2003/6/11 世界選手権
追加代表選考は具体的にどう進むのか?
その1 落選したA標準突破者
“2人の陽子”はどうすれば代表となれるのか?
※以下の記事は、陸上競技ファンのために書いたものです。関係者の方で疑問がある方は、しかるべき機関・人物に確認してください。選考基準は日本陸連サイトに掲載されています。
@A標準突破者が日本選手権で下位となった女子1万mと男子400 mH
女子1万m日本記録保持者の渋井陽子(三井住友海上)は日本選手権5位。1位・福士加代子(ワコール)、2位・田中めぐみ(埼玉りそな銀行)が代表に決定したが、3番目の代表決定は持ち越しに。3・4位の選手(4位はマラソン代表の野口みずきなので、実質的には3位の藤川亜希)がA標準を突破したら、選考基準「5」により、その選手の代表が決定するが、日本選手権後に両者ともA標準を上回る走りをした場合、どちらを選ぶか明確な基準は明文化されていない。
新聞にも「藤川がA標準を切れば代表」と表現しているものと、会見での澤木強化委員長のコメントから「渋井が藤川を上回る走りをすれば渋井」と、異なる見方の記事が載った。
要は、2人が同じレースに出れば、ことは簡単となる。ロングディスタンスチャレンジ第3戦深川大会に藤川がすでにエントリー済み。そこに渋井が参戦すれば、その勝者が代表となる可能性が高い。藤川は渋井に勝つだけでなく、A標準を破る必要があるが。
女子1万mの代表争いに関する報道では、どうしても渋井中心の視点になりがちだが、藤川側に焦点を合わせると、藤川にも譲れないある事実が浮かび上がってくる。それはまた、別の機会に。
男子400 mHも同様のケース。A標準突破者の吉沢賢(デサントTC)が4位、河村英昭(スズキ)が6位だったため、優勝した為末大(大阪ガス)しか代表に選ばれていない。2位の千葉佳裕(富士通)と3位の吉形政衡(福岡大)が今後A標準を突破したら、代表になる可能性が大きい。
千葉・吉形がA標準を突破できなかったなら、吉沢・河村が選ばれる。フルエントリーをしたい種目と澤木強化委員長も会見でコメントしているが、日本選手権での吉沢・河村の成績が良くなかったため、実際に2人とも選ばれるかどうかは何とも言えない。
千葉・吉形と吉沢・河村が別々のレースに出て、ともにA標準を上回ったら女子1万mのところで説明したように決めにくくなる。幸い、選考会の1つである日本選抜(7月19・20日:松任)に男子400 mHが行われる。吉形は間に日本インカレが入って大変だが、4人全員がそこに出場して来るだろう。
A標準記録突破者が日本選手権で入賞しなかったケース
女子走高跳のハニカット陽子(ミキハウス)は日本選手権で記録なし。昨年A標準の1m95に成功しているが、B標準の今井美希(ミズノ)が優勝して代表に選ばれた。選考基準「5」「6」を読むと、日本選手権入賞者でないと追加代表に選ばれないようにとれるが、記者会見の澤木強化委員長の言葉にあるように、日本選手権時に故障等の事情があれば考慮される。また、日本選手権でなくても、「(選考競技会の)冠が付けられている」競技会で上位に入っていればいいという強化委員長の見解。ハニカットは静岡国際で2位(1m89)に入っている。
つまり今後、今井がA標準を突破すれば、ハニカットも追加される可能性はある。
今井が過去2年間同様ヨーロッパに遠征するかどうかは未定。南部記念には、2人とも顔をそろえるはずだ。
女子20kmWも忠政良子(登利平AC)が日本選手権に優勝し、B標準だが代表に選ばれた。途中棄権した照井貴子が唯一のA標準突破者。女子走高跳と同様、照井が代表となるにはまず、忠政がA標準を上回ることが最低条件。
A標準突破者ではないが、女子走幅跳のように優勝者がB標準突破選手で、2位以下の選手もB標準突破者である場合は、代表に決定した選手と2人がA標準を突破した場合に、追加される可能性が出てくる。
男子100 mで予選落ちしたA標準突破者の田島宣弘(日体大)は織田幹雄記念国際で8位、水戸国際で6位。選考会で上位に入っていると判断してもらえるか難しいが、今後、10秒1台で走って他の有力選手に勝てば、追加される可能性は十分。
ただし、男子100 m・200 mではすでに5人が選ばれている。6人目は個人代表というよりもリレー要員として選ばれる可能性が高く、標準記録の突破未突破には関わりなく、南部記念100 mで、代表以外でトップとなった選手が選ばれるのではないか。しかし、いつものように「種目の特性を考慮する」という一文が付記されているので、順位よりもリレー向きの選手が選ばれる可能性はある。南部も選考参考レースということだ。
その2 ややこしくなりそうなケースもあるが…
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