2002/4/20 群馬リレーカーニバル第1日   決勝記録一覧男子 女子
森本明子、“真の逆襲”
Akiko MORIMOTO is ready for “real counterattack”.

「日本選手権は13秒0台前半の勝負を」
 女子100 mHのジュニア&高校記録保持者、森本明子(さとえクラブ)の“真の逆襲”が始まろうとしている。“真の”と書くからには“嘘の逆襲”があったはず、などと考える人はいないと思うが、“形の上での逆襲”はすでに終わっている。
 森本は埼玉栄高3年時(94年)にインターハイ優勝、13秒44のジュニア日本新と大活躍をしたが、東学大の4年間はインカレこそ1度だけ優勝(3年時の関東)したが、年次ベストは14秒01、13秒89、13秒70、13秒80(95〜98年)と低迷した。しかし、社会人1年目の99年に日本歴代3位の13秒29と、高校時代の記録を更新し、形の上での逆襲はすでにやってのけている。
 この記録は2000年、2001年と更新できていないが、昨年も池田久美子(福島大)や茂木智子(秋田ゼロックス)と勝ったり負けたりの好勝負を繰り返している。日本選手権こそ池田、茂木、藤田あゆみ(穴吹工務店)の東北出身トリオに後れをとって4位と不本意な成績に終わったが、南部記念・全日本実業団と茂木・藤田を抑えて優勝している。シドニー五輪セミファイナリストの金沢イボンヌ(群馬綜合ガードシステム)が頭一つ抜けている女子100 mHだが、それを追う4人のグループにしっかり食い込んでいるのが森本の現在のポジションなのである。

 その森本が、さらにレベルアップを見せそうな勢いなのだ。室内で好タイムをマークすると、4月14日の記録会で13秒17(+3.6)の快走。そして、20日の群馬リレーカーニバルで圧勝した。他の有力選手は出ていなかったとはいえ、昨年の関東インカレ優勝、13秒47がベストの川上小百合(筑波大)に0.60秒差をつけたのだから、その強さは際だっていた。優勝タイムの13秒39は向かい風0.2mの中で出されたものだけに、額面以上の価値がある。
「今年は室内で自己新も出て、仕上がりは早いと思います。室内は60mでしたが、それが屋外の100 mになってどうなるかをチェックするのが、先週の13秒17のレースでした。1人で走ったような状態でしたし、すごくリラックスして入れたので、勝負できる手応えまでは感じていません。去年は日本選手権でシクっています(それでも1位と0.13秒差)ので、兵庫、静岡で手合わせをしておきます。今年はアジア大会が最大の目標なので、日本選手権で勝負できることがそのモチベーションになると思います。日本選手権は13秒0台前半、日本記録(13秒00=金沢)あたりの勝負になると思います」
 ジュニア時代に日本のトップに立った森本。シニアでも日本のトップに立ってこそ、“真の逆襲”となる。

好調を支える2つの要因
 森本の好調を支えているのは、低迷した大学4年間を含めた、これまでの積み重ねであるのは疑い得ない。さらに、森本は今季からハードリング(走り方)をグレードアップさせようとしている。
「具体的にこうという形ではないんですが、走ることをよりイメージして、走ることをベースに取り組んでいます。降りてから走りに入るときのつなぎを、より勢いよくつなげようという考えです。踏み切り前やハードリング云々ではなくて、間をいかに走るかです。中国で12秒台の選手を見て、13秒台と12秒台の違いは何なんだろうと考えたのですが、ハードルを蹴飛ばしてもいい、くらいの勢いで突っ込むんです。その成果が現れつつあると思っています。完成度が高まればベストなのですが」

 そしてもう1つ、彼女自身が「気持ち的に充実しています」と言うメンタル面も好調の要因だ。これは、高校生の“コーチである”、ということとイコールと思われる。取材中にも何回か、埼玉栄高の教え子の名前が口に上る。「柳(久美子・100 mH13秒65=高1最高)をインターハイに間に合わせたい」「60mだったら栗本(佳世子・100 m11秒98)にかなわない」等々。
 彼女らを、コーチとして見守ることが森本のモチベーションになっているのは、疑い得ない。
「アジア大会の代表には、なれるものなら早めに内定したいんです。できれば日本選手権で。そうなれば(最後の選考会である8月のアジア選手権には出ずに)インターハイに選手を引率できるんです。私が頑張れば、彼女たちも頑張れる。何事も生徒のためです」
 埼玉栄高生徒の活躍も、森本先生のサポートとなるだろう。

見出しで「逆襲」を辞書通りにcounterattackと英訳したが、長いスパンでの逆襲もcounterattackでいいのかどうか、一抹の疑問が残る。

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