2002日本選手権を10倍楽しむページ
2002/6/9 日本選手権最終日アウトラインアウトライン
女子400 mHで吉田が日本記録を0.01秒更新
新井は100 m&200 mで5年連続2冠の壮挙!!
福士はレースパターンを変えての2冠に価値

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 前日までと比べるとやや涼しくなり、コンディション的には恵まれた。各種目で日本選手権にふさわしい好記録が生まれ、好勝負が演じられた。
 記録的に特筆されるのは、女子400 mHで吉田真希子(福島大TC)が56秒82の日本新、男子100 mで朝原宣治(大阪ガス)が10秒05の日本人国内最高タイをマークしたこと。大会新が生まれたのは男子100 m・ハンマー投、女子5000m・ハンマー投で、それぞれ期待された選手がそれに応えた。大会によっては「大会新」といっても価値がそれほどないこともあるが、日本選手権のようにメンバーが揃い、歴史もある大会の場合は価値がある。
 女子走高跳優勝の太田陽子(ミキハウス)と今井美希(ミズノ)がともに1m92と世界選手権B標準に到達。男子100 mの朝原宣治(大阪ガス)はA標準を再度突破。男子ハンマー投の室伏広治(ミズノ)、女子5000mの福士加代子(ワコール)、女子ハンマー投の綾真澄(グローバリー)のB標準突破者も、今大会で再度上回るなど、記録的な収穫は多かった……が、優勝者で自己記録を更新したのは日本新の吉田と男子800 mの笹野浩志(富士通)の2人のみ。つまり、日本歴代何位に進出、というケースが少なかった。

 個々の種目について多少触れてみたい。男子100 mは朝原の他、水戸国際で10秒13と世界選手権A標準を突破している田島宣弘(日体大)が、10秒28と世界選手権B標準の快走で水戸がフロックでないことを証明した。2位の田島、3位の菅野優太(日大)は関東インカレでは3・4位の選手。同大会2位だった宮崎久(東海大)が5位と、学生短距離陣も層が厚いことを示した。織田記念で脚を痛め、その後の試合を全てキャンセルした土江寛裕(富士通)が10秒34で4位に食い込んできたのには驚かされた。日本選手権には強いところを再証明してみせた形に。
 男子400 mは田端健児、向井裕紀弘と日大のOBと現役がワンツー。4位にもOBの山村貴彦が入ったが、3位に中京大OBの松本卓が割って入った。
 男子800 mは最後の直線で笹野浩志がポケットされてダメかと思われたが、ラスト50mを過ぎたあたりで隙間が生じ、その僅かな間隙をついて抜け出した。2位の鈴木尚人も自己新記録だが、東海大新記録までは届かなかった。
 男子5000mは優勝した高岡をはじめ、予想されたメンバーが上位を占めた。1万mを棄権して5000mに絞った山口洋司が13分34秒42で4位。アジア大会代表は無理だろうが、秋からマラソン練習に入り、ここでは自己記録更新が狙いだったのなら、その目的は果たしたことになる(1万mでは今季アメリカで27分台を出している)。5位の徳本一善が上位4人から約10秒引き離されたのは残念だったが、フィニッシュ後には血染めの足裏を気遣いながら引き揚げる姿が。聞けば「200 mでズルッとやってしまった」とのこと。その状態で1秒63とはいえ自己記録を更新したのはさすが。
 男子棒高跳は日体大OBがワンツー。沢野大地は関東インカレ前に故障してしまったが、復調できず。横山学は5m30から跳び始めたが、一か八かの部分があったのだろうか。記録なしに終わった。
 男子走幅跳は日大現役の寺野伸一とOBの森長正樹でワンツー。今季、静岡国際で8mジャンパーの仲間入りをした荒川大輔は、本人も課題にしていた“ムラの多さ”が出て6位。田川茂、渡辺大輔のミズノ・コンビはベストエイトに残れなかった(渡辺は3回目を棄権しているから、故障が治らなかったのだろう)。
 男子ハンマー投は千葉県の高校出身トリオが上位独占

 女子200 mは新井初佳が100 mとの2冠を達成。女子短距離の2冠を5年連続で達成するなど、神がかり的とも思える快挙だろう。同レベルのライバルがいないわけではない状況でやってのけているのだ。特に今年は、直前まで腰痛で満足に練習できなかったのだ。脱帽。松本真理子(福島大TC)が2位に入り、これで福島大・川本和久コーチ門下生は女子短距離・ハードル種目全てで入賞者を出す快挙を達成した。これにも脱帽。脱帽ついでにその全選手をこちらにリストアップ
 400 mで4人の決勝進出が決まったとき川本監督は「なんかすごい(きつい)練習やってるんじゃないかって思われたらどうしよう」と、冗談とも思える口調で話していたが、これをどうとるか(は、読む側の自由である)。

 女子800 mは松島朋子がラストに強いところを見せて杉森美保を逆転。2連勝を達成。松島、佐々木麗奈と龍谷富山高OBが1・3位に。
 女子5000mは福士加代子のハイペースに1500m優勝の田村育子がついたが、1000m手間で振り切られた。ラスト勝負に徹した1万m、独走した5000m。福士が力のあるところを証明した2冠だった。市川良子、岡本治子のラスト勝負は市川が圧勝。昨年2冠の岡本は、今年も1万m4位、5000m3位ときっちり日本選手権に合わせてきた。順位が多少下がるのは、層の厚い女子長距離種目ではやむを得ない。
 女子400 mHでは吉田が日本新を出したが、2位の江口幸子も58秒23の好タイム。57秒台をマークした昨年ほどの勢いはなかったが、これで再度、吉田追撃の一番手のポジションに。
 女子走高跳とハンマー投は、陸マガに原稿書きました。