2002/11/3 全日本大学駅伝
山梨学大、10回目の2位
橋ノ口が号泣
今年の山梨学大を支える選手とは?

 記者たちに質問を投げかけられると、橋ノ口滝一(山梨学大3年)の涙をかろうじて止めていた堰が、決壊した。
「トラックでは走れるのに、どうして駅伝やロードでダメなのか、わかりません」
 涙ながらに語る橋ノ口が、トラックで学生トップ選手の1人であることは疑い得ない。5月の関東学生対校1万mではカリウキ(山梨学大4年)、藤原正和(中大4年)にラストで競り勝って28分38秒32、インカレ初Vを達成した。記録会で出した1万mの28分30秒台ならともかく、インカレで出した28分30秒台は、信頼度が高い。関東インカレでは5000mでも3位に。9月の日本インカレは5000mだけの出場で、カリウキに次いで2位。
 ところが、過去の駅伝では、集団で競るような場面以外では(1人で走るようなケースでは)、走れた試しがない。今大会も、2区でカリウキが作ったいい流れを、4区の橋ノ口が断ち切ってしまった。トップこそキープできたが、42分30秒の区間5位。ライバルの駒大・田中には51秒の追い上げを許した。山梨学大は5・6・7区でも駒大に追い上げられ、逆転を許したが、その3区間でやられることはレース前から覚悟していた。トラックの実績から、4区の橋ノ口がなんとかしなければ、勝機は訪れなかった。
「僕がいいタイムで走れていたら、優勝できたかもしれないんです。そう思うと、自分が情けなくて情けなくて…。大会前も、走れるか不安で悩む毎日でした。逃げたいと思ったこともありますが、どうしても、この大会で結果を出したかった。ロードが苦手だとは思いませんが、同じ失敗ばかり。自分ではもう、わかりません。どうしたらいいか、教えてほしい…」
 レース直後ということで、橋ノ口自身、気持ちの整理がつかず、いろいろな思いが交錯してこのようなコメントになったと思われる。まずは気持ちが落ちついてから、善後策をスタッフと考えるしかない。

 上田誠仁監督は、橋ノ口1人に敗因を求めるようなことは、しなかった。
「各区間でぶつかった結果のトータルが、1分30秒負けたということ。それが現在の力ということです」
 練習では、それほど崩れる要素はなかった。「メンタル面」という言葉が上田監督の口から漏れた。
「メンタル面というか、考えすぎなんでしょう。出雲では突っ込んで失敗したから、抑えようとした。しかし、抑えすぎてもどうか、とか考えてしまう。結局、中途半端に終わってしまった。本人は、リズムに乗れなかったと言っています」

 橋ノ口からタスキを受けた5・6・7区、松田浩二・清家健・川嶋洋平の4年生トリオがことごとく、駒大の下級生にやられてしまった。
「松田は結果的に、岩永(暁如)の代わりとなる走りはできませんでした。彼としてはそこそこのペースで行っていたつもりが、(駒大・佐藤に)ガーンと来られた。清家は(駒大)塩川にやられるかなと思っていたら、後半はやられなかった。その点、川嶋は後半で30秒もやられてしまった。4区で駒大の射程圏外に逃げられれば、2分以上の差で5区に渡せていたら、違う雰囲気になっていたと思います」
 橋ノ口1人の敗因とはしていないが、橋ノ口に期待をしていたのも事実。失敗は失敗として、反省しなければならない。

 山梨学大の雰囲気を作っているのは、4年生の清家、川嶋、松田たちだという。走ることでは3年生の橋ノ口や高見沢、留学生のカリウキやモカンバがエース的な働きをするが、チームを支えているのは前述の4年生たち。エースたちも彼らには、一目置いているという。「他の選手たちを背中で引っ張れる」(上田監督)存在だ。
 橋ノ口の精神的な落ち込みは、走ることで解決していくしかない。ところが、4年生たちが意気消沈してしまっては、チームの雰囲気まで悪くなってしまう。そうなったら、橋ノ口を再生させることも難しくなる。
 だが、上田監督の4年生たちに寄せる信頼は厚い。
「あのくらいで、チームの雰囲気がダメになるとは思いません。それほどやわではありません。2カ月後は、攻撃的な気持ちでスタートラインに立てるようにしたい」
 10回目の2位。伊勢路では勝てなくても、箱根路の山梨学大を甘く見ることはできない。


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