2016/4/7 GMO ATHLETES(アスリーツ)発足会見
インターネット大手企業が“ナンバーワン”を目指して陸上競技をスタート
監督に花田勝彦氏、アドバイザーに原晋氏が就任
◆「ナンバーワンになりたい思い」で監督就任
花田勝彦監督 こんにちは。本日はお足元の悪い中、私たちのチーム発足会見にお越しいただきありがとうございます。4月1日、私が監督、原さんをアドバイザーということで新しいチームがスタートしました。まず、私がこのチームの監督を引き受けた経緯をお話しいたします。私は現役引退後、上武大で12年間指導してまいりました。私自身学生スポーツが大好きで、箱根駅伝にも魅力を感じてやってきましたが、ナンバーワンになりたい思いが常にありました。選手としても、指導者としても、ナンバーワンになりたい。そういうときに、昨年の箱根駅伝予選会の後でしたが、今回のお話を正式にいただきました。すごく迷った部分もありましたが、自分としてもやれるとしたら気力、体力が充実している今しかないと年末に決断しました。しかし、元旦にはニューイヤー駅伝があり、2日、3日には箱根駅伝もある。選手たちに心配をかけず、試合に集中してほしかったので、(私が決断したことを)伝えたのは箱根駅後の1月3日、4日でした。そして私が指導していた上武大学出身者が3名、箱根駅伝優勝チームの青山学院大学出身者が3名の計6名でスタートすることになりました。
チームのコンセプトはもちろんナンバーワンを目指すこと。皆さんご存じの通り、近いところでは4年後には東京オリンピックがあります。そこに選手を輩出して、メダル争いをする、勝てる選手を育てたいというのが大きな目標です。私が引き受けた経緯の1つに、先ほど熊谷代表からもご説明があった通り、選手のセカンドキャリアへの取り組みがありました。私は現役引退後、今は指導者として良い環境でやらせてもらっていますが、競技を終えた後になかなか思うように歩めないケースも多い状況です。GMO ATHLETESは選手としての成功だけでなく、競技が終わった後もしっかり社会人として、GMOインターネットグループのスタッフとして世の中に貢献する。そのような考えのもと、人を大切にする会社だとお聞きして決断しました。それであれば私も選手たちに全力で指導ができますし、選手たちも心配なく競技に打ち込めると感じたからです。正式に発足してまだ1週間ですが、選手たちとは3月から合宿を繰り返し、チームの結束力も非常に高まってきております。あとは熊谷代表の言われたナンバーワンになるために、選手、スタッフ、会社が一致団結して大きな目標に向けて頑張って行ければと思っています。どうぞ、よろしくお願いいたします。
◆マラソン低迷打破のために「フィジカル、精神的、本質的なもの」からアプローチ
原晋アドバイザー 原は色んなことをやるな、と皆さん思われていると思うのですけれども、今回GMO ATHLETESのアドバイザーに就任させていただきました。青学大に2004年に就任させていただき、今年で13年目を迎えるのですが、現場で感じることとして選手、チームに対する環境は我々が現役の時に比べれば、各企業の処遇や環境面は格段によくなっているんですね。運動用具やサプリメントなどを見ても、日本のチームは世界レベルの環境にある。一方で実際の記録の方を見てみますと、トラックは高校、大学とレベルが上がってまいりました。しかし本来実業団が担うマラソンの成績は、この30年間停滞しているのです。データを見てみましたが瀬古さん、宗さんが全盛期時代ですよね。瀬古さんがベストの2時間08分27秒を出したのが1986年、もう30年経過しています。そして現日本記録の高岡選手が作った2時間06分16秒、これも2002年の記録でしてもう13年以上が経っています。この間日本マラソン界はいかがなものかなと私は思っております。
では何が問題なのかと考えたときに、私としては2つあると感じています。1つめはフィジカル面。どうフィジカルを鍛えていくのか。未だに儀式のようなウォーミングアップ、クーリングダウンを行っている企業の選手が大多数を占めるのですが、このフィジカル面も見直さなければいけない。2つめは物事の本質ですね。根性、精神論を中心として縛りをかけて指導していくやり方が、まだまだ主流なんですけれども、青学のように明るく元気に、自ら言葉に発して、自らの思いで走って行くスタイルに変えていかなければいけない。フィジカル、精神的、本質的なものを青学大では変えてまいりました。そこで大学を卒業し、社会人、実業団に行くに当たって、その思想を引き継いでいただける企業はないものかと、模索をしてまいりました。半年くらい前でしょうか、原プロジェクトという考えを投げかけたわけですが、そうした私の思いにGMOさんが名乗りを挙げてくれた訳です。
やるからにはナンバーワンを目指さなければならない。そして既存のグループに入るのではなくて、ベンチャースピリッツを持って取り組んでいただける企業だと思って私は認識しております。また、新しい、スピード豊かな企業であるのではないかなと思っております。大迫傑選手が、日本のトップランナーがアメリカでプロジェクトチームに入っていますけれども、プロジェクトを組んで世界と戦うランナーを育成することは、日本国内にとどまっても十分できると私は思っています。そのためにも、受け皿としての企業は絶対不可欠ですし、その受け皿としてGMOさんという形が今回できたのではないかなと思っております。間違ってもらっては困るのは陸上界でパイの争い、足の引っ張り合いをするのではなく、今回新規に設立されたこのチームが、世界で戦うための1つの起爆剤になれれば、東京オリンピックに向かってさらに陸上界は盛り上がっていくし、チームジャパンとしてよりよい未来が、ハッピーが広がっていくものだと確信しています。私はアドバイザーとして、高校、大学から社会人への橋渡しをして行ければなと認識しているところです。GMO
ATHLETESはこれからの陸上界の発展のお手伝いをしていきますので、ご支援のほどよろしくお願いします。
◆ランニング文化の支援は?
Q.ランニング文化支援の中には市民ランナーも含まれていると思いますが、市民ランニングに対する計画にはどのようなものがあるのか。
熊谷代表 具体的にはこれから考えさせていただきたいと思っていますが、かつて私どものグループでは東京マラソンのスポンサーを務めさせていただいておりまして、東京マラソンを走られる方々の応援をさせていただいた経緯があります。そのときもアイディアを取り込みまして、企業ブースを出したんですけれども、企業ブースの裏にマッサージルームを設けてですね、他の企業さんではやらない形で選手をサポートしてきた経緯があります。今後、選手や監督と相談して他の企業ではやらない支援の仕方をしていきたいと思っています。
◆駅伝への取り組みは?
Q.実業団のチームでは駅伝を大切にするチーム、マラソンやトラックなど個人種目を大切にするチームがあります。GMOはどちらを大切にするチームなのか。
花田監督 現在、人数が6人しかおりませんので、まずは個人をしっかり育てるということが大事だと思っております。駅伝というのは個人の集合体だと思っていますので、今後そういった準備が整って駅伝に出ることになれば、そこを目指すことも大事になってくる。どちらかというよりは、出るからにはどちらもナンバー1を目指すという考え方です。加入している選手はすでに4名がマラソン経験者で、2時間11分〜12分で走っている者もおります。サブテン、さらには2時間8分台も見える位置にいますので、まずはそこをめざして頑張っていく。あとの2人は非常にスピードのある選手ですので、トラック種目の方でしっかり戦えるようにする。その先にまた、何か見えてくるのではないかと思っています。
◆セカンドキャリア支援の取り組み
Q.選手のセカンドキャリアに視点を置くとのことだが、何が特別な指導やプログラムはあるのか。
花田監督 今回の話はそこに一番かかっていると思っています。既存のチームの場合、合宿期間中を除いては、午前中に仕事をして、その後に練習するというのが多いようです。しかし私が提案したのは、セカンドキャリアを考えた教育や研修を競技と平行してしっかりやりたいということでした。もちろん会社にも出勤しますが、教育や研修の時間を取ってほしいと提案しまして、それはいいなと熊谷代表からもお答えいただきました。私自身考えているのは、まず語学です。私も英語があまり話せないのですが、これからの社会を考えると、できれば選手が引退する頃には英語がしっかり話せるようにさせたい。トップアスリートになるためには、色んな知識、栄養学なども必要ですし、こういう業種ですからインターネットの知識も習得したい。選手のうちは競技にしっかりと集中してやりながら、知識、教養を高めていくというのをやっていって、引退した後、今度は社会人としてしっかりと社業に入っていくようにしたいなと思っております。
◆より個人に特化した指導を
Q.花田監督は学生を指導されていたときと、どんな違いが出せると考えていますか?
花田監督 上武大の指導を12年間やってまいりましたが、なかなかトップを目指す指導に集中できないところがありました。駅伝は平均的な力を上げなければいけません。今後は少人数でトップを目指す指導をさせていただけるので、今までできなかった本当の意味での個別の指導ができるのではないかと思います。もちろん、上武大でもトップクラスの5〜6名は個別にやっていましたが、練習のプログラム上、全体に合わせることも多かったです。GMO ATHLETESではより個人に特化したやり方ができます。海外での高地トレーニングも考えています。それだけではなくて、私自身はやれなかったトレイルランニングも導入するつもりです。練習拠点を(埼玉県の)東松山に決めたのも、周辺にトレイルコース、クロスカントリーコース、ロードコースと、環境が非常によかったからです。合宿などと組み合わせて、やりたい練習ができると思っています。
◆マラソンで2時間5分台を
Q.目指す記録は? 先ほど原さんから高岡寿成監督の日本記録の話題も出ましたが、高岡監督とは現役時代にトラックではライバルでした。
花田監督 先ほど決意のところで話しましたが、東京オリンピックに出てメダル争いをするためには、戦える記録を出しておく必要があります。高岡さんの記録を抜くだけでなく、日本人初の2時間5分台を出したい。まずそこがターゲットになります。世界は(数字的には)もっと上なのですが、まずはそこを目指したい。トラックも1万mは昨年日本新が出ましたが、27分ヒト桁を出さないと世界と戦えるレベルとは言えません。私自身はトラックでオリンピックに、マラソンで世界陸上に出場しましたが、本当にやりたかったのはマラソンでした。今回のお話をいただいて、もちろんトラック種目もやりますが、やはりマラソン選手を育てたい、という気持ちが強いです。日本では20〜30年間低迷しているマラソンで、オリンピックで戦える選手を育てたいと思っています。
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