2001/9/15 スーパー陸上
全種目ショート記事●男子編
100 mで激烈だった優勝&4位争い
400 mH・為末の前半のスピードは?
銀メダリストが金メダリストを破った3種目etc.


▼100 m
 エドモントン世界選手権(以下エドモントン)200 m銅メダリストクロフォード(米)がスタートでリードを奪うが、中盤で朝原宣治(大阪ガス)が追い上げ、終盤、わずかに前に出る(これはビデオで確認してわかった)。しかし、最後にクロフォードが差し返した、というか、フィニッシュの前傾で前に出た感じ。向かい風0.1mでクロフォード10秒17、朝原10秒18。朝原のすごいところは、世界選手権後もそのままヨーロッパを転戦し、5レースをこなしながら、なおかつここまでの力が残っている点である。この点については、雑誌の記事に書く予定でいます。
 3位にフレデリクス(ナミビア)が続いたが、優勝争いと同じくらい白熱したのが川畑伸吾(群馬綜合ガードシステム)と末續慎吾(東海大)の4位争い。スタートで僅かに川畑がリードしたが、すぐに(20〜30mあたり)末續がグンと前に出た。200 mでは格上の末續がそのまま逃げ切るかと思われたが、終盤、川畑が追い込んでほぼ同時にフィニッシュ。10秒34の同タイムだったが、かろうじて末續が逃げ切った(これもビデオを見てわかった)。
 教訓。100 mの得意な選手と200 mが得意の選手が100 mを一緒に走った場合、200 mに強い選手が後半引き離すとは、必ずしも言えない。
(100 mでこんなに書いてしまったが、他の種目は数行になるはず)
▼400 m
 世界選手権銅メダルのホートン(ジャマイカ)が優勝したが、タイムは45秒21にとどまる。世界選手権は直前に風邪を引いて予選落ちに終わった小坂田淳(大阪ガス)が、45秒49で3位。世界選手権4位のペティグルー(米)に0.03秒と迫る好走だった。世界選手権でも大会期間の終盤に行われた4×400 mRでは、44秒58のラップで回っている。邑木隆二(法大)は2月の日中対抗室内から8月の世界選手権、北京ユニバーシアードまで出ずっぱりだった疲れが出たのか、47秒36で7位。
▼1500m
 サリバン(カナダ)がシドニー五輪5位と、日本選手とは格違いの強さを見せて圧勝。タイムは3分42秒44と平凡だったが仕方ないところ。日本勢では徳本一善(法大)がトップで3分44秒20で2位。ラスト1周を55秒台中盤でカバーし、日本選手権優勝の小林史和(NTN)に1.06秒差をつけた。
▼5000m
 現在、日本陸連登録選手の2強と言えるギタヒ(日清食品)とガソ(コニカ)が激突。5月の大阪国際GPに続いてラストまで大激戦となったが、ギタヒが0.14秒差で雪辱した。三代直樹(富士通)は欠場。
▼110 mH
 内藤真人(法大)が13秒37の記録を持つ陳雁浩(中国)を抑え、13秒62(+0.8)と自身の学生記録を0.03秒更新した。だけでなく、世界記録保持者のジャクソン(英)にも0.01秒差の快走だった(詳しくは記事をご覧ください)。日本選手権後に13秒60と世界選手権A標準を突破した浅見公博(佐川急便)だったが、今回は14秒01と片鱗を見せられなかった。
▼400 mH
 為末大(法大)がスタートした。エドモントンで為末レースを3レース目の当たりにし、そのスピードが焼き付いている記者の何人かは、“えっ?”という反応を見せた。明らかに、世界選手権よりも遅い。そのことと関連があるのかどうかわからないが、1台目のハードルを倒した。5台目の通過は21秒5。エドモントンの決勝では20秒78だったから、やっぱり遅い。もっとも、世界選手権以上を期待するのは、400 mや400 mHでは無理だろう。それでも、金のサンチェス(ドミニカ)、銀のモーリ(伊)を引き離してホームストレートに入ってきたのだから、メダリスト全員が世界選手権よりスピードが落ちていたわけである。為末は世界選手権では9台目を過ぎて抜かれたが、今回は10台目までトップだった。
▼スウェーデン・リレー
 日本B(全員学生)が3走・末續慎吾でトップに立ったが、4走でマイケル・ジョンソン(米)が逆転。日本A(全員実業団)の小坂田淳が追うが、あと一歩及ばず。小坂田はジョンソンの1つ後ろの順位を走った最後の選手となった。佐藤はジョンソンに抜かれた最後の選手となった。ただ、佐藤の遅れ方が大きく、日本Aとも2秒差がついた。小坂田が好調とはいえ、ちょっと気になる。邑木同様、3月のオーストラリア遠征からシーズン前半、そして北京ユニバーシアードとフル回転してきた疲れが出たのか。
▼走高跳
 ソトマヨル(キューバ)やヴォロニン(ロシア)がベスト記録を14〜15cm下回ったが、内田剛弘(福岡大)は5cm下回っただけ。日本選手の2番手が2m10だった。現時点では内田の力がちょっと抜けている印象を受けた。ただ、この種目もちょっとした技術的なきっかけで、10cmくらいは記録が違ってくると、スズキのWEBサイトで尾上三知也がいっているように、次も内田が勝つという保証はない。
▼走幅跳
 エドモントン銀のストリングフェロー(米)が1回目の8m15で、ペドロソ(キューバ)に先行した。“これは”と思われたが、ストリングフェローはその後が伸びず、ペドロソが4回目に8m29で逆転。森長正樹(ゴールドウイン)が7m76で日本人トップの3位。渡辺大輔(ミズノ)は7m16で、エドモントンの雪辱ならず。
▼三段跳
 記録はともかく、見応えがあった種目が多かった今大会。三段跳は110 mH、ハンマー投と並んで、銀メダリストが僅差で金メダリストを破り、観衆を興奮させた(と思う)。スウェーデン・リレーがトラックで行われていたことと関係があるのかないのか(個人的にはないと思う)、スウェーデン期待の21歳、オルソンが17m16を2回目に跳躍。3回目に17m14とエドワーズが迫ったが、そのまま逃げ切った。世界選手権代表の杉林孝法(ミキハウス)は2回連続ファウルのあと、3回目以降を棄権した。渡辺容史(筑波大)は16m20とまずまずの記録。
▼砲丸投
 ゴディナ(米)が20m92で圧勝。金メダリストが自己記録からマイナス1m10だったのに対し、日本記録保持者の野口安忠(コニカ九州)は、自己記録からマイナス1m02とほぼ同じ。他の種目ではほとんど、外国勢の方が記録の落ち幅は大きかった。ゴディナは気合いが入っていた、ように見えた。
▼ハンマー投
 エドモントン金のジョルコフスキー(ポーランド)を、同銀の室伏広治(ミズノ)が6投目で逆転した。記録は82m08と81m82。厳密に落ち幅の%を計算したり、自己何番目の記録かを調べたわけではないが、たぶん、メダリストの中で最もパフォーマンスの低下率が小さかったのが、室伏だろう。次が、110 mHのガルシアか(13秒07→13秒19という記録よりも、金のジョンソンに0.35秒差をつけたレース内容。でも、ジョンソンは明らかに不調だった、と思う。でも、内藤はすごかった)。