2002/4/21 群馬リレーカーニバル第2日              決勝記録一覧男子 女子
苦悩する日本記録保持者
野口が後輩・畑瀬に2cm差の辛勝


 男子砲丸投の日本記録保持者、野口安忠(九州情報大クラブ)がもがいている。
 群馬リレーカーニバルでの試技内容は以下の通り。
 F−F−15m96−16m21−F−F
 自己の日本記録とは2m以上の開きがあった。

 18m53の日本記録をマークしたのは4年前(98年)。翌年、グライド投法から回転投法に切り換えたが、17m92(99)−18m29(00)−17m99(01)と、現在まで大学4年時の記録を更新できていない。すでに高校時代から痛みがあったというひじにメスを入れたのが、2000年のシーズン終了後。その後も痛みは一進一退の繰り返し。走ったり、ウエイトをしたりという練習は問題なくできる。昨シーズンも、体つきは明らかに変わった(もちろん、いい方向に)と、野口自身、言っているくらいだ。だが、痛みがあると技術練習ができない。思ったように投げられないのだ。

「ひじが良かったり悪かったり、差が大きいんです。“今日は最高にいい状態だ”、と感じても、次の日は“なんでー?”みたいに。技術練ができないと、全部がつながりません。“ガツーン”と力を出さないといけない、というポイントでひじが痛んでしまうと、リリースまでの感覚がわからなくなっていってしまいます」

 しかし、今回はいけるかもしれないという感覚があった。1月、2月、3月と円盤投の畑山茂雄(ゼンリン)と合宿を繰り返し、いい練習ができた。
「1月は走り込みとウエイトで、2月はウエイトのマックスを上げられる練習でした。そして3月には投げ込みを増やしました。ひじもよくて投げられたんです」
 一抹の不安(沖縄合宿で投げられはしたが、しびれもあった)はあったものの、好感触を得ていた様子が、野口自身のWEBサイトに綴られている。

 しかし、群馬での結果は上記の通り。
「今日は、首に砲丸を付けた時点で全然だめだとわかりました。砲丸と一体感がないときは飛びません。いいときはいつも、この一体感があるんです。今日はもろに“砲丸を持っている”感じで、“鉄の感じ”がしていましたから。怖がって、身体がガチっと固まっているのが原因かもしれませんけどね」
 日頃の練習では、走りの感覚から好不調が把握できるという。
「自分の場合、本来、バウンディングや走っているときの感覚で、砲丸が飛ぶ日かどうかわかります。ジョッグでもわかることがあるんです。それで“今日は飛ぶな”と思っていざ砲丸を持つと、できないんです」

 こういった話ばかりを聞くと、八方塞がりのようにも思えるが、本人はまだまだ希望を捨てていない。かつて、WEBサイトで他競技への転向をほのめかしたこともあったが、それはきっぱり否定。砲丸投での世界への挑戦は、まだまだあきらめていない。それどころか、転職によって砲丸投、ひいては日本の投てき界の置かれている状況を見つめ直し、なおのこと世界へ挑戦したいという情熱は高まっているように感じられる。実際、練習では社会人1年目に、19m40の投てきをしたことがあるという。その好調さは1週間続き、「感じをつかんだはずだった」と野口は言う。
「試合で出せなかったら意味がないんですけどね。結局、ひじがどうなるかは自分ではわかりません。僕にできることは、ひじがなんとかなったときのために、それなりの準備をすることしかないんです」

 群馬では6回目に16m19を記録した日大の後輩・畑瀬聡と2cm差という際どい勝負だった。仮に負けていたら、「同学年以下の選手に負けるのは高1以来ない」(野口)ということなので、10年ぶりの敗戦になりかねなかった。野口は日本選手間でもここ数年負けていないはずだが、野口自身、その点についてはよく覚えていない。ひじのことで気持ちが後ろ向きになっていたら、日本人間での勝敗を気にしていただろう。意識が世界に向いているからこそ、国内の連勝記録のことはそれほど意識しないのだ。たぶん室伏広治(ミズノ)も、いつから日本選手間の連勝記録が続いているのか、覚えていないのではないだろうか。

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