2008/4/11 陸連強化委員会記者懇談会
A標準多数でも男子長距離のフルエントリーは…
逆に投てきはB標準でも…
「少数精鋭で」と言う陸連強化関係者の意図は?

 オリンピックイヤーのこの時期、気になるのは陸上競技の五輪代表枠がどうなるかだ。男子長距離にも、そのあたりの事情が大きく反映している。

 1万mは兵庫と静岡国際で行われる。例年、好記録に湧く兵庫に加え、静岡が風の強い草薙から今年は風の弱いエコパ(袋井)開催となり、記録的にも期待できる。ただ、「現時点ではA標準突破者(竹澤健介・早大)が万全でなく、サーキットには出場しない見込み」(永里男子長距離部長)という。ファンとしては寂しいが、じっくりと調整ができるのもA標準突破者の権利。無理はしないでほしい。
 その代わりというわけではないが、A標準突破期待の選手として名前が挙がっていたのが、松宮隆行(コニカミノルタ)と佐藤悠基(東海大)の2人。ともに、4月末のカージナル招待に遠征する。
 A標準突破者数では珍しく、5000mが4人と1万mの1人を上回っている。5000mでは3枠を、1万mでもA標準を複数突破したらその人数をオリンピックに、と考えるのは当然だろう。ところが、永里部長は「5000mで1人ないし2人、1万mは1人になるかもしれません、3000mSCで1人と少数精鋭で行くと思います」と、北京五輪出場選手数の展望をコメントした。

 男子長距離とは反対のニュアンスがあったのが、投てきの小山部長のコメント。
「投てきのA標準は室伏(広治・ミズノ)1人だけですが、B標準が3名います。A標準の期待ができるのはやり投の村上(幸史・スズキ)ですが、(投てきは)A標準の設定が高く、その記録を当日出せば入賞するレベルで、日本選手には難しいのが現状です。自己記録を出せばB標準という選手も4人いますし、男子やり投では若い選手が2人(昨年以降)76mを投げて、次の世代も期待できるようになっています」

 五輪出場枠に関して高野進強化委員長は「JOCと折衝も行いましたが、返答があったわけではありません。一部の新聞で陸上競技は厳しいと書かれましたが、決定的にそうだと言われたわけでもないんです」と説明した後、次のように続けた。
「オリンピックは世界選手権とは違います。入賞を期待される少数精鋭の選手で選手団を組むのがふさわしい。ただ、種目を絞りすぎると、その種目はしぼんでいってしまう。多種目を網羅した少数精鋭という形が良い。現状は、種目によってデコボコがあります。北京に対しては(昨年の世界選手権のような)育成でなく勝負となります。戦える希望を持った多くの枠にしたい」
 苦しい立場が如実に伝わってくるコメントだった。実は会の冒頭で澤木専務理事が「強化関係者の意図するところを、汲み取ってほしい」と、微妙な言い方をしている。

 男子の長距離にしても、本音は多くを出したいに決まっている。だが、世界で入賞が望めるわけではない現実がある。他競技とのバランスなどで、出場枠はJOCが判断する。資格のある種目は出せるだけ出たいと、陸連側から言い出さない方針と思われる。
 B標準の選手を派遣するのかどうか。その種目2人目のA標準選手を出すのかどうか。あるいは、B標準のレベルが高いフィールド種目は出すのか。今後も明確な基準は打ち出せない可能性もある。現場のコーチ、選手もそういった事情を考慮して、頑張ってA標準を狙いに行くのか、確実なところを狙うのか、自己責任で判断をしないといけない。


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