2002/11/27 八王子ロングディスタンス
高岡、風に阻まれた7年連続27分台
しかし、十分に発揮された高岡らしさ

その2 日本選手1万m27分台全データから判明したこと

 八王子ロングディスタンスは例年、好記録が出る大会だが、この日は風が強く、今年は記録が出なかった。高岡の優勝タイムは28分20秒54。他の有力選手のタイムから判断して、マイナス20秒くらいの影響だったように思う。風がなくて20秒速い展開になっていたら多分、高岡のことだから27分59秒台では必ずフィニッシュしていただろう(昨年、0.24秒差で日本新を出したときのことを思い出してほしい)。高岡のコメント(その1)冒頭にある「頑張れる話」とは、昨年まで6年連続で27分台が続いていること、あと1回で10回目の27分レースとなること、そして、今年出せば足かけ9年間に渡って27分台を維持することになることだった。

 今大会の取材に当たって、過去の日本選手による27分のパフォーマンスを全て調べた(どうやったら調べられるかは企業秘密)。そのデータからは実に多くのことがわかって、大変に興味深い。その中でも、27分台を何回出したかという点が、高岡の傑出ぶりを示している。

●高岡の27分台全パフォーマンス
記録 年月日 場所
27:59.72 1994/4/24 神戸
27:49.89 1996/6/8 長 居
27:53.03 1997/7/4 オスロ
27:50.08 1998/7/11 ヴィルヌーヴダスク
27:53.37 1999/5/30 ヘンゲロ
27:58.01 1999/7/30 ストックホルム
27:59.95 2000/9/22 シドニー
27:40.44 2000/9/25 シドニー
27:35.09 2001/5/4 パロアルト

●27分台のレース数と出した期間
9レース 高岡寿成(94〜01年)
6レース 瀬古利彦(78〜86年)
  〃  渡辺康幸(95〜98年)
5レース 花田勝彦(96〜00年)
3レース 新宅雅也(83〜85年)
  〃  阿久津浩三(87〜88年)

 上記6選手の他にも20人の27分台ランナーがいるが、そのうち7人が2回、13人は1回だけしかマークしていない。確かに、瀬古や新宅はマラソンと並行してトラックを走っていた。2001年前半までトラックに専念していた高岡とは事情が異なるので、単純な比較はできない。それでも、高岡が日本長距離界で偉大な足跡を残しているのに、異を唱える人間はいないだろう。
 昨年まで6年連続27分台だった点は、高岡の独走状態。続くのは新宅の3年連続で、その他の選手は続いても2年連続である。今年27分台を出せず、瀬古の“足かけ9年間”27分台の力を維持したことに並べなかったが、来年27分台を出せば、その記録も更新することになる。
 ある通信社の記者の方とも話していたのだが、高岡の功績は世間的にもっと評価されてしかるべき。マスコミにも責任があると思うが、中学生や高校生で傑出した記録を出すと“怪物くん”とか“天才少女”というキャッチコピーが冠せられ、大々的に扱われることが多々ある。しかし、そういった選手の大半は、“20過ぎたらただの人”(本人よりもメディアの責任)。それよりも、高岡のようにこつこつと力を付けて、上記のような傑出した足跡を残した選手こそ“怪物”であり、“天才”と冠されるべきだろう。
 定義の仕方の問題なのかもしれないが、“最初から傑出した力を持っている選手”のことではなく“何年も努力をして傑出した力を持った選手”のことを“怪物”や“天才”と評価する方が、選手にとっても好ましいことと思われるが…。

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