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ちょっと無責任な展望記事 女子フィールド編
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●女子走高跳
 昨年1m96の日本新をマークした今井美希(ミズノ)と、一昨年シドニー五輪で決勝に進出した太田陽子(ミキハウス)の一騎打ち。ここ数年、この2人が揃って出場した試合で、2人以外の優勝者(外国選手が出ていて日本人トップというケースも含む)が出たことはないのではないだろうか。
 日本選手権でも勝ったり負けたりで、過去今井が4勝、太田が3勝。ただ、2人とも絶好調で真っ向勝負(例えば、2人とも1m93以上をクリア)というケースは、思ったより多くない気がする。しかし、今季は織田記念で1m88で並んだうえに、優勝決定試技にもつれ込む接戦を展開(太田が優勝)。この種目が盛り上がる条件は、来年の世界選手権A標準の1m95以上をどちらかが成功するか、2人とも1m90以上をクリアした接戦となるケースだろう。
 3番手以降の選手とは力の差が大きい種目だけに、日本選手権の結果でアジア大会代表2人が決定する可能性もあるが、それは終わってみないとわからない(代表人数枠とか、他種目との兼ね合いという相対的な要素が絡んでくる)。優勝で代表を決め、心おきなくヨーロッパ遠征に出たいところだ(2人とも遠征を計画中。最終決定はまだ)。
 その3番手以降の選手だが、岩切麻衣湖(プレジャー企画)と青山幸(WWA)が織田記念他で1m80をクリアしている。アジア大会2つめの代表争いがもつれるような記録(1m90前後)を期待したい。

●女子棒高跳
 3月の日中対抗室内で4m30と屋外の日本記録を10cm上回る室内日本新をマークした小野真澄(陵北中教)が、4月から地元に戻って中学校の教員となった。それから競技会に姿を見せていないので、どんな状態なのか判然としない。ということで、優勝候補は静岡国際で4m15の日本歴代2位をマークした近藤高代(長谷川体育施設)ということになる。
 近藤は、“小野に追いつけ追い越せ”という感じで頑張ってきた選手(傍からだとそう見える)。98年に4mをクリアした同学年の小野を追って、翌99年に4mジャンパーとなった。2000年頃から小野に勝つ試合も増え、昨年まで3年連続4m10に成功。しかし、記録的には99年から横ばい状態。小野も99年に4m20を跳んでから、頭打ち状態だった。そして今年、室内で小野が記録を伸ばすと、近藤も屋外で3年ぶりの自己新をマークしたのだ。
 99年、小野がミキハウスに入社(前年までは大学院生でCFAというクラブ所属)して記録が大きく伸びた小野と近藤(4m00は98年アジア大会だが)。小野が教員になってから初めて迎える日本選手権は、どんな戦いとなるのだろうか。

●女子走幅跳
 昨年の日本選手権でハイレベルの激戦が展開された種目。高松仁美とともに6m61の日本記録を持つ花岡麻帆(Office24)が、6m82と日本記録を大幅に更新して優勝し、2位の池田久美子(福島大)も6m78と従来の記録を大きく上回った(学生新)。女子走幅跳史上に残る名勝負だった。
 しかし昨年、花岡が池田に勝ったのはこの1回だけ。エドモントン世界選手権でも花岡が予選落ち(惜しかったが)に終わったのに対し、池田は決勝に進出した。
 今年は逆に花岡が全勝。日中対抗室内横浜大会で6m39の室内日本新を皮切りに、織田記念で6m55、水戸国際で6m68w、大阪GPで6m60と快進撃を続けている。大阪の記録は自己4番目だが、6m61を2回出しているのでほぼセカンド記録と言っていい。
 一方の池田は「春季サーキットは冬期練習の中の跳躍練習」という位置づけ。大阪でなんとか6m41にまで記録を伸ばし、その後はアジアGPで3戦を消化。記録的な収穫はなかったが、“将来”に向けて貴重な体験をしてきたらしい。
 昨年も5月までは池田が6m50前後を跳んでいただけで、日本選手権で一気にブレイクした種目。今年も、昨年のような名勝負が再現されるのか、それとも、今年の流れの通り花岡がすんなり勝ってしまうのか……。

●女子三段跳
 日本記録保持者、日本で唯一の14mジャンパーの花岡麻帆(Office24)が昨年の日本選手権以来、ちょうど1年ぶりに三段跳に出場する。1年も出ていないのは、走幅跳で世界選手権代表になったこともあるが、昨年春先に踵を痛めてしまったのが理由だ。走幅跳の踏切足とは逆なので、走幅跳には大きな影響はないらしい。
 今年は三段跳の記録も更新しようと考えていたが、冬期練習に入ってすぐ(昨年12月)に、同じ踵を痛めてしまった。三段跳用の練習はできないが、スプリント練習は積むことができた。200 mのスピードがアップし、それが走幅跳の好結果にもつながっているという。だが、三段跳に関しては結局、日本選手権がぶっつけ本番となる。
 といっても、花岡に敵は見当たらない。2番手以降の選手では井原福代(スズキ)が不調で、成田高の後輩でもある吉田文代(中大)もやっと13mを超えたところ。大会初日に行われるだけに、無理はできない。13m台中盤を跳んだら残りはパスをする、ということもあり得るだろう。

●女子砲丸投
 森千夏(国士大)が3月の日中対抗室内天津大会で16m80と、自己の持つ屋外の日本記録16m84と遜色ない記録を出した。屋外シーズンでは16m56(四大学・セカンド記録)、16m44(群馬リレーカーニバル)、16m55(静岡国際)、そして16m80(関東インカレ・セカンド記録)と記録が推移してきている。関東インカレでは失敗した内容でも16m50以上がポンポン出ている。日本新はいつ出ても不思議ではない状態だし、投てき選手間の情報では、17mもいくのではないかとささやかれている。日本人初の17mはもちろん、17m20の世界選手権B標準までも、一気にいく可能性が感じられる。
 日本新の可能性も76%とした。男子200 mの末續慎吾(東海大)の85%が今大会中一番の確率だったが、末續が欠場することになったため、森の数字が全種目の中で一番となった。
 だが、一昨年の日本選手権で当時の日本新(16m46)を出した豊永陽子(健祥会)も侮れない。その年前半は不調だったが、8月の地元の試合での16m19でいい感触をつかむと、10月頭の日本選手権で一気に記録を更新した。今年も静岡国際で16m19。日本選手権での爆発があるかもしれないし、豊永自身、「17m」を現実的な目標としている。史上初めて、日本人2選手が16m50以上で争う大会となるかもしれないのだ。

●女子円盤投
 室伏由佳(ミズノ)が水戸国際で56m65と、自己の日本記録(56m84)に19cmと迫る快投を見せた。絶好の向かい風に助けられた面もあるが、好調であることは間違いない。
 “2強”のもう1人、56m51の日本歴代2位を持つ成瀬美代子(ミキハウス)は、今季は今ひとつ。室伏が不調だった群馬リレーカーニバルこそ優勝したが、水戸国際、中部実業団と連敗。アジアGPも40m台が続いて記録的な収穫はなかった。日本選手権で5回の優勝を誇る成だが、今のままでは苦しい戦いとなる。
 この種目も女子走高跳と同様、“2強”の力が3番手以下を大きく引き離している。室伏・成瀬が揃って出場した試合で、2人以外の選手が勝ったことは近年なかった。その法則を昨年の全日本実業団で覆したのが、山口智子(呉市体育振興)だった。52m52の日本歴代6位で、2強を抑えたのだ。その競技場が、今回と同じ金沢だった。山口は今季も、日本リスト3位につけている。

●女子ハンマー投
 綾真澄(グローバリー)の優勝は間違いなさそう。
群馬リレーカーニバル 63m28
織田記念       61m82
中部実業団      66m23
中京大土曜記録会   66m27
 というのが、今季全成績。群馬では技術的な迷い(「やることがゴッチャになった」というのが本人の表現)があっても自己2番目の記録。織田記念は滑るサークルに対応できず「自分の中では最低の記録」(綾)に。しかし、中部実業団で自己の日本記録64m43を2m近くも更新した。
 そこでとどまらず、合宿中に出場した中京大土曜記録会でさらに記録更新をした。あまり練習で疲れが蓄積しないタイプなのかもしれないが、追い込んだ練習を続けた合宿中にこの記録を出す点が、評価を高めることになった。綾が何かを掴んだ可能性は高い。
 2位も室伏由佳(ミズノ)で決まりだろう。今季、ついに60mの大台に乗せ(一気に61m91)、後輩の綾を追撃する態勢に入った。冬期は気持ちの面でもトレーニング面でも、多くを一新して取り組んだという。今年頑張らなければ、国際舞台への道は開けないと、必死の思いが記録に結びついた。綾が62〜64mでもたつくようだと、昨年の5月以降続いている日本選手間での連勝が途切れてしまうかもしれない。

●女子やり投
 昨年61m15の日本記録をマークし、世界選手権にもA標準突破という形で出場した三宅貴子(ミキハウス)が、3連勝(通算5回目)を飾る公算が大きい。
 三宅が60mを超えたのは昨年の水戸国際と日本選手権、そして今年の水戸国際の3試合。このパターンを踏襲するとすれば、今年も日本選手権で60mスローが見られることになる。だが、このパターンにはまると他の試合で60mスローが出ないことになってしまう。ここは別に60mにこだわる必要はないのかもしれない、日本リスト2位の選手との差が5mと大きいこともあるし(と、2番手以下の選手に奮起を促す)。
 三宅の昨年との違いは、クロスの歩数。スピードを上げながら投てきに入るのが目的だ。世界選手権後に7歩から5歩に減らした。昨年、同じ金沢で行われた全日本実業団では新技術への移行の最中で、56m15にとどまった(それでも大会新……は規格が変更にされて間もないからか)。それに何m上乗せすることができるだろうか。

●女子七種競技
 群馬リレーカーニバルで5559点(日本歴代5位)と学生記録に迫った平戸安紀子(筑波大)を優勝候補としたが、日本記録(5862点)保持者の中田有紀(サカツコーポレーション)、前日本記録保持者の佐藤さよ子(日立インダストリー)の復調ぶり次第で様相が変わってくる。という当初の考えだったが、中田がそこそこ復調すれば、やはり中田の方が上に来そうな気がする。
 群馬の時点では中田は「3月に左の大腿とお尻の中間あたりに痛みが出て、3週間練習ができなかった」(本田陽コーチ)影響があり、5427点の2位。佐藤は「左ヒザと左大腿の裏を痛めていて、1週間前まで出場を迷った」状態で、結局途中棄権をした。中田の状態が、群馬より1000〜2000点よくなることは十分に予想できる範囲だ。
 面白いのは、中田と佐藤は100 mHや走幅跳など得意種目が似ているのに対し、平戸は投てき種目を得意としていること。特に砲丸投が15m近くを投げ、9〜11mという七種競技選手の標準から突出している。
 200 mでは平戸も引けをとらないので、初日のポイントは100 mHと走高跳の最初の2種目でリードされた平戸が、3種目目の砲丸投で逆転できるかどうか、だろう。2日目のやり投のベスト記録は中田が平戸を上回るし、そうなると2日目は中田の方が有利。平戸が勝つには、1日目でどれだけ貯金ができるか、だろう。