2001/11/10
中部実業団駅伝の区間エントリー決定
注目の
“自動車対決”帰趨を占う……のは難しい
10連勝中のトヨタ自動車vs.充実のアラコ
しかし、上位4チームはハイレベルの混戦


 明日、美濃路と飛騨路の境にある岐阜県金山町で行われる第41回中部・第31回北陸実業団対抗駅伝の区間エントリーが発表された。
 昨年まで10連勝中のトヨタ自動車はエースのマイナではなく、外国選手(1名枠。区間制限はなし)はキマニを起用。日本人エースの浜野健も出場しない。ただでさえ、アラコ有利の下馬評が増幅しそうな布陣だ。
 しかし、そのアラコもベストメンバーではなかった。日本選手権5000m&1万m2冠のエメレをエントリーしなかった。どちらも主力を温存し、結果的に本田技研浜松やスズキとの力が接近し、混戦に拍車がかかった。

1区(10.4km) 2区(7.2km) 3区(16.0km) 4区(14.2km) 5区(14.2km) 6区(11.6km) 7区(10.4km)
トヨタ自動車 土持康博 山岡謙二 キマニ 高橋謙介 吉岡善知 菅谷宗弘 藤田幸則
28.53.04 29.03.66 28.28.26 28.41.42 28.46.59 29.08.93 29.21.38
アラコ 若松 誠 木戸真樹 手塚利明 渡邊 聰 土田豊和 前田貴史 内田裕之
29.28.59 28.55.66 28.37.79 29.15.88 28.29.25 28.54.85 29.31.52
本田技研浜松 徳永英人 立川剛志 ドゥング 藤井博之 岡田 茂 鈴木大介 北川晋吾
29.08.46 28.46.77 28.02.06 29.11.47 28.58.36 14.29.67 29.29.30
スズキ 上口広之 佐藤功二 ワイナイナ 内山孝之 河野俊也 羽部秀昭 秋山悟志
29.40.74 29.33.93 28.01.21 29.09.52 28.30.48 29.09.34 14.17.96
北陸地区
YKK 吉田正幸 福田哲二 西川哲生 岩原正樹 西村哲生 村山 豪 泉  亘
29.34.77 29.20.62 28.27.34 28.59.24 29.18.70 29.09.03 29.41.06
タイムはプログラム記載の“過去1年間の”最高記録。つまり、昨年11〜12月に出した記録も含まれている

 中部・北陸地区は、コニカや富士通のいる東日本、カネボウや中国電力のいる中国、旭化成のいる九州に比べ、派手さには欠けるきらいがなくもない。だが、ここ数年の、中部地区上位4チームの充実ぶりは、目を見張るものがある。
 トヨタ自動車は2本柱を外しながら、表にあるように1万m28分台が4人。順大のエースだった高橋謙介が4区、やはり順大時代に箱根駅伝の主要区間を走った吉岡が5区。
 アラコはコーチ兼任の木戸がこの1年でも28分台と健在で、昨年の全日本実業団1万m優勝の手塚に、同期の土田も28分30秒を切っている。神奈川大でエースだった渡邊、京産大から入社2年目で今季5000mで13分37秒24の前田もいる。好調の前田が5区というのが、終盤勝負を意識しての布陣なのか、3〜5区の長めの距離に不安があるのか、よくわからないが…。

 本田技研浜松は2区に立川を置いた。2区にエントリーした選手の中では木戸が28分08秒50を持つが、最近のタイムでは立川が最もいい。ドゥングの他に28分台が2人育ち、充実してきた。スズキは日本人エースの河野俊也が、ヒザの故障から復帰してすぐに国体の3000mSCで3位に入った。28分台はこの2人だけだが、その他の選手も底上げがされてきた。エースのワイナイナが好調で、マイナとエメレがいないのなら、3区で先頭に立つことも十分あり得る。

 箱根駅伝出身選手が目に付く。トヨタ自動車は高橋と吉岡、欠場した浜野も順大出身。中部4強の一角を崩すかもしれないYKKには西川哲生(山梨学大)と西村哲生(東海大)の“哲生コンビ”と神奈川大出身の岩原。吉田正幸も専大(松戸高)OB。順大の山登り男だった佐藤功二(スズキ)もいる。駒大OBでは“元祖・藤田”の藤田幸則、足立康光(愛三工業)もいる。
 しかし、前田や村山豪の京産大同学年コンビや、逵中正美(NTN)など関東以外の大学出身者も頑張っているし、手塚利明のように高卒の叩き上げ選手もいる。また、スズキの河野(山梨学大)や上口広之(順大)のように、箱根駅伝の強豪校出身だが箱根を走っていない選手もいる。強くなるためにはこの経歴がベスト、などという便利な方程式はないことが、よくわかる。

 3000mSC選手が多いのも特徴だ。8分30秒台が泉亘(YKK)を筆頭に、村山と土持康博(トヨタ自動車)、8分40秒台(41秒未満)に逵中と河野と、まさにスティープルチェイサーが競演するレース。監督にはかつての世界選手権代表の愛敬重之(NTN)の名前が見られ、来年はエドモントン世界選手権代表の岩水嘉孝(順大)が、トヨタ自動車に加わるという情報だ。

 なお、今季1500mで絶好調、日本選手権優勝者の小林史和(NTN)は1区、昨年の日本選手権優勝の木實淳治(八千代工業)は3区にエントリー。直接対決は実現しなかった。

 レース展望は……これだけ、力が接近していたらわかりません。戦力を個々のチーム毎に考えてみると、どこも勝ちそうに思えてきてしまう。強いていえば、長距離区間の3・4・5区が手塚・渡邊・土田と粒ぞろいで5区に前田を配置できたアラコがそこで抜け出すか。本田技研浜松が2区の立川で抜け出し、3区のドゥング、4区・藤井、5区・岡田とトップを快走するかもしれない。先にも述べたように、3区ワイナイナでスズキが優位に立つ可能性もある。とにかく、大混戦で4チーム全部にチャンスがある。1つのチームが10連勝している地区とは思えない大会である。