2001/3/3
世界選手権選考男子最終レースのびわ湖マラソン
福岡の五十嵐のタイム、2時間09分26秒がボーダーラインか!?
だが、選手の意識は――?
 

 男子マラソン世界選手権代表枠「5」のうち、2時間9分59秒以内で日本人トップという陸連の規定をクリアした福岡優勝(2時間06分51秒)の藤田敦史(富士通)、別大優勝(2時間08分45秒)の西田隆維(エスビー食品)が、すでに代表に内定している。残る「3」の枠が、明日のびわ湖次第で決定する(正式決定は3月20日前後の理事会)。
 藤田と西田を除く候補は、福岡で日本人2位、2時間09分26秒を出した五十嵐範暁(中国電力)、別大で同じく日本人2位、2時間10分36秒の川嶋伸次(旭化成)、そして東京優勝の高橋健一(富士通)だ。
 この3人の中では、タイムは2時間10分51秒ながら、優勝した点とそのレース内容から、高橋の評価が高い。明日、日本人トップで10分を切れば即内定だが、日本人2位の選手が代表入りするには、高橋との比較ではなく五十嵐との比較になりそう。つまり、五十嵐のタイムを上回っておく必要がありそうだ。8分台なら文句なしだろう。
 問題は、日本人3番目の選手が2時間8分台でフィニッシュしたときだ。タイム的には2分遅い高橋との比較になるからだ。だが、それでも高橋となるのではないか。記録はよくても、あくまでそのレースで3番目の選手だからだ。このところの選考では、そういった考え方をすることが多い。
 だが、仮に日本人が1〜3位を独占し、優勝者と3番目の選手が10秒差にフィニッシュする激戦だったら、高橋を抑え、びわ湖の1〜3位が代表入りするかもしれない。

 ここでさらに、“だが”である。
 今日の記者会見とその後の取材で感じたことは、選手たちは2位、3位だったときのタイムまで計算していない、ということだ。計算しても、その通りの展開になる保証もないし、走るからには1位を狙って、という意識の選手が多いと感じた。自己記録は意識にあるようだが。
「普通の展開になれば、このメンバーで10分を切らないわけはない。30kmから勝負できれば、2時間7分台、8分台の記録は心配していない」(早田)
「早田さんと同じように、タイムは出ると思っている。最後まで優勝争いをしたい」(小島忠幸)
「8分台でいきたいが、流れに乗っかった上で、流れを見て勝負をしたい。勝負で出ることはあっても、タイムのために出ることはない」(森下)
「ペースメイクしてくれる選手に付いていく。2時間10分の自己記録をクリアすることが目標。タイムを出せれば順位はついてくるだろうが、あまりこだわらず先頭集団で勝負をしたい」(花田)
「最後まで先頭にいれば、タイムは付いてくる。自己新、できれば10分を切って世界選手権に行きたい」(油谷)
 会見後、森下に日本人2位で集団がばらけて1人で走ることになったら、2時間9分30秒を意識するか聞いたが、そこが世界選手権へのボーダーラインとなりそうな意識すら、感じられなかった。
 代表が理事会が終わるまでどうなるのかわからない2番手、3番手を考慮しながら走る選手は、いないのかもしれない。実際のところ、そんな意識では走れないのだろう。4年に1度のオリンピックではないし。

なお、招待選手のうち、松田和宏(佐川急便)が右足座骨結節炎症で欠場する。

外国選手記者会見模様
フィスが世界選手権で引退
Q.目標タイム、順位は?
フィス 少なくとも2時間8分は切りたい。
デティ 2時間8分台前半で走る準備はできている。
ペナ 優勝が目標。タイムは2時間8分台くらいで。
レオーネ このコースなら大幅に自己記録が更新できそうだ。私の自己記録は2時間8分41秒。
白 世界選手権に選ばれることも目標。2時間10分を切って入賞したい。
Q.レース展開はどう考えているか?
フィス 世界選手権の選考レースとも聞いている。高速化するだろう。私自身、準備はよくできたが、体調的にいくらか問題もある。頑張りはするが…。
デティ 練習は1人でやっているので、他の選手と競るのが楽しみ。30kmまで集団についていって、35kmでスパートしたい。それができるかどうかは、明日にならないとわからないが。
ペナ 優勝を狙っているので、最初は自分のペースでいって、終盤、精一杯走りたい。
レオーネ 速い展開になるだろう。中間点までは集団の後ろで走って、他の選手の様子を見つつ、最後の上りで仕掛けたい。
白 今日は風邪気味でコンディションがいまひとつ。集団に着いていくことになるが、走っていてコンディションが持ち直せば、35kmでスパートをかけたい。
Q.このレースにどんなことを賭けているのか?
フィス 世界選手権への出場権は得ているが、プロフェッショナルとして走るのは、これが最後から2つめのレース。その意味で特別なレースだ。
デティ 最近の私は勝てていない(93〜95とボストンは3連勝)ので、Uターン地点となるようにしたい。
ペナ 今回、世界選手権に向けて重要だと思っている(代表に決まっているかどうかは、不詳)。
レオーネ 私はエドモントンの代表に決まっているので、自己新を狙いたい。前回来日したときは、東京で4位だったので、今回はもうちょっといい結果を出したい。
白 最善を尽くして上位入賞したい。
Q.フィス選手は何回目のマラソンですか。
フィス 今回で18回目。
Q.スペイン国内で走っていないようですが?
フィス セビリア(99世界選手権)で1回走っているが、世界的に評価してもらえる大会がスペインにはない。日本にはあるから来ている。スペインはサッカー、サッカーの一点張り。
Q.フィス選手は世界選手権で引退ということでいいのでしょうか。
フィス その通りだ。オリンピック(シドニー五輪6位)の力を維持しているので、びわ湖でもいい成績を出せるだろう。プロとして走るのは世界選手権を最後にして、若い世代にバトンタッチしたい。そこにいるペナがスペイン希望の星だ。数年の内に私をしのぐ成績を出すだろう。ただ、引退しても陸上の関係は持ち続けたい。