無名選手から一気にブレイクした“99年のアベラ”の再現をする可能性が、十分にある選手だ。


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