『東北スポーツサミット2013』にルイス、パウエル、バンクスが参加
“日本を元気づける”のに適任の<現&元>世界記録保持者たち


 下記の2つのイベントで構成される『東北スポーツサミット2013』に3人の伝説のアスリートが参加する。
@「東北スポーツ・コーチング会議」 3月23日(土) 13:00〜16:30
仙台国際センター大ホール(宮城県仙台市青葉区青葉山無番地)
A「ワールドレコードキャンプ」3月24日(日) 13:00〜16:30
石巻専修大学 陸上競技場 (宮城県石巻市南境新水戸1)


選手 種目 ベスト記録 現在の
世界歴代順位
当時の
世界歴代順位
タイトル
カール・ルイス 100m 9秒86 15位 世界記録 83世界陸上、87世界陸上、91世界陸上
84五輪、88五輪
200m 19秒75 11位 2位 84五輪
走幅跳 8m87 3位 3位 83世界陸上、87世界陸上
84五輪、88五輪、92五輪、96五輪
マイク・パウエル 走幅跳 8m95 世界記録 世界記録 91世界陸上、93世界陸上
ウィリー・バンクス 三段跳 17m97 4位 世界記録  

 “日本を元気づける”のにふさわしい、適任の3人だ。
 ルイスとパウエルはなんといっても1991年東京世界陸上の“ダブル世界新”が印象的だ。ルイスが100mで、走幅跳でパウエルが世界記録(もちろん優勝)を出したことに、日本における“巡り合わせの妙”を感じさせる。

 ルイスは80年代にすでに、スーパースターの地位を確立していた。1984年ロス五輪で4冠を達成し、続く1988年ソウル五輪も100mと走幅跳で2連勝。
 ところが1991年当時、ルイスの100mの力は若干落ちていると思われていた。実際、その年6月に、ソウル五輪で出した9秒93の世界記録をクラブの後輩のリロイ・バレル(アメリカ)に破られていたのだ。すでに30歳。100mよりも走幅跳の方が、優勝の可能性は大きいと見られていた。
 ところが、大会2日目の男子100mでは、後半型の持ち味を発揮し、先行するバレルらを終盤で逆転。人類初の9秒8台で優勝した。ルイス自身も記録に驚いたようで、五輪では見せたことのない感極まった表情で喜んでいた(当時の陸マガのフィニッシュ後の写真)。

 その勢いで7日目の走幅跳もルイスが制すると思われた。3回目に8m83、4回目には8m91。ともに追い風参考だったが、勝運はルイスに傾いていた。
 だが、勝ったのはパウエルだった。5回目に8m95の世界新。これも伝説の記録だったボブ・ビーモン(アメリカ)が高地メキシコで出した8m90の世界記録を23年ぶりに破ったのだ。元々、喜怒哀楽の表情が豊かな選手。記録がわかると思い切り喜びを爆発させ、審判にも抱きついていった(当時の陸マガ誌面)。
 助走スピードを生かした跳躍のルイスに、助走スピードよりも踏み切り技術で対抗した。だが、安定度ではルイスにかなわなかった。翌年のバルセロナ五輪、96年のアトランタ五輪と、勝ったのはルイス。五輪4連勝は男子円盤投のアル・オーター(アメリカ)と並ぶ個人種目の五輪最多連勝記録である。
 パウエルのセカンド記録は8m70と自己記録とは差があり、いつも“勝てる選手”ではなかった。世界タイトルは東京世界陸上と93年世界陸上シュツットガルト大会だけ。
 自己記録を29cmも更新してルイスに勝った東京のパウエルは、神がかっていたと言っていいのではないか。

 バンクスは、他の2人に比べると競技実績ではやや劣る。1985年に17m97の世界新を出したが、メダル獲得は83年の世界陸上銀メダルがあるくらい。アベレージもそれほど高くなかった。
 だが、競技実績以上に記憶に残る選手だったと言っていい。
 何度も来日し、試技を始める前に手拍子をスタンドに求めた。今では珍しくない光景だが、世界で初めてやり始めたのがバンクスだった。本当の最初の選手は特定できないが、世界に広めたのは間違いなくバンクスの功績だろう。
 UCLAで法学博士号をとったインテリで、中京大に特別講師としても来日。国内競技会にも、人なつっこい笑顔で姿を現した。
 帰国後は陸上競技の普及活動にも尽力。“ワールドレコードキャンプ”は、陸上競技を始めたばかりのジュニア選手から奨学金制度を利用し大学へ進学する学生選手、そして既に世界でもトップレベルで戦っている選手まで、幅広いレベルに対応したトレーニングプログラムを提供している。パウエルも“ワールドレコードキャンプ”のコーチを務めている。

 20世紀最大の陸上競技選手とも言われるルイスは、日本で100mの世界新をマークした。
 現在も走幅跳世界記録を持つパウエルは、日本で神がかったパフォーマンスを見せた。
 そして、大の親日家であるバンクス。
 日本との縁(ゆかり)が深い3人が『東北スポーツサミット2013』に参加し、復興への一役を担う。陸上競技に関わってきた人間にとっては嬉しいことである。

 以下は今回の来日にあたって、3氏が主催者を通じて発表したコメント。

■カール・ルイス氏
I love coming to Japan. When I visited Japan during my career, Japanese people always welcomed me with warm hospitalities and a word of encouragement. Through visiting in Tohoku area at this time, I will be very happy if I can support in development of youth athletes in Tohoku and I believe I could give something back to people in Japan in return for those days. I strongly hope that we will have many medalists in the future in Tohoku.
私は日本を訪れることが大好きです。現役時代、私が日本を訪れる度に日本の皆さんは、温かなおもてなしと励ましの言葉で私を迎えてくれました。
今回私たちが東北地方を訪れることで、東北のジュニアアスリートたちの育成に少しでも役立つことができれば本当に嬉しく思いますし、当時私が日本の皆さんから受けたことへの恩返しが今回のイベントでできると信じています。将来、東北から多くのメダリストが誕生することを心より願っています。

■マイク・パウエル氏
I remember like it was yesterday, competing in Tokyo at the World Championships in 1991. It was an incredible dream for me to compete against a legend in the sport, Carl Lewis, and to be able to set a world record that still stands today. Now, I look forward to returning to Japan with Carl to help young Japanese athletes learn the knowledge to be champions. This is my opportunity to give my thanks to the Japanese people for helping me break the world record.
1991年に東京を舞台に開催された世界大会のことを、昨日のことのように覚えています。その舞台でスポーツ界の伝説であるカール・ルイスと戦えたことと、現在も破られることのない世界記録を樹立できたことは、私にとって夢のような大変素晴らしい出来事でした。今回、カールと共に再び日本へ訪れ、日本の若い選手たちがチャンピオンになるための手助けをできることを、非常に楽しみにしています。これは、私が世界記録を樹立した時に応援してくれた多くの日本の人々に対する恩返しの機会だと思っています。

■ウィリー・バンクス氏
I am very happy to join Carl Lewis and Mike Powell in Tohoku to participate in this wonderful event. Japan is my second home and I look forward to working with the young people to make them better athletes. I will mix hard work and fun so that everyone goes away with good memories. Similarly, I look forward to working with Japanese coaches in an exchange of techniques and ideas at the coaches seminar.
カール・ルイスとマイク・パウエルと共に、東北でこのような素晴らしいイベントに参加できることを、心より嬉しく思います。私にとって日本は第2の故郷であり、若い選手たちを更に良いアスリートへと成長させることをとても楽しみにしています。参加者全員に最高の思い出を持ち帰ってもらうために、私はハードな練習と楽しさを織り交ぜていきたいと思っています。同様にコーチング会議では、日本の指導者たちと技術論や意見を交換できることを非常に楽しみにしています。


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