2002/11/27 八王子ロングディスタンス
高岡、風に阻まれた7年連続27分台
しかし、十分に発揮された高岡らしさ

その1 高岡の特長は“粘り”

 いきなり言い切ってしまうのには抵抗があるが、高岡の特長は“粘り”である。10年余り彼のレースを見ていて、そう思う。スピードが特徴であることは一目瞭然(3000m・5000m・1万mの日本記録保持者)、誰でも知っていることだ。見逃されがちだが、スピードがある上で粘りもあるところが、高岡の高岡たるゆえんだ。
 その特長が八王子ロングディスタンスでも発揮された。4000m手前からペースメーカーのサイモン・マイナ(トヨタ自動車)と岩佐敏弘(大塚製薬)に引き離され、一時は50m以上の差がついた。しかし、やがて第2集団から抜け出し、独走になっていた岩佐との差を詰め始め、8000mで追いついた。
 しかし8500mで岩佐がスパートし、8600mまでに10m差を付けた。さすがの高岡も苦しい展開となったが、これも徐々に差を詰めて9500mで追いついた。こうなったら高岡のパターン。残り200 mからスパートを決めて、28分20秒54で優勝した。

 高岡が10月のシカゴ・マラソンで2時間06分16秒の世界歴代4位を出したことで、スピードの必要性を何度か耳にした。確かにその通りだと思うが、“粘り(=後半も失速しない力)”も非常に重要なのではないかと、高岡のトラックを見ていて思う。
 以前もどこかで書いたが、高岡はトラックでも、終盤に驚異的な粘りを見せる。日本選手でただ1人、外国選手についていって中盤で引き離されるケースがよくある。このままでは後続の日本人の集団に吸収されると思われる展開。でも、絶対に追いつかれない。最近の取材で、日本人トップを狙うにはその方が楽なのだと、話してくれたことがある。一見、きついレースをしているようにも見えるが、高岡にとって後半粘るのは当たり前のことだったのだ。

 三井住友海上の鈴木秀夫監督も取材中、どこでマラソン向きかどうかを判断するのか質問されると「練習でも終盤、落ちないからね」と、何度もコメントしているのを聞いた。その選手がマラソンまで走れるのかどうかを論じるとき、トラック向きのフォームだとか、ロード向きのフォームだとかいう話を、よく聞く。が、もしかすると外見的な動きよりも、単純にレースや練習で最後まで粘れるかどうか、を見た方が早いのかもしれない……と、個人的には思っている。そこから、だったら後半も粘れている選手がどういう動きをしているのか、ということに発展していくのかもしれないが……。

高岡コメント
「風がきつかったです。せっかく、頑張れる話をレース前に○○さんにしてもらったのに、残念です。でも、今の状態は確認できました。これから正月(全日本実業団対抗駅伝)に向けて準備していきます。
(日体大には)出ないで明日、帰ります。ホントは両方出たいところですが、(自分の調整の流れから)必要はないと判断しました。どこかが悪いとかではありませんし、エントリーしておいて、申し訳ないんですが。
(シカゴの後)スケジュール的にかなり詰まっていますが、その方がいいかと考えました。去年、福岡国際マラソンの後、1カ月休んで正月がダメでしたから。これも経験かなと思っています。
(九州一周2回、中国実業団駅伝、八王子とレースが多いが)九州一周の1回目は大した区間じゃありませんでしたし、いい刺激程度ですね。去年と違う方法でやるのもまた、勉強です。ニューイヤー駅伝の後は朝日駅伝、青梅30kmを予定しています。青梅の後、ハーフマラソンをやるかどうか。春からはまた、トラックです。
(記録を狙うなら熊日30kmでは?)確かに青梅はタフなコースです。自分の課題には適していると思います。
(連続27分台が途切れてしまったことは)なかなかできることじゃないんで、やりたかったんですが…。今はマラソンがメインになりましたから、全てを追い求めるのは無理ということで……切り換えました。
(藤田敦史選手が来年の福岡での対決を明言したことについて)2人一緒にまた、日本最高を出せればいいですね。僕は僕で、自分のことを一生懸命にやるだけ。相手が誰だからというのではなく、スタートラインにいかに元気よく立てるか、ですね」

※その2「1万m27分台全データから判明したこと」に続く

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