陸上競技マガジン2004年8月号
アテネ五輪代表インタビュー
森千夏  村上幸史
世界での好投期す スズキの投てきコンビ


 投てき種目の代表は3人(他に女子ハンマー投にもB標準突破者が2名)。バルセロナ・アトランタ・シドニーと3大会連続1人しか代表を送れなかったことを考えると、頑張りが目立つ。室伏広治(ミズノ)については今さら触れるまでもないが、2選手を送り出したスズキも貢献度は大きい。
 村上幸史は男子やり投で3大会ぶりの代表に。84年ロス五輪で吉田正美が5位に入賞、89年には溝口和洋が87m60の世界歴代2位(当時)をマークしている伝統の種目。
「2人とも世界の8番に入った選手。もう一度、そのレベルに戻したいですね。(目標と言い続けている)83mを投げれば、100 %それが実現できます」
 村上は98年世界ジュニアの銅メダル、02年のアジア大会銀メダルなど、国際大会に強いタイプ。
「自分よりも強い選手が相手だと、チャレンジ精神が一気に高まります。メンタル面をピークに持っていく自信はありますよ。だからこそ、オリンピックの雰囲気は、これまで経験した試合と一緒じゃ困ります」
 一方、女子砲丸投の森千夏は、地元開催だった64年東京大会以来の代表。日本人初の17mを一昨年秋に突破すると、この4月には18mの大台も突破。世界との距離を一気に縮めた。
「女子砲丸投でオリンピックは無理だと言われていた頃から、出場できると信じて頑張ってきました。言葉がわからないのに中国に行ったりして苦労もしましたが、“あの人たちと違う”とは、絶対に思っちゃいけないんです」
 欧米の筋力に生かす投法でなく、中国のスピードを生かした投法が、森に合ったことも飛躍の一因だった。今回、男女砲丸投はアテネでなく、古代五輪が開かれたオリンピアの古代スタジアム遺跡で行われる。日本の女子砲丸投の歴史を切り拓いた森が、世界的に歴史的な場所で経験を積み、4年後にアジア(北京五輪)で“勝負”をする。それが、育ててくれた中国への恩返しともなるだろう。


寺田的陸上競技WEBトップ