2002/7/21 南部記念
杉林、“強引な跳躍”で16m80=世界選手権B標準
そして南部記念ならではのパフォーマンス

 杉林孝法(ミキハウス)が、南部記念ならではのパフォーマンスを見せた。この日、走幅跳(7m24−F−F)・三段跳の順に試合に臨み、9本目の最終跳躍で16m80(+1.5)と、世界選手権B標準に到達したのだ。
「状態はそれほどよくありませんでしたが、走幅跳にも出て、徐々に助走を直していく作戦通りの結果になりました。9本かかりましたが、それなりのジャンプができました」
 通常、春季サーキットなどでは走幅跳と三段跳の両種目が行われることは少ない(今年に限れば1つもない)。走幅跳で世界記録を出し、三段跳で五輪金メダルを取った南部忠平氏ゆかりの大会だからこそ、この2種目が行われたのだ。
 杉林が助走の修正に時間がかかったのは、元々その傾向があるが、今年は右足(ホップ脚)踵の痛みが例年より大きく、練習で跳躍することができないからだ。全力の跳躍は試合でしか行えない。では、もしも南部記念でなかったら、つまり1日に2種目がなかったら、どうしたのだろう。
「一日でなくても、少しなら日にちが空いても大丈夫です」
 つまり、選手権なら前日の走幅跳に出るとか、あるいは全助走の走幅跳練習を本番数日前に行う方法がとれるということ。南部記念は、そのパターンのメドが立った大会といえる。
 ただ、助走はよくなっていったが、跳躍自体は「評価できない」と自己分析。
「今日は強引にいきました。(故障がある場合の)ヒントは、強引というか積極的な跳躍のときの体の使い方にあると思います。ビビって安全にいこうとすると、吹っ切れないですね」
 理想とする跳躍ができなくても、この日のようにパワーで持っていく強引な跳躍(注1)で、最低限の記録を残すことができる。「南部では跳躍練習不足の状態だったため、そのレベルの跳躍しかできなかった」と、杉林自身は振り返っている。そんな中でも6回目は「接地時間も短く、今日の中でいい跳躍でした」と分析した(注2)
 そういった対処の仕方で自己3番目の記録を出せたということは、ある意味跳躍の幅が広がったと言えるだろう。条件の悪い国際大会などでも、期待が持てそうだ。

注1:接地時間が長くパワーで持っていく跳躍。さらに言うなら、膝の屈曲が優勢な“屈伸系の跳躍”に近づいていた(杉林本人の解説)。
注2:接地時間が短いことは、良い踏み切りの条件であることは間違いないが、それが課題になったりはしない。目指すべきところはやはり踏切“技術”そのものであって、それがうまくいって初めて接地時間にも影響してくる(同上)。



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