2003/1/3 箱根駅伝
4位・大東大、只隈監督の語る
4年生が悪い流れを断ち切れる理由とは?

 大東大が2区で16位にまで後退しながら、往路・芦ノ湖のフィニッシュでは4位まで盛り返していた。3区の田子康晴が区間2位で、この区間では驚異的とも言える8人抜きを見せたことが大きかった。只隈監督は芦の湖畔で「1+1も2ですけど、0+2も2なんです」と、劣勢を挽回できた理由について、示唆に富むコメント。
 復路では8区で7位にまで後退したが、9区の山脇拓哉が区間2位の走りで4位に再浮上させ、その順位をキープして大手町にフィニッシュした。3区と9区、ともに4年生が悪い流れを断ち切る走りを見せている。
 流れが悪くなると4年生が立て直す。どうして、そのような駅伝ができるのかを、只隈監督に質問した。

「力の違う選手を鍛えていこうと思ったら、1回、リセットする必要があります。入学した時点では、それぞれの高校でやってきたやり方が、選手に身に付いています。もちろん個性は生かしますが、大東大に入ったら大東大として、大東大の駅伝としてやっていきますから、いったんリセットし、縦のつながりと横のつながりの中で、タスキの重みを感じ取っていくわけです。
 僕が(監督)4年目ですが、1年目に予選落ちしたんです。そのときの1年生が今の4年生……」

 ここまで話を聞いた時点で閉会式が始まり、取材は中断してしまった。只隈監督の言わんとしていることは、陸上競技マガジンの箱根駅伝展望増刊号に出ている。以下に、その一部を抜粋する。

 只隈監督は、即効性を求めない。1年生からAチームで走る選手は、1人か2人の現状。無理はさせない。身体をつくり、鍛えて、上級生になったらしっかりと走れるような土台を作る。高校時代に、目立った成績を残していない選手でも、じっくりと力を引き出す。

 トレーニング面だけでなく、日常生活面でも同様だ。田子のコメントとして、以下のようなものが記事中にある。

「大東大で、皆と一緒に生活していけば、物の考え方が変わって、知力も備わり、陸上に生かされ、結果、強くなっていける」

 具体的にどんな練習なのか、どんな日常生活なのかまでは明かされていないが、基本的な考え方は理解できるだろう。その結果が、最上級生が後輩の失敗をカバーし、4位という今回の成績につながった。普通は、下位の流れになると、なかなか脱しきれないのが駅伝の常識(かもしれない)。今回の大東大は、その“駅伝の常識”を覆した。
 “全員駅伝”という言葉がよく使われる。エースがいない分を、全員がしっかり力を出し切ることでカバーする、という意味だ。だが、仮に全員が力を出し切れなくとも、マイナスのあった分を他の選手がきっちりカバーできれば、それも“全員駅伝”といえるのではないか。


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