大阪国際女子マラソン特集
日本人には理解しにくいフィアッコーニの価値観
外国選手で印象に残ったのは、イタリアのフィアッコーニだ。35歳で2年前に2時間25分17秒(1998ニューヨークシティ・マラソン優勝)のベスト記録を出した選手だ。年齢的な部分もそうだが、経歴が特徴的である。元々は中距離選手だったが、大学在学中を含め、5年間は競技をしていなかった。しかし、ルチアーノ氏(今回もコーチとして来日)との結婚を機に89年からマラソンに取り組み始め、今回がなんと36回目のマラソン。
「(周囲とは違って)孤立した生活を送っているのかもしれません。夜は外出しないし、おしゃべりもしない。食べる物も控えている部分が大きい。精神的にも集中している」
実際の彼女の生活をイメージするには、このコメントだけでは誤解をするかもしれない。時間をかけてインタビューしないと難しいだろう。だが、その一端は理解できた。
ニューヨークと複数年契約をしているのか、例年11月のニューヨークに出場し、その後1月下旬までの約3ヶ月間オフを取っている。この休み方も日本ではなかなか考えられない。本人の“休み”にジョギングが含まれている可能性もあるが…。
そのパターンを破り、昨年のニューヨークも2位になったあと、12月のホノルルにも出場。これは、練習の距離走に見立てて出場した可能性が高い。そして、初めて1月のマラソンに出場する。「大阪はイタリアでも有名な大会。一度、冬のマラソンもやってみようと思ったから」というのが、出場に踏み切った理由だ。
何より興味を引かれたのが、“世界選手権出場の権利を持っているか?”との質問に対しての彼女の答えだ。
「権利は持っていないし、興味もない。私の記録なら参加できることは知っているが、私はマラソンそのものが好きなので、そういうことには興味がない」
もちろん、シドニー五輪にも出場していない。高橋尚子選手がこれだけ引っ張りだこにされる“オリンピック至上価値国”日本では理解されにくいことだろうが、そんな価値観もあるのだ。
ここまで対極的な価値観ではないが、日本にもフィアッコーニと共通するメンタリティーを持った選手がいる。その話はまた機会を改めて。
※この記事、陸マガにも書くかもしれません。