2001国際千葉駅伝
絶好調・福士の国際舞台を意識したレース選択戦略

 福士加代子(ワコール)が絶好調である。スーパー陸上5000m、全日本実業団5000m&1万m、そして国体成年5000mと、秋のトラックレースで勝ち続けている(スーパー陸上は外国2選手に次いで3位)。その間、1万mと3000mでジュニア日本新をマークし、7月のヨーロッパ遠征で出した5000mと合わせて長距離3種目のジュニア日本記録保持者となった。駅伝でも今年1月の全国女子駅伝、11月に入って淡路島女子駅伝、北陸女子駅伝と区間賞を取り続けている。
 まさに国内無敵の勢いだが、彼女の出場している試合を見ると、国際舞台をかなり意識していることがわかる。

 最初の国際大会は昨年10月にチリで行われた世界ジュニア選手権の5000m。そこで4位入賞を果たしているが、日本選手権(5000m3位)、世界ジュニア、淡路島女子駅伝と続く日程を考えたら、また、駅伝を優先させる考え方をしたなら、世界ジュニア遠征は控えたかもしれない。
「駅伝も大事ですが、コンスタントに力を発揮できる選手になるためには、(世界ジュニアの)経験も必要だと判断しました。ともすれば、日本選手は過保護にされがちですが、“かわいい子には旅をさせろ”ということで送り出しました」と、永山忠幸監督は経緯を説明する。
 それだけでなく、淡路島女子駅伝の3週間後の国際千葉駅伝にも出場。外国選手とのレース経験を積むだけでなく、5区で見事に区間賞を獲得した。
「本人とも相談して、勢いのあるときに、いろんな経験を積んでおきたいと考えました。スケジュール的にも、ポイントのときと抜くときをうまくメリハリをつければ、乗り切ることはできると思うんです。プランさえ間違えなければ大丈夫です」(永山監督)

 そして今年7月、レベルの高い国際グランプリ(GP)Tカテゴリーの、ローザンヌGPにも福士の姿があった。「昨年、福士が入社したときから今年のヨーロッパ遠征は計画していた」(永山監督)ということからも、ワコール陣営のレース選択の戦略が見てとれる。さすがにGPTまでは予定になかったというが、現地に行ってから急きょ、出場できることになった。日本選手権5000mで2位になっていたことも、プラス材料だった。
 ローザンヌこそ、1周目を1分08秒で入ったことで、後半、完全に失速してしまって9分15秒25と失敗したが、アイルランドの試合を経て臨んだベルギーの競技会5000mで前述のようにジュニア日本新、日本歴代3位の15分10秒23をマークして3位に入った。このときは、最初を抑えぎみに入り、中盤からペースアップする戦術をとった。2000mで集団に加わり、3000mではラビットを抜いてトップに立ち、ラスト250mまで福士がレースを引っ張った。

 こうして海外で国際レースの経験を積んだ福士は、秋のレースでは思い切ったレースぶりを見せている。全日本実業団や国体の5000mでは、最初の1000mを3分を切るハイペースで入った。福士にとって、国内のレースで1000mを3分05秒前後で入ったり、スローな展開にして勝ちにこだわることは、意味がないかのようだ。
 昨年の国際千葉駅伝では、確実にタスキを運ぼうというテーマがあり、前半を抑えきみに入って、後半ペースアップした。そして、大きく成長して臨む今年の国際千葉駅伝。任される区間、タスキをもらう位置によって走り方が変わってくるのが駅伝である。どんな走りをすると断言はできないが、「できればレースの流れをつくってタスキを渡したい」(永山監督)と考えている。

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