2002/1/26 千葉国際クロスカントリー
シニア日本選手ワンツーは瀬戸&山口
2人の直面するそれぞれの事情とは…
◆坊主頭にした瀬戸◆
シニア男子はシドニー五輪に5000mで、エドモントン世界選手権に1500mで出場と、スピードの場数を踏んでいるモットラム(オーストラリア)がラストで力の違いを見せ、35分29秒で優勝。5秒差の2位には瀬戸智弘(カネボウ)が入り、さらに1秒差で山口洋司(NEC)が続いた。
瀬戸は昨年の福岡国際クロスカントリーでも優勝しているし、カネボウはチームとしてもシドニー合宿などでクロスカントリーを積極的に練習に取り入れている。その成果が出たわけであるが、瀬戸自身は年末から不調に陥っていた。
カネボウはニューイヤー駅伝でチーム史上最低の16位に終わり、瀬戸は4区で区間9位。必ずしもチーム低迷の原因というわけではなかったが、他チームが手薄になる区間で浮上が期待されていただけに、責任を感じていた。追い打ちをかけたのが1月14日の朝日駅伝。カネボウは2連覇を目指してベストメンバーで臨んでいたが、ここでもトップNECに約3分差をつけられて3位。瀬戸は2区で区間8位。ここでも、必ずしもブレーキといえるほどではなかったが、瀬戸は「過去走ったなかで一番悪いタイムを、1分下回ったんです。(何かをしなければ)自分の中ですっきりしなかった」という気持ちになり、髪の毛をばっさりと切ったのである。
千葉は髪を切った直後のレースでの好結果だった。髪を切ったから走れるというものでもないだろうが、並々ならぬ決意の表れであることには間違いない。
◆ニューイヤーとクロカンだけでなく…◆
瀬戸に1秒の後れをとったとはいえ、山口は昨年もこの大会では日本人トップ。クロスカントリーではつねに上位に顔を出し、世界クロカンには過去3年連続で出場している。その山口も、並々ならぬ決意で今年のトラック・シーズンを迎える。
「今年は(1万mで)27分台を狙って3年目になります。世界大会(に出ること)を目指しているので、選考レースでタイムも出さないといけません。今年、実現しないと夢で終わってしまうので、世界クロカンには出場しません」
27分台を狙うとなぜ、世界クロカンに出場しない方がいいのか。その理由は、これまでの山口の戦績にヒントがあった。
山口といえばまず、ニューイヤー駅伝の1区での快走が多くの人の記憶に刻まれている。今年はギタヒ(日清食品)に次いで区間2位。終盤はギタヒとの差を詰める走りで、区間記録を上回った。昨年も日本人1位(マイナと1秒差の区間2位)で、一昨年は区間賞。まさに、“1区の山口”と言われるにふさわしい走りを続けている。そして、ニューイヤー駅伝の1区と並んでクロスカントリーでの活躍が印象に強い。
しかし、トラックではそれなりの記録は出すものの、肝心なレースでは上位に入れない。世界選手権代表を狙った昨年6月の日本選手権1万mは、22位(29分49秒36)と大敗。原因はっきりしていた。山口は調子のいい状態が、長く続かないタイプだったのだ。
「28分台前半や13分40秒以内の記録は全部、4月か春季サーキットで出しています。あとは、12月の八王子か。これまで世界クロカンに遠征して、3月にまとまった練習ができなかったことが、4月でピークが終わってしまうことに影響したのだと思います。今年は3月にスタミナを付けて、6月の日本選手権でしっかり結果を出したいと思っています」
世界クロカンを走って、トラックにつなげられる選手もいる(どちらのタイプが多いかは不詳だが)。だが、過去3年間の例で、山口にそれができないことははっきりした。「選手には年間のバイオリズムがある。山口は1月がピーク」と指摘する指導者もいる。そんな風評を払拭するためにも、そして、来年以降に心おきなくマラソンに取り組むためにも、今年のトラックは正念場となる。
「次の冬からはマラソン練習にも取り組みます。僕は距離を走り込むとスピードが落ちるタイプ。これまでも、リズムやフォームを整えて(トラックの)記録を出してきました。トラックを狙う以上は、スピード系の練習をやっていた方がいい。マラソンは別競技と考えて取り組むつもりです。そのためにも、今年中にトラックの力を上げておきたいんです。世界選手権の標準記録を切らないといけないと思っています」
世界選手権の標準記録はA標準が27分49秒00、B標準が28分06秒00と大幅に引き上げられた。山口のベスト記録は99年12月にマークした28分12秒58。決して手が届かない記録ではないし、ニューイヤー駅伝の1区で見せる走りなら、十分可能だと思われる。
しかし、トラックとマラソンが両立しないということは、今年、世界選手権の標準記録を破れば、マラソン転向(進出)は2003年以降ということになるのだろうか。
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