2003/7/26 南部記念
花岡、世界選手権代表ならずも
底力を見せた6m62
(大会新)

 今大会のMVPは男子が内藤真人(ミズノ)、女子が木田真有(福島大)だったが、もしも敢闘賞があったなら、男子は徳本一善(日清食品・徳本の記事はこちら)、女子は花岡麻帆(Office24)がそれにふさわしい戦いぶりを見せたと思う。大会新は2人の出場した男子5000mと女子走幅跳のみ。大会新というのは必ずしも、レベルの高さとイコールではないので、それだけでどうというわけではないが、日本選手権で世界選手権代表入りを逃し、今回も厳しい状況の中で見せた2人の奮闘ぶりは、見ている者の胸を打った(と思う)。

 6m62(+0.4)で、世界選手権代表の池田久美子(スズキ)に圧勝した花岡のコメントは、チャンピオン・スポーツの厳しさを改めて痛感させるものだった。

「ここでA標準(6m75)を跳んだら、世界選手権に行けると思っていましたし、行きたい気持ちも強かったんです。でも、10日くらい前に“ここでどれだけ跳んでも無理”と言われて、一気にモチベーションが落ちました。先週は久しぶりに5m台も記録してしまいました。今日は出るのをやめようかとも思いましたが、日本選手権の後はこの大会を目指してきましたし、7mを跳べば(世界選手権に)行けるんじゃないかという淡い期待もありました」

 女子走幅跳は日本選手権で池田が6m64とB標準(6m60)を突破して優勝。世界選手権代表に決まった。池田はこれが初のB標準突破だったが、花岡は昨年から今年にかけて、B標準を何度となく突破。日本選手権でも池田に1cmと迫る6m63を跳んでいたのである。
 10日前に“南部でどれだけ跳んでも無理”と花岡に告げたのが誰なのかは知らないが、陸上界でそれなりのポジションにある人間なのだろう。花岡がここまで気落ちしたのだから。厳密には池田がA標準を跳んで、花岡もA標準を超えれば、代表入りの可能性はあった。それを、どういう言葉で伝え、花岡がどう解釈したのかは、ここで問題とすることではない。そこまでモチベーションが落ちながら、花岡が6m62の大会新をマークしたことが、見ている人間の感銘を呼んだ。

「気持ちが落ち込んで、調子もすごく悪くなってしまいましたが、今の調子で6m60を出せたのは、力が付いている証だと思います。試合になれば6m50、60はいつでも跳べるんだと。世界選手権だけにこだわっていたわけではありませんが、気持ち的には複雑です。今年はとにかく、日本選手権が全てでした。他の試合はどうでもよかった。全ては(日本選手権で負けた)自分が悪いのです」

 自分に言い聞かせるように話す花岡。この悔しさが、花岡をまた成長させるのではないかと、彼女の話を聞いていて感じた。


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