2002/1/26 千葉国際クロスカントリー
福士・山中・藤永・渋井の奇妙な“四角関係”
その2 藤永 & 福士 編
山中が渋井との直接対決に勝った1月13日の全国都道府県対抗女子駅伝(1区)。同じ大会の9区では福士が区間賞の走りを見せ、京都チームの優勝にだめ押しをした。同じ9区で2番目を走っていたのが、長崎チームの藤永だった。しかし、区間記録では福士に51秒もの差をつけられてしまっていた(区間3位)。
この2人、高校時代は藤永が世界選手権代表になるなど圧倒的にリードしていたし、福士が15分29秒70の3位となって日本のトップクラスの仲間入りをした2000年10月の日本選手権5000mでも、優勝したのは藤永だった。それが、その1で紹介したように、福士は昨年6月の日本選手権の後は日本選手間無敗という快進撃中。藤永に水を空けている。
全国都道府県対抗女子駅伝レース後の「実業団と大学の練習量の差が出ている」という藤永のコメントが、新聞記事に表れた。永井純監督も、実習などで練習時間が十分にとれないことは認めている。
筑波大では、藤永が1年の時に山中が4年生。千葉国際クロスカントリーの際、藤永から「負け癖がついてしまっている」と、相談を受けたことを山中が明かしている。山中が藤永に何とアドバイスをしたかはわからないが、山中自身が頑張っていることが、藤永への何よりの励ましになるはずだ。
その1でも述べたように、渋井ですら入社して2年8カ月は低迷しているし、高橋尚子(積水化学)、土佐礼子(三井住友海上)、かつては山下佐知子、有森裕子というマラソンで活躍した選手は大学時代、実業団選手を上回る活躍はしていない。そういえば、鈴木博美も高校から実業団に進んだとはいえ、最初は練習を休みがちだったことは有名だ。
幸いにも一般種目と違って長距離種目は、学生時代に国際レベルの力を示さなくとも、競技を続けられる環境は得られる。生理学的にも20歳前後で無理をしない方がいい、と唱える指導者もいる……などと話を展開すると、福士の将来を否定しているようにとられてしまうかもしれないので、次の選手の名前を出したい。
ガブリエラ・サボー(ルーマニア)。彼女のジュニア時代の活躍、20歳そこそこでシニアのトップに躍り出た戦績は、今さら紹介するまでもない。要するに、選手の成長過程は1つや2つのパターンではない、ということである。
今回、紹介した4人が2月24日の横浜国際女子駅伝で同一チームを組む。同じ区間を走ることはないが、お互いの活躍に刺激されて相乗効果となり、いい走りを見せてくれそうな気がする(先に出場する選手が好走することが必要となるが)。そして、横浜だけでなく、4月からのトラック・シーズンを楽しみにしたい。福士、渋井、山中――久しぶりに、5000mと1万mで日本記録の応酬が見られるかもしれないのだ。
今年はオリンピックや世界選手権がなく、世間の目はサッカーのワールドカップに集中しがち。せっかく、これだけの選手がそろったのである。春からのトラック・シーズンは、高橋尚子以外にも華と実力のある選手がいることを、アピールすることができるチャンスではないか。テレビ各局の陸上担当者の方に期待したい。