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ちょっと無責任な展望記事 男子フィールド編
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◆男子走高跳
 九州インカレで内田剛弘(福岡大)が2m2*に成功した。群馬リレーカーニバル、静岡国際とあっさり敗れているが、これで優勝候補に躍り出たと言っていい。昨年は2m23以上を3回マーク。パフォーマンスリストの上位4傑中3つを占めた選手でもある。
 若手の内田に立ちはだかるのが、今年度(早生まれ)で30歳になる日本記録保持者の君野貴弘(ゴールドウイン)。昨年の選手権者であり、今年も静岡国際に2m21で優勝している。
 190cmの内田に対し176cm(177cmのデータもあり)の君野。年齢差8歳、身長差14cm(13cm)の対決は金沢のフィールド、注目の対決の1つだろう。
 もう1人、注目したいのは今年31歳の海鋒佳輝(岐阜高教)。今年も室内で2m16と好調だったが、昨年は2m23をやはり室内でマークした。もしもアジア大会代表となれば、90年の北京大会以来12年ぶりの代表ということになる。

◆男子棒高跳
 織田記念に5m50で優勝した小林史明(日体大AC)が優勝候補筆頭だろう。実は5m50をクリアしたのは、当時日本記録だった5m62をクリアした99年以来のこと。今年は助走が走れていて、当時と同じポールを使いこなせているという。4年前は日本選手権に優勝し、アジア大会でも銅メダルを取っている小林(翌99年の世界選手権にも出場)。当時の勢いが戻りつつある。
 シーズン前、室内で5m50、5m51と室内学生記録(最高?)を連発した沢野大地(日大)に対する期待は高かった。ところが、春季サーキットにも勝てず、関東インカレは故障で欠場。日本選手権に間に合うかどうか。
 日本記録保持者の横山学(三観陸協)は織田記念で途中棄権して心配させたが、水戸国際では同記録ながら小林史明を抑えて優勝(安定しない強風のため記録は5m30)。
 上記3人は全員が過去の日本選手権優勝者。98年・小林、99&2000年・沢野、2001年・横山。横山は96年の選手権者でもある。この3人を脅かせるのは、織田で5m40の木越清信(筑波大院)と室内で好調だった安田覚(三重教員ク)。最低でも5m60の優勝記録を期待したい。

◆男子走幅跳
 森長正樹(ゴールドウイン・太成高出)、寺野伸一(日大・清風高出)、荒川大輔(同大・大成高出)の大阪の高校出身トリオの争いとなりそう。寺野は森長の日大の後輩、荒川は大成高の後輩ということになる。
 とはいえ、追い風参考ながら静岡国際で8m08(+2.5)を跳んでいる森長が、その豊富な経験からいっても最有力候補。しかし、大阪GPでは寺野が8m08(+3.2)で日本人トップ。森長を抑えた。しかし、公認の今季日本最高は静岡で8m06をマークした荒川である。ただし、勝敗で言えば、寺野が兵庫リレーカーニバルで荒川を一蹴している(森長は出場しなかった)。
 いずれにせよ、大阪トリオによる争いは熾烈を極めそう。
 寂しいのは、渡辺大輔と田川茂のミズノ8m10台コンビの名前をここに挙げられないこと。渡辺は助走歩数を変更し、意欲的なシーズンインをしたが、静岡で足首を故障してしまった。日本選手権に間に合うかどうか。むしろ、今季日本3位の7m83を静岡でマークし、東日本実業団にも優勝した中島豊(花輪高教)の方が、大阪トリオの一画を崩す可能性は現時点では高いと言えそう。

◆男子三段跳
 走幅跳が大阪トリオなら、三段跳は“筑波大先輩後輩トリオ”の争いか。“争いか”という表現は、“この3人による優勝争いになるかどうか100%の保証はないが、そうなる可能性が高い”という意味である。わざわざ解説するまでもないな、と書いてから気づいたが、日頃使い慣れている表現でも、たまには定義を確認した方がいいこともある。追い風参考記録とは、“追い風が2.0mを超えた場合”だと、たまには書いておかないと初心者の読者には不親切なことと一緒である(ちょっと違うような気もする)。こういうことを書き始めるのは、ちょっと疲れているが“ハイ”になっている証拠だと自分では認識している。三段跳の話にちっともならない。
 織田記念では渡辺容史(筑波大4年)が16m44で日本人トップ。杉林孝法(ミキハウス)が16m35で日本人2位。昨年、16m67で日本リスト1位となった渡辺だが、先輩・杉林に真っ向勝負で勝ったのは初めてである(杉林がケガをした試合で勝ったことはあるという)。杉林が欠場した水戸国際でも日本人トップ。しかし、昨年2冠となった関東インカレの走幅跳で故障し、翌日の三段跳は欠場。対する杉林は、東日本実業団の三段跳こそ大事をとって欠場したが、走幅跳では2位となるなど、メドが立っている。
 筑波大トリオの最年少は2年生の石川和義で、関東インカレで16m33で圧勝。今季16m12を跳んでいる稲葉広幸と井上大資の東海大コンビに70cm以上の大差をつけたのだから強い。ひょっとするとひょっとする、なんてこともあり得るが、17mジャンパー(杉林)がそうはさせないだろう。


◆男子砲丸投
 日本記録保持者の野口安忠(九州情報大ク)は今季第一戦の群馬リレーカーニバルで優勝。記録は16m21で、日大の後輩・畑瀬聡とは2cm差という際どい勝負だった。群馬の結果から野口は、日本選手権までの試合を全てキャンセル。練習に専念しようとしたが、5月上旬にヒジの再検査をした結果、剥離骨折が判明した。
 その後の状態がわからなかったが、6月3日に野口が自身のWEBサイトで現状を明かした。以下は、そこから抜粋させてもらったコメントである。
「肘の調子はもちろん良くないし、投げの練習もできていないけど、その間もその限られた中でいかに記録を伸ばせる練習ができるかを常に考えて練習してきたし、俺はそれを信じるし、それを信じれなかったらしんどい思いをした意味がないしね。神様〜って思うより俺はそれまでの思いや練習でやってきたことが砲丸に届いてくれ〜って思う。何を書いてってかわかんないけど結果は後になんないとわかんないし、とりあえずは精一杯頑張ります!」
 優勝争いは混沌としてきた。今季日本リストでは兵庫リレーカーニバルを制した村川洋平(筑波大)と畑瀬が16m91で並んでいるが、昨年ジュニア日本記録(17m40)を出した実績と、関東インカレで勝ったことで畑瀬を優勝者に予想した。しかし、畑瀬もまた足首に不安を抱えている。絶対とはいえないのだ。
 3月の日中対抗室内で16m94をプットしている榊原英裕、兵庫リレーカーニバルで16m42の自己新をマークした大山圭吾など、ベテラン勢のあっと驚く快投があれば、大番狂わせもあり得る。男子投てき種目の中では一番の混戦種目だ。

◆男子円盤投
 昨年、56m18と日本歴代3位に進出した畑山茂雄(ゼンリン)の4連勝への視界は良好だ。今季はまだ54m04が最高だが、日本選手間では危ない試合がない。そうさせているのも、昨年、54m82の学生記録をマークした中林将浩が不調だからだ。静岡ではベストエイトに残れなかった。「体はできているのに」と畑山も首を傾げる。故障という情報は聞かれなかったので、一覧表では「回復次第」欄には入れなかった。
 畑山は「冬期のウエイトでフルスクワットの数字が30sアップしたが、それをまだ円盤投に伝えられていない」と、言う。できれば、「日本選手権前に57〜58m」を、というくらい、パワーアップを自覚している。楽しみな種目であることは確かだ。
 中林の調子が戻っていなければ、2位争いは激戦となる。與名本稔(東海大)が4月の記録会で51m90の東海大記録をマークすると、関東インカレでは52m87まで記録を伸ばし、これが今季日本2位ということになる。だが、兵庫リレーカーニバルでで日本人2位の佐々木大志(岩手大院)、静岡国際で日本人2位の藤原潤(八千代工業)の2人は、51m台が安定している。“勢いの與名本”対“安定感の佐々木・藤原”という構図だが、この手の“決めつけ”は選手自身の思惑とは違うところで行われるわけで、與名本自身は「自分に勢いがある」と感じているとは限らない(技術が安定した結果と考えているかもしれない)し、佐々木と藤原は「技術が不安定だから51m台にとどまっている」と考えているのかもしれない。

◆男子ハンマー投
 室伏広治(ミズノ)の8連勝は間違いない。本人が国内の連勝記録をどこまで意識しているのかはわからないが、父・重信氏の日本選手権10連勝(通算優勝回数は12回)にまた一歩、近づいた。男子ハンマー投は6月9日にタイムテーブルが組まれている。室伏は6月7日にイタリア・トリノで試合に出場する。ということは、6月8日にイタリアから金沢入りする強行軍。だが、心配はいらない。過去にも同じことを経験している。下手に2〜3日前に入るよりも、体調的にもいいのだろう。
 注目されるのは2位争い。学生6年目の土井宏昭(中京大)が今季、71m18と大台を突破すると、5月25日には71m99にまで記録を伸ばした。72m47の日本歴代3位記録保持者の海老原亘(三英電業)との“千葉県の高校出身選手対決”は熾烈を極めそうだ(室伏も成田高と千葉県の高校出身)。もしも3人が70mを記録すれば、日本のハンマー投史上初の快挙となる。

◆男子やり投
 投てき種目の優勝候補は「畑瀬」「畑山」「室伏」ときた。という流れからすると、やり投の優勝候補は「室永豊文」としたいところだ。水戸国際では73m02で優勝もしている。
 が、昨年、80m59(学生記録・日本歴代3位)と大台に乗せた村上幸史(スズキ)が、5月12日の今季初戦(中部実業団)で75m95をマークし、日本リスト2位を3m近く引き離している。昨年、久しぶりに自己記録を更新(78m64)し、“打倒・村上”候補の一番手と思われていた植徹(富士通)は、5日に欠場が発表された。村上も昨年の国体で疲労骨折をした左脛骨の影響で、冬期練習が不十分。「最低でも78m以上で優勝」というのが目標で、やや控えめだ。万全ではないとはいえ、優勝候補の筆頭だろう。
 昨年、村上と好勝負を繰り広げた宇戸田実也(筑波大)だが、記録的には昨年の76m02に対し今季はまだ71m台にとどまっている。しかし、兵庫リレーカーニバルではきっちり優勝しているし、昨年も6月から記録が上向き始めた選手。スムーズなフォームは関係者の評価も高い。村上優位は動かないが、室永とともに村上を追う存在だ。

◆男子十種競技
 平田卓朗(日体大)は昨年、群馬リレーカーニバル、関東インカレ、日本選手権、日本インカレと、出場した試合は全て勝っている。それもそのはず、「21世紀に入ってまけなし」なのである。今季も、雨の群馬リレーカーニバルを制し、関東インカレも快勝した。
 だが、2位以下の選手と圧倒的な差があるわけではない。昨年の関東インカレは2位の平井千尋(東海大)と6点差だったし、今年の群馬は米島健志(晃南土地)と74点差だった。それでも、これだけ勝ち続けるというのは、今の日本では抜き出た力を持っているということなのだろうか。
 米島、平井の東海大先輩後輩コンビが、平田に“21世紀初黒星”を付けられるかどうかが、最大の焦点だ。
 細かい分析(誰がどの種目が強いとか、1日目を誰がどのくらいの点数でトップに立ちそうだとか、こんな記録が期待できるとか)は、KUMA's STYLEに展望記事が出るんじゃないかと思われる(出ないかもしれない)。